live report

2006年4月〜6月に見たライブなど

06/06/21: Nervio (PIT INN)
わたしが見た前回は4月ですが, その間にもライブは1,2回やっていたはずです。さてどの様に なっているかと楽しみに出かけました。
…とか書いておきながら申し訳ないのですが,わたし自身が この日人間ドックの帰りで,さらにライブ前に夕食を食べたら, 完全に空っぽになったお腹の中にビールを入れたせいなのか, それとも体力的な問題なのか,結構頭が朦朧としてしまい, 音楽の方にはあまり集中できませんでした。
とはいえ,そんなボーッとした頭でも,なんか新澤氏の ピアノがすごいことになっているのは良くわかりました。 「なに,この音の厚さ?」…という感じで。アクゥースティック ピアノ一つですごくドライブしてます。いつもはどうしても ドラムやパーカッションに比べると,音量的にも足りなくて…と なりがちですが,今回は音量も十分だし,何より音が分厚かったです。 最近mingaのライブとかをかなりこなしているので,そういう 意味での変化もでてきてるのでしょうか?。
曲に関しては三枚目のCDから中心,もしくは新曲とよくやってる曲が 中心でした。曲数はいつも通りアンコール込みで12曲程度 でしたが,一曲がずいぶん長く感じました。もちろんだれることもなく 上昇感がとぎれない感じで,長く曲が出来るところが すごいな…と。 ただちょっと思ったのが,Nervioの曲は曲のフレームがしっかり していて,わりと複雑なので,それぞれのソロをこれだけ 弾きこなしてしまうと,曲のサイズがでかくなってしまうのだな…と。 それはそれでいいのですが,もう少しフリースペースが 多い曲というか,決め事が少ない曲というか…そういう 演奏も聴いてみたいな…と思いました。

06/05/27: ゲイリー・バートン・カルテット ( ブルーノート東京)
わたし的には「 ゲイリーバートン来日記念文」を書いたりして,かなり 盛り上がり楽しみにしていた公演。期待通りでした:-)。あっ, 1st.と2nd.両方観ました。
なにを期待していたかは,記念文でかいま見えるかも知れませんが, 今回のメンバーは
  • ゲイリー・バートン(vib)
  • スティーブ・スワロー(b)
  • パット・メセニー(g)
  • アントニオ・サンチェス(dr)
の四人でした。わたしとしては70年代前半にゲイリーが創っていた 音楽を生で聴きたいという期待がすごく強かったのが,まさに その辺の選曲。具体的には,Sea Journey(Passengers), B & G(Passengers),Open Your Eyes(New Quartet), Coral(New Quartet),Fortune Smiles(&Keith Jarrett), Blue comedy(in Concert),Q&A(Like Minds)…等。 「()」は収録アルバムです。他にもカーラ・ブレイの曲, スティーブ・スワローの曲を2,3曲ずつやってて,たぶん それらも上記のアルバムかその周辺に収められていると 思いますが,つまりだいたいわたしが観たかった頃の 演奏をメインにやってくれました。
で,演奏内容ですがやっぱりゲイリーがすばらしいです。 パットしか知らないで観に来た人も結構いたかと思うのですが, その演奏を聴いて圧倒されていたと思います。客席も 物凄く盛り上がりました。教育者らしく(笑)全くの ミスのない演奏,しかも非常にダイナミック,テーマ,ソロ, バッキングとシームレスに演奏するのに,アンサンブル的には 完璧。良くもあんなに高速にしかも4本のマレットを自在に 操るものだと…息をのみました。左手のマレット一本を ミュートやベンドに使って,右で叩いたところを押さえたり…と いうのも16分音符とかの細かいパッセージの中でも, 丁寧にやってます。フレーズも非常に良く歌っていて, アドリブとしては非常に完成度が高かったです。
スティーブの演奏は以前カーラのバンドで観たことありますが, 小編成は初めてです。ホローボディ,ピエゾというエレアコぽい ベースでピックでゴリゴリ弾いてました。おもしろいのは アップピッキングがメイン。指弾きだとベースはアップが メインになるからでしょうか?。そして手首は固めて腕全部で 演奏するという結構独特のスタイル。左手も一音ずつおさえるのでは なく,四本の指を常に広げて複数の弦を押さえてました。なので, 単音から和音まで広く演奏するという感じでフレージングも 独特でした。
で,メセニーいつも通りと言えばいつも通りですが, おもしろいのは上達後の流れる様なフレージングはほとんど 使わず初期のメセニーの少ない音で歌うようなフレージングが ほとんどで,当時のメセニーを演じてました(笑)。でもおかげで 手癖的なフレーズはなく,非常に良く歌ってました。あと ゲイリーの趣味なのか曲の時間が短めなので,パットのソロもいつものように 延々と弾くのではなくコンパクトにまとめてました。
で,アントニオについては,まぁよくやってるなと(笑)。 つーか周りが大物過ぎですから,十分にいい演奏を していたといえましょう。
というわけで,曲が短いせいか1セット7曲ぐらいやって いた気がします。
とにかく聴きたかった演奏を聴けて,しかも期待以上に ハイレベルですごくいい演奏でした。古い曲ばかりでしたが, 全然古くさい感じはせず,非常に高度でオリジナリティの 高い曲だし,演奏でした。1セット13000円以上は…ちょっと 高いと思うけど…,2セットともいって良かったと思いました。

06/06/05:追記
ブルーノート東京のページにこの日のセットリストが 載ってましたので転載します。
1ST
  • SEA JOURNEY
  • OCHOS
  • FALLING GRACE
  • QUESTION AND ANSWER
  • CORAL
  • AFRICAN FLOWER
  • SYNDROME
  • WALTER L.
2ND
  • OPEN YOUR EYES,YOU CAN FLY
  • B&G(MIDWESTERN NIGHT'S DREAM)
  • BLUE COMEDY
  • FORTUNE SMILES
  • I'M YOUR PAL
  • LAS VEGAS TANGO
  • COME EN VIETNAM
  • BALLET

06/05/13: ビル・フリゼール ( ブルーノート東京)
すばらしい。大絶賛。
久しぶりに観たビル・フリゼールのライブ。確かわたしが 観たのは4回目くらいだと思いますが,初めて彼のライブを 観たときの衝撃に次ぐおもしろさでした。
今回はブライアン・ブレイド(ds)とサム・ヤエル(org)という 若手を引き連れてのトリオ。若手と言っても人気のある エラスティックバンドの二人だし,ブライアンは今若手で 一番売れっ子で,実力もあるドラマーなので,最初から 期待して観に行きました。というか正直ビルフリってこの二人を 連れてこれるくらい評価されているんだ(^^;)…とちょっと 驚いたりも。
ビルフリは空間系というか唯一無二の非常に個性的な 演奏をするギタリストで,ギターの演奏以外にエフェクターとか を駆使して,まさにエレクトリックギタリスト独特の音を つくっていくスタイルですが,アバンギャルドな演奏が, ラウドな方に行かず,内省的で繊細な方向に行くところが, 非常に独特。地味なんですが20年前に初めて聴いたときに, ギターはこう弾くという既成概念をぶっ飛ばされたという意味では, わたしも多くの影響を受けました。
まぁそれはいいとして,ここ数年は先端的なフリーミュージックというよりは, カントリーとかワールドミュージック的な方向に行っていたので, ちょっと不満もあったのですが,今回の強力なメンバーで きっとすごい演奏だと期待してましたが期待以上でした。
相変わらずディレイとかサンプラーを駆使した演奏もやりますが, カントリーをやっていたのもあり,コードの厚さの幅が 以前よりもずっと広がってます。単音からコードへの変化への カラーの変化,コードを弾いた瞬間に,まるで彼の手から 音が広がっていくのが映像的に見えるような演奏で,とにかく 空間の変化,作り方がすばらしい。
それをサポートする二人,特にブライアンは予想通りのダイナミックスの 広さと歌心のあるドラミングが相変わらずすばらしい,そして ギターとドラムのインタープレイのすきまをじゃますること無く 巧みにオルガンの音を挟んでいくサムの知的なプレイも光ってました。
正直このメンバーでアルバム出して欲しいです。記録しないのが もったいない演奏でした。久しぶりに興奮して聴いた1時間半でした。

06/05/10:新澤健一郎ピアノソロ(御成門カフェ・アンダンテ)
新澤氏のピアノソロ。わたしはたぶん三回目。この店は初めて …というか,この店でライブをやり初めてあまり経ってないらしいです。 普段はカフェをやっていて,たまにこういうイベントをやるようで, 特にSR施設はないので,本当に生音でした。
新澤氏は何度かピアノソロのライブをやってますが,今回は 一曲目にやった,完全即興がキモでしょう。一曲目 ジッと構えて静かに弾き始め,あるモチーフを繰り返しながら, 徐々に変化していく…。なんの曲だろう?…と思ったら, 即興だったようです。
一曲目に即興をし,後は自分の曲とかスタンダードとか いろいろやりましたが,最初の即興から,今回はそういう スタイルなのか,他の曲も,曲の解釈というか展開が 大胆で,かなり即興色の強い演奏。いつもよりアバンギャルド。 いや,すばらしいです。
というわけで,今回はソロピアニスト新澤健一郎氏の 成長ぶりを実感できました。ますますの発展期待しております。

06/04/22:吉田智&新澤健一郎(小岩コチ)
初めてのハコだし,初めての組み合わせ…というか吉田氏の 演奏は聴いたことがなかったので,楽しみに出かけました。 コチは小さなスナック風の店で15人程度で満席になるような 作り。この日はほぼ満席でした:-)。
で,演奏はギターとピアノのデュオ。ピアノはもちろん アクゥースティックですが,ギターはガットギター。 曲はオリジナルはなくスタンダード。とはいえ, フォーやワルツフォーデビーの様なトラッドなスタンダードから ボサノバや,マーシーマーシー,カントリー等のように 比較的新しい曲まで幅広い選曲,そのどの曲も独自の 新しい解釈でとても楽しめました。
吉田氏の演奏は初めて聴きました。ガットギターの演奏が すばらしかったので,そっち専門の人かと思ってホームページを 観たら普段はフルアコ弾いてるようですね。従来の ジャズギタリストとかってガットギターを弾いても,奏法的には エレキと同じだったりするのですが,この人はガット特有の 特性を使った演奏をしていて,かなり驚きました。 細かい単音の演奏から,和音やストロークを使った演奏までを シームレスに展開していてかなり多彩。そういえば,デュオの 割には一曲10分以上演奏とかしてましたが,全然中だるみなく 緊張の高い演奏でした。
新澤氏のピアノもとにかく曲の解釈が新しくすばらしい。 左右のバランスもいろいろ変化させて多彩な演奏でした。
初めて聴く組み合わせでしたが,とても高レベルの演奏で すばらしかったです。

06/04/09:渋さ知らズオーケストラ(秋川渓谷)
渋さ知らズのライブ…とはいっても,秋川渓谷というとこ ろであったイベントのもようしものだった様で,入場無料…というか ただの河川敷での野外ライブ。渋さは空の下で聴いてみたい…という 事で出かけてきました。
…というわけで,渋さファン以外も多くいただろうと思われるライブ, 1時間半ブッとうしでしたが,観客みなさんほとんどスタンディングで 踊り回る感じ,なんつーか,すごいなぁこのバンドの牽引力…という 感じでした。
「フリージャズビッグバンド」と紹介されてましたが,まぁ確かに フリーなんですが,難解というよりはどんちゃん騒ぎって 感じで,それでも全体としてはかなりポップで,明るい曲,この辺の 雰囲気が人を引き付けるところなんだろうなぁ…等と思ったり。 明るさって大事なんだと…。
渋さはダンドリスト不破氏がいれば渋さ…なのか?,メンバーは 良くわからず,以前見たときとはだいぶ違っていた気がしますが, まぁそういうものなんでしょう。1時間半ぶっとうしで演奏するのも すごいよな…とは思いますが,ドラムもベースもパーカッションも ギターも二人ずついるので,そういうのも可能なのか?(^^;)…,あとは サックスが3人,トランペット,チューバ,フルート,キーボードが 一人ずついました。あっ,不破氏は演奏してなくて指揮だけでした。
それから,今回はダンサーが多かったです。このダンサーがやっぱり 曲者で,観客を引き込むんだよなぁ…。ずっとほほえみを続けて, 踊り続けるっていうのも結構すごいことではないか?とか,白塗りダンサーって ガリガリじゃないとやっぱり似合わないのか?…,本当にガリガリだけど, どういう生活してるんだろう?とか,おっぱいポロリがあると, どうもそっちに目が行ってしまうサガだな…とか(笑),そんなことを 思ってるうちに,そっちの世界にいってしまいました(^^;)。
というわけで,どうもこれは音楽じゃないな…,総合芸術だと, エンターティメントだと。音楽の良し悪しを超えたもっと大きなもので 人を引き付ける世界なのだと思いつつ,自分もしっかりカタルシスを 感じたのでした。やっぱり野外は良いよ。

06/04/08: Nervio (調布Ginz)
バレンタインのライブぶりの Nervioのライブ。今回は新澤氏の誕生日が近いということで, バースデーライブでもありました。新澤氏は毎年誕生日の頃 Ginzでライブをやってます。
Ginzは最近グランドピアノを入れたとのことで,今回から グランドピアノ。Ginzのステージ(凹み)の中がメンバーの 機材で一杯になりましたが,今回はかなりサウンドバランスが良く, すべての楽器がとても良く聴こえました。そのせいか, 結構リラックスした演奏で,ちょっとミスもあったのですが, 演奏はとても良く感じました。
前半は最近やっているCDにはまだ入ってない新曲を2,3曲。 何度か聴いてますが,結構いい感じに仕上がってきてます。 後半は新曲のカテキン(^^;)というのを初演?。出だしがかなりかっこいいです。 アンコールではバースデーケーキのプレゼンターになった 林正樹氏が飛び入り,パラボラをピアノ連弾でやり, 物凄く盛り上がりました。
新澤氏はほとんどピアノばかり弾いてました。そうですが, 単なるジャズとかじゃなくて,新しいサウンドになってるのが, なんかNervioのサウンドなんだなぁ…と。新澤氏がすべての メンバーを統制してるわけじゃなくて,パーカッションも, ドラムも,ベースも,サックスもそれぞれ本人らしく演奏していて, そのブレンドの具合いの妙がNervioなんだと思いました。
今回はそのバランスが良く聴きとれ味わえたのがとても 良かったと思います。




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