'00年7月〜9月の間に観たライブなど

00/09/30: おひらきまつり2000(猿田彦神社)
伊勢旅行記の 中のお祭り編に書いてます。 ちょっといつものレポートとは経路が違いますが。

00/09/23: ラルフ・タウナー(トリビュウート・トゥ・ラブジェネレーション)
まずライブ自体とは関係ない話だが,このトリビュウート・ トゥ・ラブジェネレーション(TLG)という会場に行くのは はじめてである。お台場に出来た新しいライブレストランで あるが,意外に面白い企画をやってる。ただしいつもは あんまり客が入っていないようです。いつまで持つのか心配。 もっともわたしが行った日は団体100名というのが入っていて, 満員。店員も慣れてないのか(苦笑),あまり接客が 良くなかった。
さて,ラルフ・タウナーのソロライブである。あまりはっきり とした記憶がないが,以前一度だけみたことがあるような 気がする。5年前のECMの企画の時だろうか?。
ラルフ・タウナーという人はガッドギターおよび, 12弦のアクゥースティックギター(スチール弦)を使う人で 非常に特徴的な演奏をする。その他にピアノを弾くこともある。 ただし活動的にはメインとしてECMからアルバムを出すことが 多いが,ソロギターだったり,バンドだったり,デュオだったりと 活動の形態自体は様々だったりする。彼自身は生楽器しか 演奏しないようだが(アルバムでシンセを付加することとかは あるようである),ウェザーリポートの一枚目に参加していたり, キースジャレットが共演した数少ないギタリストの一人だったりと, トラディショナルな形態のバンドにこだわってる感じはしない。
とはいえ,やはりラルフ・タウナーのイメージとしては, ソロだったり,生楽器とのデュオだったりする(Solisticeという クァルテットもあるが)。今回のライブも結局ギターのソロ コンサートという形態であった。
会場の方針なのかあらかじめプログラムのようなものを配っていたが, それと完全に一致するわけではなく,気分で多少曲を変えたり して演奏していたようである。オリジナルもあったようだが, カバーも結構あった。2セットのステージで1セットが1時間半程度, 合計15曲程度もやっただろうか?。
彼のスタイルはおそらく元々はクラシックのスタイルを 持っているのだろう。座って完全な指弾きでソロを弾く。 フォームも多少変形しているがカントリとかよりはクラシックに 近い気がする。しかしその特徴的な感じに対し,なっている 音自体を聴くと実は結構多彩であることに気づく。曲によるのだが, ジャズ的なコードチェンジを使うこともあれば,ロック的な チェンジ,フュージョン的なコードも使うし, ヨーロッパ的(クラシックや民謡)な雰囲気の音使いもするのである。 したがって演奏する曲の幅も広く,ジャズの曲からポップスの カバー,クラシック的な曲まで様々であったと思う。であるのに やはりタウナーというアイデンティティが十分に感じらるところは さすがにである。
普段ECMで聴くことが多いので,生のSRを通ってでてくる音は, CDに比べ若干ハスキーで分厚い音であった。12弦は2曲のみ 使いあとはすべてガッドギター。6弦を巧みに操り, ギターという楽器がソロインプロビゼーションを十分に こなせる楽器であることを実感させるすばらしいライブであった。 はっきりいって,みたことが無い人は一度みるべきである。
ちなみにアンコールはナーディスを演奏。アルバム「ソロコンサート」を 聴いた人には涙ものだったようである(笑)。

00/09/18: 布川 矢掘セッション( 六本木ピットイン)
布川・矢堀両氏による師弟セッション。 前回からおよそ3ヶ月ぶりであるが,同じく岩瀬・岡田両氏の リズムを従えて行われた。
今回は矢堀氏プロデュース2dayの初日ということだが, 矢堀氏からは矢堀氏のオリジナル,布川氏からは 今月レコーディングされる「帰ってきたウルトラマンジャズ」で 収録予定の曲が提案されたようだ。そのほかにもスタンダードを 布川・矢堀両氏が一曲ずつトリオで演奏するという趣向も あり,セッションながらバリエーションが非常にある 選曲であった。
布川氏は大高女史とのセッションの 時に披露した白いストラトを含めギターを3本持ち替えて 演奏。それぞれの音色を生かした演奏をするが,基本的には 太くて甘い音色。結構レガートが効いている。フレーズの 幅も広くてQuietからLoudまで,ゆっくりバンドを盛り上げていく。 良くギターが喋ってる感じである。
一方矢堀氏は前回のWYSIWYGのライブの 時に語っていたように,いろいろプレイの変革中のようで, ギターは一本だけしか使わないが,エフェクタ等に より多彩な音をつくっていた。基本的にはエッジの効いた 音色であるが,以前より「甘み」が出た気がする。 メカニカルなフレーズで盛り上げていく醍醐味は 相変わらずだが,ロック的なフレーズも織り混ぜ多彩に なっていた。トリオ(布川氏抜き)で「枯葉」という非常に 「あまりやらない曲」をやったが(笑),なんか非常に 奇をてらっており良かった。
ドラムの岩瀬氏は相変わらずのテクニック。フィルの 多彩さ,奇抜さ,手数の多さはすばらしい。岡田氏も いつも通りメロディアスながら安定して,ノリのいい フレーズをだくさん出していた。
曲的には,ファンク調の曲,トライバルテック的な曲:-), 布川トリオ(矢堀氏抜き)によるスタンダード(「黒いオルフェ」), ちょっと変なラテン?って感じがするウルトラマンからの 曲を三曲,布川氏の「Departure」から一曲,矢堀氏の「b」 から一曲,という風に曲自体も,また曲調も非常にバリエーション豊かで, 楽しめるものであった。特にセッションらしく演奏の中で 曲が完成していく感じがあり,出だしと曲の終りが 全く違った印象の曲になっていて,面白かった。
非常にセッションらしい,オープンで多彩な演奏,なおかつ 各メンバーの高度なテクニックも楽しめるライブであった。 特に次の予定は無いようだが,またきっとあることを期待する。

00/08/29: Infinite Circle( 六本木ピットイン)
まったく予備知識がなく,その人(グループ)の演奏を 初めて聴きに行き,一曲目が始まる時,結構いろんな 思いが頭の中を駆け巡る事が多い。 岡田治郎氏は,わたしが良くライブで聴くことが多いお気に入りの ベーシストであるが,そのファンの方から,一度,岡田氏が 所属するInfinite Circleを聴くべきとの話を聞き 聞きに行った。
メンバーは,
  • 村井秀清 (pf, key)
  • 野々田万照 (sax)
  • 岡田治郎 (b)
  • 藤井 摂 (ds)
  • 養父 貴 (g)
の五人。ステージに5人が上がり,演奏が始まったとき, いい意味での驚きがあった。曲は非常にポップなフュージョン。 アレンジが凝っていて,非常に爽快なサウンドに仕上がっている。 都会的というよりは自然が似合うというか,Field of the windという タイトルだったりして,そういうのを狙っている様である。
他の曲も非常に緻密にアレンジされていて,またバンドのメンバーも 息があっていて,そのアレンジを正確に再現していく。 各メンバーのソロも比較的コンパクトに曲に調和した形で 取ることが多い。個人的にはこのように良くアレンジされていて, なおかつポップに仕上げているフュージョンというのは, 結構安直な印象を受けることが多いのだが,なぜかこのバンドには そういう印象が全くなかった。ほとんどの曲はリーダの村井氏が 書いているようだが,作曲,アレンジ能力がすばらしいということだろう。 二曲だけ養父氏が書いた曲を演奏したが,同じ方向性でいい曲で あった。
各メンバーの演奏に耳をやると,前述の通り各ソリストのソロは バンドアレンジの中できっちりと行われているので,大きく アウトしたり弾けたりすることはあまりないが,ライブ全体で それぞれ一曲くらい長いソロを取る曲があった。サックスの野々田氏は, 断片的なフレーズとメロディアスなフレーズを繰り返し,うまく 曲を盛り上げていく。
ギターの養父氏はバッキング時は アルペジオやゴダンのギターのカッティングを使って爽快な 演奏をする。村井氏のシンセの合間をうまく縫い,バンドの サウンドを豊かなものにしていた。ソロも右手の指をうまく使って 個性的な演奏をしていた。
村井氏はリズミカルな演奏で曲を盛り上げていた。生ピアノ以外は シンセだけというセッティング(エレピとシンセの音)であったが, コードをホールドしたりして,サウンドをコントロールしていた。
ドラムの藤井氏は,シンバルワークを巧みに操り,ソリストを うまく扇っていた。
ベースの岡田氏は他のバンドで見せる以上にメロディアスかつ アグレッシブなベースラインで,むしろソリストを喰うくらいの プレイをする。アンコールでのベースソロはすばらしい指数で 驚かせた。ある意味こういうバンドでチョッパーをやらない 岡田氏がベースをプレイすることが一つのこのバンドの特徴とも 言えるかも知れない。
久しぶりに,アレンジをしっかり聴かせる「バンド」の演奏を 聴いた気もする。岐阜のほうでツアー(?)をやっていたらしいので, そのせいか?息もピッタリあっていた。どこまでがアレンジで どこまでが即興なのか良くわからない部分もあったが,各メンバーが お互いにやることを十分理解していて,それぞれのメンバーの サウンドがうまく絡み合っていた気がする。その分即興のスリリングさは 多少減るのであるが,うまく構築されたいい演奏を聴いたという感じだ。 最近この手の演奏を聴いてなかったので結構新鮮であった。
ライブに行く前の予想とは全然違っていたが,いい意味で 予想外だったという感じである。他の曲も聴いてみたいし, またライブを見たいものである。

00/08/23: WYSIWYG( 六本木ピットイン)
5月30日ぶりのWYSIWYGの ライブ。考えてみるとこのバンドもアルバムを出したのが97年, ライブ活動はそのずっと前から行っているから,3年以上, もしかすると4年以上やってるバンドかも知れない。そういう 中でバンドのサウンドも変化している。
今回はいきなり一曲目が「ラッテ」という矢堀氏がfragileの 新譜に入れるために書いた曲。その後最近良く演奏する「蟹やしろ」 等,既に以前のCDに入ってる曲はほとんどなく,前進への意気込みを 感じさせる。今日,矢掘氏が書いたばかりの曲も,つくった ばかりとは思えないノリノリのカッコよさである。
数日前自己のトリオを立ち上げた 矢堀氏は,ギターの演奏自体を再度見直している最中のようで, 今までに比べ,フレーズも力強いものが増えている。以前のメカニカルさも 持っているが,それに加え,ギター自体の特性(チョーキング, アーミング,タイミング等)を生かした演奏が印象に残り, 表現力がより増えた気がする。エフェクタのセッティングも あまり細かくは切り替えず,むしろ自分のサウンドを確立して 行こうとする方向性が感じられる。このバンドの中で, ソロやテーマといった方面からぐいぐい引っ張っていってる 頼もしい演奏であった。
一方ピアノキーボードの新澤氏は,ソリストやリズムの間を うまく埋め,サウンドのすきまに音を流し込むようなサウンドワーク。 派手ではないが,バンドのサウンドの一体感をより演出するような プレイを行っていた。タイミングや,音の入れ方により より少ない音でバンド全体にメリハリをつける様な演奏であった。
ベースの岡田氏は以前より,アグレッシブさが増した様で, より複雑でリズミカルな演奏。ドラムの島村氏も,複雑な リズムを,難しく感じさせない流れるようなドラミングを, 行っていた。
やはり,長くやってるからであろうが,バンドの一体感を 感じさせるライブであった。しかし同じサウンドで完成度を 上げてきてるわけではなく,ここのメンバー自身は, それぞれ,スタイルを変貌させており,バンド全体も 前進している気がする。そういう中でもそれぞれのメンバーの 変貌に合わせ,各メンバーがうまくそれぞれを演出している 辺りがさすがバンドという感じである。
新しいアルバムの噂もちらほら聞くのだが,あまり具体的には 進んでいないらしい。今のこのバンドサウンドを是非記録と して残して欲しいものである。

00/08/17: 矢掘孝一トリオ( 六本木ピットイン)
矢掘孝一氏の新トリオの初ライブである。 メンバーは岩瀬立飛氏のドラムと,岡田治郎氏の ベース。先日あった 布川氏とのセッションから布川氏を除いた形と なる。矢掘氏は数ヵ月前に自己のトリオのCDを リリースしており,そのライブも 行っている。しかしおそらく長期的に引っ張っていくのは 今回のトリオのつもりなのだろう。そういうわけで, 新しいトリオの船出となるライブである。
演奏曲はそのアルバム「b」からと,その他スタンダード。 ただし一曲目は矢掘氏のオリジナルDrag Swing。スピード感の あるテーマを持つブルースで,トリオの強力なリズムを アピール,観客の度肝を抜く。このトリオ特徴というと, メカニカルで多彩なフレージングを持つ技巧派の矢掘氏が 岩瀬・岡田両氏の超絶リズム陣を従えて「ジャズ」を 演奏するということだろう。実際ほとんど曲は4ビートで, いわゆるフュージョンやファンク的な曲はなかった。
矢掘氏はゴダンと,ソリッドをほぼ交互に持ち変えての演奏。 ゴダンではギターシンセ等も混ぜ,ダイナミックかつ 美しいな演奏。ソリッドでは透明感のあるサウンドと 軽く歪ませたサウンドで,多彩なフレーズを繰り出していた。
岩瀬氏は,いつも通り,トップコンシャスでかつしなやか。 手数というか音の詰め込みには圧倒されるが,それが 嫌みでなく,その細かいクリックの固まりが大きなグルーブを 作り出していく。
岡田氏はほとんどフレットレスを用いた4ビート。よく考えてみたら, ここまで4ビート主体の岡田氏の演奏を聴くのははじめてである。 いつものベースとは思えないほど柔軟でメロディアスな 健在であるが,4ビートにすると意外にアグレッシブである。 ベーシックならラインはほとんど聴かれなかった。
この様にここのメンバーの演奏は実に高度で圧倒された。 ただ,まだバンドが生まれたばかりだからであろうが, 一体感みたいのはあまり感じられず,そういう意味では まだセッション的なサウンドであった。この辺は リーダの矢掘氏がバンドコントロールしていくところであろう。 多少その辺で苦労している感もあったが,今回のライブでも 演奏が進むにつれ,その辺は徐々につかみかけている様であり, 何度かライブ演奏をしていくうちに,一体感が増していく と思われる。
とにかく,それぞれのメンバーの演奏はすばらしいので, それが一体となった生き物の様な演奏をしてくれると すごいことになりそうだ。今後の成長が楽しみなバンドである。

00/08/14: 布川俊樹セッション( 六本木ピットイン)
5月にあった大高セッションと メンバーがかなりだぶっているが,今回は布川セッションと 銘打って行われた。前回のセッションの時,布川氏が 大高女史の曲を結構苦心していたらしい(わたしは あまり感じられなかったが)ので,そのリベンジという ことだったのかもしれない。
ということで,メンバーは布川俊樹(g),大高清美(org), 木村万作(dr),岡田治郎(b),前回とはドラムが異なるが, むしろ布川氏以外は大高女史のレコーディングメンバーでもある。
大高女史の曲を二曲,あとは布川氏の曲,一曲ロベンフォードの曲 を演奏した。布川氏は比較的新しい曲も用意していたようである。
前回も感じたが,エレキギターとオルガンという組合わせは, ジャズ(4ビート)より比較的ロックぽくやった方が,かっこ 良くなるようである。オルガンとギターという組合わせは 昔からよくあるが,ロックでない場合もブルース色が強かったり するものが多い,というかそういうのが名盤になってる気がする。 そういうわけで,今回のセッションもロック・ファンク色が 強かった。ドラムが木村氏というのもあるのだろうが, ダイナミックなビートの上に,歪んだギターとドライブする オルガンが乗っかる。
布川氏はセミアコ,愛用のソリッド,買ったばかりというストラトの 三本を交互に使い分け,そのギターにあった演奏をしていた。 セミアコでは箱鳴りするディストーションサウンドで, 少し枯れた味のある演奏,愛用のソリッドでは,その多彩な サウンドを駆使して感情のこった演奏を,ストラトでは エッジの利いた固い音を使い,ファンキーな演奏。 実に多彩である。いつも以上に感情豊かで,表現の幅が 広いプレイをしている。布川氏はその感情をギターの音に ダイレクトに変化するのが実に巧みで,その集中している 感じが音に出ていた。本人も上機嫌だったのか,演奏が 進むにつれ,どんどん演奏が饒舌になった気がした。
大高女史は前回のメカニカルな演奏とは違い,今回は 割とダイナミックで,メロディアスな演奏であった。 前半は割と難しい(しかし本人の曲)曲が多かったが, そういう中でも,美しい流れるようなメロディを作り出している。 ただし後半になって布川氏が饒舌になってくると, 多少押されてる感じがした。まぁそれだけ布川氏が好調だった という気もするが。本人もリベンジを望んでいるらしいので, 次回は大丈夫だろう:-)。
岡田氏はいつもながら正確で,メロディアスなベースを奏でるが, 今回はいつもよりファンキーというかリズミックな気がした。 今回のバンドのサウンドに合わせたのか,彼自身の変化なのかは, 今回のライブだけではわからない。しかしこの人のベースは いつ聴いてもすばらしい。ソロが一曲しかなかったのが ちょっと残念。
木村氏はダイナミックでドライブするドラミング。こちらも 安心して聴けた…のだが,一曲間違ってました(笑)。
というわけで,全体的には布川氏絶好調のライブ。 前回のセッションよりよりロック色が強く,その分ギターの 表現力が強く耳に残ったライブであった。このセッション 次回は11月だそうで,次はどうなるか期待したい。

00/08/11: フェニックスジャズフェスティバル ( すみだトリフォニーホール)
飛び込みでフラリといったジャズフェスティバルである。 ジャズフェスといってもホールで夕方から3時間あまりという ものである。
フェニックスジャズフェスというのは 阪神大震災の復興を願って神戸で開催されはじめた もので今年で6回目。東京以外に名古屋,神戸で 開催される。アメリカのバークリー音楽院が全面協力 しており。参加しているミュージシャンはバークリー 関係者ばかりである。…というかおそらくバークリー 講師であるタイガー大越氏が神戸出身であるのと いくらか関係があるのだろう。
ライブは司会もいて,割とコアなジャズファンじゃなくても 楽しめる形式。30分〜40分くらいのセットが4つある。 ゲイリーバートンが出ること以外はノーチェックで出かけたが, なかなかの面子で,これで前売り5000円,当日5500円は 安い。以下4セットを順に簡単に説明する。
最初は「バークリー音楽大学学生選抜メンバー」のセット。 文字通り現役の学生である。メンバーは
  • Jaleel Shaw (sax)
  • 山中 千尋 (p)
  • Justin Purtill (b)
  • Tony Escapa (dr)
の四人。学生であるがさすがにジャズを専門に勉強している だけあって,その辺の学生とは違う。アグレッシブなジャズを 演奏する。それなりに聞き応えはあるが,まぁまだ若さを感じるというか バンド全体のサウンドを意識するまでには至ってない。それぞれ自分の 演奏に一生懸命という感じ。
その中でドラムの演奏がわりかし, いい感じというか,よくバンドの音を聴いて柔軟な演奏を していた感じがする。ちょっとビルスチィワート的な感じ。 サックスはうまいが固い感じ,ベースは奇をてらったおもしろい事を しようとしている点は好感が持てるが,イマイチ技術がついてきてない。 ピアノは指はすごくよく動くが,左右のバランスが悪く,音も 単調で詰め込みすぎ感じである。とはいえまだ二十歳前後と 思えばそれなりに今後が楽しみな演奏であった。
次は東京のエリアゲストとして「バークリー音楽大学OB日本人 選抜グループ」。バークリーを卒業して日本(主に東京)で プロとして活躍しているメンバーによるセッション。 とはいえ,曲はしっかり編曲して8管編成という豪華なもの。メンバーは
  • 松島 啓之 (tp)
  • 岡崎 好朗 (tp)
  • 石崎 忍 (sax)
  • 三木 俊雄 (sax)
  • 宮地 傑 (sax)
  • 谷口 知巳 (tb)
  • 三好 亜貴子 (tb)
  • ユキ・アリマサ (p)
  • 佐藤 慎一 (b)
  • 大坂 昌彦 (dr)
である。なんか思ったよりも豪華なメンバーでびっくりである(^^;)。
オリジナルが多かったが,さすがに8管なので しっかりホーンアレンジしている様で,おそらく全部三木氏が やったのだろう,彼がバンドのコントロールをしていた。 それぞれのメンバーにソロが回るような感じで4曲ほど演奏。 比較的ベーシックな感じの演奏だったが,ホーンのコードが 実に綺麗だし。ユキ・アリマサ氏のバラードのピアノソロの 盛り上げ方とかは実にすばらしかった。
次はいよいよ本校からの現役の講師陣たちの演奏。まず Gary Burton(vib)とSergio Salvatore(p)のデュオ。 トリではないが,今回の目玉といえよう。ゲイリー・バートンは よく日本にも来ているが,よく考えてみるとピアノとのデュオが 多いように思う。知らなかったが現在バークリーの副学長とのこと。 バークリーと縁の深いこのフェスに出るのは当然なのかもしれない。 セルジオ・サルバトーレはバークリーの 講師ではないが,13歳でCDデビューした神童。現在19歳とのこと。
さて,演奏を聞き出して,いきなりさすがのバートン氏の演奏に やられてしまう(^^;)。知ってる人もいるかも知れないが,私は 一番音が好きな楽器はビブラフォーンであることをあらためて 思い出してしまった。バートン氏はスタンダード(一曲のみ サルバトーレ氏のオリジナル)を実に 多くの語彙とダイナミクスで歌い上げる。そのタッチの多彩さと 正確さ,スピードどれを持っても強烈な存在感がある。 ビブラフォーンの様に,サスティンが延びる楽器でもけっして 濁るようなサウンドは出さない。よく考えてみたら, バートン氏の演奏を生で聴くのは初めてだったが, すごいとあらためて思ってしまった。サルバトーレ氏の 演奏もすごみは感じたが今回はバートン氏の演奏に耳が 行ってしまったので,あまり印象に残らなかった,ごめん。
最後が「バークリー音楽大学教授陣グループ」。 文字通り現役講師を集めたバンド。メンバーは
  • Donna McElroy (vo)
  • Larry Monroe (sax)
  • Jim Kelly (g)
  • Orville Wright (p)
  • タイガー大越 (tp)
サポートで
  • Joel Taylor (dr)
  • 上山崎 初美 (b)
であった。最初3曲ほどボーカル無しで演奏し, その後ボーカルをいれて2,3曲で幕という構成であった。 このバンドは比較的ブルースっぽい曲を演奏。楽しさを アピールする演奏であったが,さすがにどの楽器も一流, 音の存在感とか安定感はすごい。
この様に,豪華なメンバーによるすばらしい演奏で 十分演奏を楽しむことが出来た。学生からOB,講師という 順で演奏を楽しんだわけではあるが,興味深かったのは, 後になるにつれて,出ている音が段々シンプルに感じるということ。 シンプルに感じるが本当にシンプルなのかはよくわからない。 しかし後になるほど,すごく簡単に簡単な事を演奏 しているように感じるが,音の存在感とか出音の綺麗さとかは 増してくる。もちろん,講師陣達もアグレッシブで アバンギャルドな演奏も可能なのだろうが,まぁフェスの 意図も意識しているのか,ストレートな演奏であった。 しかしそういうストレートな演奏にも関わらず, 演奏の盛り上げ等もたくみであり,結果的に心に 残る演奏をしたと思う。
今回は飛び込みで行ったライブであったが,実に お得であった。

00/08/04: マイクスターン( Sweet Basil 139)
現在のトップジャズギタリストの一人であるマイク・スターンの 日本ツアー。事前に得た情報によると,どうやら今回の来日は 10個所以上を回るツアーの様である。北海道から九州まで, こういうジャズの全国ツアーは実に最近珍しいことのように 思う。各会場の入りがどうだったかはわからないが,是非こういう 企画はどんどんやって欲しい。
さて,マイク・スターンのライブ評や,CD評を読むと,よく 「ギター少年」とか「ギターキッド」とかそういうのを見かけるが, やはりライブを見ての第一の印象はそれである(笑)。 とにかくギターを弾くのが楽しそうであり,かなりずっと ギターを弾き続けている。
メンバーは, 前回の来日からするとサックスが 変っているが,基本的にキーボードレスのクァルテットという 路線は同じである。サックスがいるが,あくまでもギター・ マイク・スターンが主役。
ほとんどの曲がマイクのリフで 始まり,そのままドラムとベースが入る,そしてリフから スムーズにテーマに入る。この瞬間マイクが弾いていたリフは ベースのリンコーンに移るのであるが,そのギャップを感じさせない。 つまりリフ時のギターとベース,ドラムの一体感がすばらしく, 三人で一つの大きなグルーブを作り出している。
テーマに入りサックスが入る場合もあるし,ギターだけで テーマを弾く場合もある。だいたいの曲でそのままマイクのソロに 入る。このソロがやたら長い,5分とか10分とか平気で弾いている。 マイクはいつもの(笑)あの体を小刻に揺らす動きで,ひたすら 弾く。これが実に楽しそうでみていても,それが伝わり こちらも楽しくなる。ステージの一番前に立ち客席を覗き込んだりして まるでロックスターの様だ(笑)。ノンディストーションで コマからフレーズを弾きまくった後は,ディストーションを 踏んで,また盛り上がる。この辺もいつものパターン。
そしてギターソロが終わると,サックスソロだったり, ベースソロだったり,ドラムソロだったりする。しかし そういう場合でもマイクはかなりギターを弾いている。 バッキングだったり,絡みだったり。マイクに比べると 他のメンバーのソロは短い(デニチェンは多少長い)。 つまりマイク・スターンのプレイを骨格として組み立てている バンドであり,演奏である。
この様にずっと演奏し続けるマイクであるが,ほとんど エフェクタやボリュームの操作はしないのに,リフ, テーマ,ソロ,バッキングを縦横無尽に行き来する。 その音量などの調整はすべてタッチで行っていて, タッチコントロールの絶妙さには舌を巻いてしまう。
ドラムのデニチェンはおそらくもう一人のこのバンドの スターであり,ソロのスペースとかも結構あった。 結構小さい径のセットを使っていたが,その 音のヘビーさはすごく,硬くて重い音を出していた。 シンバルよりスネアやタムワーク,そして特徴のある バスドラで独特のプレイをする。
ベースはさほど目立たないが,実にツボを押さえた 演奏。ドラムやギターのリフ等との一体感は実に すばらしい。
サックスのボブははじめて聴いた気がするが, 比較的短いフレーズを多用し,リズミカルなプレイを する。音も大きくパワーのある演奏。
この様に重量級のリズムにヘビーな演奏。スピーカの 近くにいたせいもあるかも知れないが,実に迫力があり ラウドな演奏であった。ノリノリのマイクは,アンコールでは 客席に手拍子を要求,客席一体となって盛り上がった ライブであった。
やはり彼を評してギター少年と呼ぶしかないだろう。 その演奏の楽しさがこちらまで伝わってきて爽快なライブであった。 立ち見で踊りながら聴くというのもよかったかもしれない。

00/07/21: ビル・フリゼール (赤坂ACTシアター)
音楽を言葉で語るというのは,もちろんその音楽に対する レビューアの想いを伝えるというのもあるが,主は音楽説明 することであろう。本来形のない音楽を言葉で伝えるということは, 音楽の特徴を幾つか挙げていくことにより,読んだ人の中にある 別の音楽の記憶から特徴を抽出し,伝えたい音楽を連想させる ことである。
今回ビル・フリゼール(以下,ビルフリ)のライブについて語るのであるが, うまく伝えるのが難しい。どういう言葉を選べばうまく読み手の中に 似た音楽を連想してもらうことができるのだろうか?。今回の ライブで演奏した音楽の特徴を単純に挙げると,
  • トリオ(ギター,アクゥースティックベース,ドラム)である。
  • ビルフリはセミアコ(gibson)とアクゥースティック(Martin)を 弾いていた。
  • カントリーからの影響を強く感じる。
  • コード進行はシンプルなものを繰り返すことが多い。
  • ボイッシングはテンションを多用する場面もあるが 基本的に透明感がある。
  • フリージャズやアバンギャルド的な側面も強い。
  • ビルフリはディレイ等を駆使し,フレーズのループやリバースを 多用し空間を演出するような演奏する。
  • 聞いていて心地好くなる。
…まだまだあるが,書けば書くほど発散しそうである。私が 普段避けている「誰々に似ている」という表現をしようと思っても 思いつかない。という風につまりは非常に言葉で表現するのが 難しい音楽であった。さて,前フリはこれくらいにしよう。
今回のライブは上記の通りトリオ,メンバーは
  • Bill Frisell (g)
  • Tony Scherr (b)
  • Kenny Wollesen (dr)
である。申し訳ないが,ビルフリ以外は知らない。比較的 若いプレーヤのようである。実は今回のライブはこの数日前に 映像(無声映画)に合わせて演奏するという催しのための 来日らしい。どういうライブだったのかは興味があるが残念ながら 行かなかった。ビルフリは9年前に自己のトリオで来日しており, その後はポール・モチアンのバンドや矢野顕子との共演で来日した 記憶があるが,私にとっては生の演奏を見るのは9年前以来である。 当時もエフェクタを楽器の一部のように駆使し,非常に息のあった バンドメンバーとダイナミックにインプロビゼーションを行って 行くプレイにかなりのショックを受けたのを覚えている。 エレクトリックギターしか出来ない表現,つまり エフェクタも含めて楽器という表現のある一つの形を見たという 感じであった。その後,ビルフリはいろんなミュージシャンとの 共演を得て,演奏スタイルを変えていった。特にカントリー色を 強め,近年のアルバムも古きアメリカの田舎の様なそういう風景に 合う音楽という印象が強くなってきていた。
今回のライブも,ギターのアルペジオを多用し,コード的にも カントリーやフォークの様なものが多い。曲目は良く把握してないが, 終わった後に人に聞いたら,過去数枚のアルバムからのオリジナルが 主体だったようだ。
しかしカントリー的といって古くささ…,いや逆かもしれない。 音楽自体は古くさいというか,非常にした親しみやすい懐かしさを 感じさせる。しかし演奏やサウンドは違う。ディレイループを 多用し,フレーズをリアルタイムにサンプリングしていき,時には リバースをかけたりする。そしてその上で更にアルペジオを重ね ながら演奏をすこしずつ変化させていく。 ベースやドラムもそれに絡んで行く というかなり前衛的なものであるし,その空間的なサウンドは 非常に不思議な広がりを持つ。そしてビルフリ自体は ループの上で単音のフレーズを弾くのではなく,常に コード(アルペジオ)を弾いていく,少しずつ変化させ カラーを変えていく。まるで空間上にハケでいろんな色を 重ね塗りをしていく感じである。キャンバスの上に線を引くわけ でもないし,隙間に色を置いていくわけでもない。重ね塗りである。 そしてその重ね具合いがなんとも美しい。
従って,ディレイループを使っているのに,ディレイ 臭さがない。ループでなっている音と,実際に弾いている音の 区別がつかない。背景をつくり線を引くという形ではないからだ。 おそらくコードもそういうのを意識して弾いているのだろう。 ループでなっている音と,演奏している音がうまく 色合いを出すようになっているようだ。
そのギター(とエフェクタ)で出すサウンドは,複雑で 厚みがある。ピアノトリオが,ピアノ自身がかなり トリオ中で支配力を持つのに対し,ギタートリオは 一般的にはピアノほどは支配力を持ち得ないが,このトリオに関しては 完全にビルフリのギターがサウンドを支配している。もちろん ベース・ドラムも必要不可欠なプレイをしていたが…。 まるでピアノのように複数のラインが同時に上下している。 こんなに横のラインを多く持つギターははじめて聴いた。
うまく文章で表現出来たかどうかはわからない。しかし, 技術的に高度で複雑で前衛的であるにも関わらず, 古くさくて懐かしくて,そして思わず心地好くなる。 ヨーロッパ的な知的な透明感とオールドアメリカチックな 懐かしさ,相反するものを同時に持ち得る, そういうサウンドの演奏だった。 9年前の驚きのライブに対し,今回は唸らせてくれる そういう深みを感じる演奏であった。また来日して欲しいものである。

00/07/18: 新澤セッション( 六本木ピットイン)
セッションである。セッションは各メンバーがそれぞれやりたい曲を 持ち寄って演奏する。リハもするがほとんど初見である。 演奏が始まるまで…,いや終わるまで何が起るかはわからない。 従って正しいセッションの聴き方とは,演奏の完成度を 聴くのではなく,その時に起きたこと(一回性)を聴くことである。
というわけで,実にセッションらしいセッションであった。 と,書くと「あぁー完成度が低かったってことですね?」と 思われるが,そういう意味ではなく,そういうことが 気にならないくらい盛り上がった演奏だったということである。
メンバーは今回のセッションリーダである 新澤健一郎(p, kb)を初めとして, 水野正敏(b),矢堀孝一(g), 音川英二(sax),そして岩瀬立飛(たっぴー)(dr)の5人である。一見いつもの メンバーの様で,初めての組み合わせ。水野氏,たっぴーの 組合わせはずいぶん以前にスタンダードをやっているのを聴いたことが あり,最近はあまり耳にしていない。各メンバーともそれぞれ 作曲能力が高く,独自の世界を持つ曲を書くため,それぞれの メンバーが持ち寄った曲をどうこのメンバーで料理していくのか?, という点でも期待が膨らむ。
WYSIWYGの曲,矢堀氏の新譜「b」からの曲,QLの曲, ポンタボックスや3×3から等,聞き慣れたナンバーも この面子での演奏を聴くと,全く異なったものとなる。 やはり水野氏のベースの存在感はすばらしい。地をはうような 重いサウンドでバンド全体をグルーブさせる,そういうベースを 意識したのかたっぴーはいつもにトップコンシャスなドラムワークを しているようだった。そのグルーブの中で新器材も導入し:-), 多彩なサウンドで変化を加える矢堀氏のギター。それぞれが 異なる帯域を埋め,バンド全体はアグレッシブにグルーブをする。 これだけで十分サウンドが厚くなったためか,新澤氏はほとんど バッキングは行っていないようであったが,そういう中でしっかり すきまを埋めているようで,各サウンドの接着剤のような コードワークをする。ピアノのサウンドの変化も生楽器とは 思えないほどする。
音川氏,矢堀氏,新澤氏のソロもすばらしい。ほとんどの曲で 三人がソロを取っていたが,各曲でぐっと盛り上がる瞬間に向け, フレーズを持っていく感じがする。特にポンタボックスの曲での 新澤氏の切れ具合いは非常に良かった。 矢堀氏は今回は新しい機材を使った多彩なプレイの方の印象が 強かったが,もちろんいつもながらのメカニカルなフレージングに 加え,アーミングまで駆使したちょっと切れかかった盛り上げ方も 意外でいい。音川氏もフリーなどでの自由な歌い回し等は さすがである。
またセカンドセットで岩瀬氏がロッド(細い棒を束ねたスティック)を 使い,シンバルとハイピッチのスネアで,人間ドラムンベースを やったのはびっくりした。物凄いスピードでビートを刻む。 水野氏のベースがまた非常にベビーなため, 本当にドラムンベースのようである。テクノ&ドラムベースの サウンドは打ち込みの中で生まれてきたリズムであるが,それを うまく即興演奏の中に取り入れているようである。
聴いたことのある曲が聴きなれないサウンドで聴ける,そういう醍醐味を 十分味合わせてくれたライブであった。もちろん,ロストしたり キメが合わなかったりした瞬間も多々あったのであるが(^^;), それ以上に新しいサウンドが生まれていく瞬間が多くあり, またメンバーがその瞬間に刺激され,更に演奏に すごみを増す。そういうセッションならではのライブを 十分楽しめた。またこの面子で何かやって欲しい。
しかしセッションのわりには相変わらず難しい曲ばっかり だったような…:-p。

00/07/07: Quiet Leaves( 大泉学園 in F)
私事で恐縮だが,大泉学園という場所,どころがそこに行くために 乗る西武池袋線というのに乗るのもはじめて。そういう中, 台風接近のニュース。雨に不安になりながら出かけた。
19:30開演であるが,18:30頃,店にはいる。 in Fという店は普段は飲み屋をやってる様で,つまみというか 料理が充実している。お酒もいいものをおいているようである。 その和風のメニューに対し,店構えは喫茶店のような感じ。 しかし,壁の棚一面のCDとグランドピアノがジャズの店であることを 主張している。さて,入ってみると,メンバーの音川氏, 安ケ川氏がいる。ピアノがおいてある。ドラムセットはない?。 頭に「?」が飛んだが,どうやらドラムの岩瀬氏とピアノの 新澤氏がまだ来てないらしい(^^;)。そうこうしている間に 岩瀬氏が到着。あたふたとドラムを組はじめる。新澤氏は 開演15分ほど前に到着。どうやら踏み切りで 渋滞していたらしい。そして踏み切りの中で作曲(アレンジ)を していたらしい(^^;)。今日はシンセがなくて良かったね:-)。
というわけで,いきなりの公開リハーサル。車の中で書いたらしい 譜面を配っている。曲を相談している。こういうのをみれる機会は なかなかない。実におもしろい。演目は事前に決めてないし, なおかつ新曲もやるという感じらしい。しかも今回は, 新曲もある。ちょっと種明かしをみての鑑賞になるが,解答を みて解法をみるのもちょっとおもしろいものである。
さて,ライブ開始。1stセットは,4曲。新曲が主体。 いずれも美しい,静かめの曲。メンバーどうして, ボソボソと語り合うような曲だったり,美しい曲だったり。 白眉だったのが,今日は七夕ということで, 本日限定ネタということで演奏した七夕(笹の葉さーらさらーというやつ)。 新澤氏がリハモしたものであるが,実に美しいハーモニーである。 QL(Quiet Leaves)のカラーを実にうまく盛り込んでいる。 一見すると季節もののお遊び企画のようであるが, 七夕のメロディはペンタトニックであり, そのペンタトニックを中心にコードを美しく重ねていく, そういう試みがされているのだろう, 決して安易なリハモではではない。季節ものにしたのが かえって勿体無い,毎回ライブでやって欲しいと思う 位の出来であった。
1st最後のジャイアントステップスは それなりに盛り上がったか?。この店(in F)は小さいので, ベース以外は生音である。したがってバランスは 各メンバーが合せてることになる。ドラム等は おそらく普段よりかなり音量的には押さえて叩いている 様だが,それでも多彩でなおかつグルーブするドラミングを する岩瀬氏はすばらしい。
2ndはアルバムからの2曲も含めた5曲。キースのWindupなども 飛び出す。やはりリハがなされていないということで, ちょっとリズムがばらけそうになったり,ロストする 様な事もあったが,おかげで緊張感のある演奏であった(笑)。 とはいえ,そういう演奏であるからかえって, 各メンバーのそれぞれ中に持っているメロディーや コードが現われるようである。音川氏は自分のメロディーを もっており,曲の構成の多少の違いにかかわらず, 朗々とメロディを吹く。安ケ川氏はピッチが良く,音量の しっかりしたベースで安定したラインを弾く。 岩瀬氏は前述のように多彩で表現力豊かなドラミングをする。 新澤氏は,ちょっと湿気のせいか音量が出てなかったのが残念だが, 入院の成果か?(笑)コードの捉え方が多少変ったようであり。すご く透明感があるコードを弾くようになった。厚み深みはあるのだが, 濁ることはしない。そう,ヨーロッパ系のジャズで聴かれるような リリカルなコードをするようになった。
QLは新大久保Somedayや六ぴ等という別のハコでも 聴いたことがあるので,今回はこのセット(電気無し)で 聴いた事自体もかなり新鮮に感じた。そのせいも あったのかも知れないが,いつもに増して,音量的には 押さえ気味,しかし内省的でな演奏であった。 しかし単なる淡々とした演奏,単なるバラードとか いう演奏ではなく,深みのある演奏であった。 特に今回の場合はやはりコードの良さから,それを 感じることができた。QLを「ヨーロッパ的 サウンド」と評したことが何度もあったが,その 持ち味は更に増した気がする。遠いところを 雨の中出かけて本当に良かったと思う演奏であった。



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