99年のライブを振りかえって

99年も終りという事で,今年観たライブを総括してみる。

今年は結構ライブを観たと思う。本数もあるが,今年は長年 観たくて待ちかねていた人のライブがかなりあり,そういう意味でも 印象の深い年であった。例を挙げると, ポール・ブレイカーラ・ブレイジョン・ゾーンなどはそうである。 また,もう一度観たいという思いのまま帰らぬ人となった日野元彦のライブも今となっては 印象深かった。Quiet Leavesや, Glidephonicのレコーディングも かなり刺激的であった。

しかし,今年を総括するライブは実は決めてある。というか二つの テーマだ。一つは「私にとっての今年の3大ギタリストライブ」, もう一つは「お帰りキース」である:-)。

ここでいう3大ギタリストライブには,大好きな パット・メセニーは入っていない。 むしろ,自分が考えていた以上のライブだったという意味で, 別の人を挙げる。そのライブを聴いて自分のギターに対しての 考え方がある意味変わったライブである。それは ジェフ・ベックマイク・スターンTribal Techである。

ジェフベックは私に大きな影響を与えたギタリストである。変な音を 出すことにこだわりだしたのはこの人の影響が大だ(^^;)。ところが 実はマイクスターンは,今年になるまであまり気にしてないギタリスト だったし,Tribal Techのスコット・ヘンダーソンも,好きなタイプだが, 自分の演奏スタイルとは関係ない(程遠い)と思っていた。 ところが実際にライブを見るとそうではなかった。マイクスターンは ジャズギタリストにしては実につやっぽい音を出す。フレーズとか いう以前に音色に説得力があるのだ。またチョーキングとかに かなりこだわりが聴える。スコヘンはバリバリの変態フレーズ ギタリストかと思いきや,こちらもボリュームペダルやアームなどを つかい空間的なフレーズを弾いたり,チョーキングとかにも かなり気を使っている。ベックとかに共通する部分がかなりある。 そういう意味ではスターンとスコヘンを再発見したという意味で, 今年のライブは非常に重要であった。ベックに至っては,影響を 受けたが観るのもはじめて。なんどもCDを聴いていたが,それでも, 「なんじゃー…,どうやったらこう弾ける??…」というほど…,すごかった:-)。

実は,上記3大ライブは自分のギター感を再考させるきっかけとなった。 私がギターというか音楽を習得していく時に,いくつかの段階があった。 最初ギターをおぼえた頃は「早弾き」というのが一つの魅力に感じた。 いわゆる「わかりやすい技術」である。しかしそのうちアドリブに惹かれ, ジャズに傾倒すると「フレイズ」にこだわりはじめたのである。 この辺はジャズをやる人ならそうであろう。単純な速さよりも, オリジナリティあるフレージングに弾かれるのである。そして, 私はビルフリゼル(というよりECM系の音楽)との出会いにより, 「音色・空間」というのに惹かれ現在にいたっている。昔, ジャズギタリストはロックギタリストほど音色にこだわらないなぁー, と思っていたが,スターン,スコヘンはどうやら違っていたようだ。 彼らの「音色」は「空間」というより「艶」に近い。そして御大 ベックはジャズとかロックとかを超越した「音色コントローラ」である。

これらのライブが今後の自分のスタイルに どう影響するかはわからない。しかしもう一度,自分のギターの 演奏を見つめ直してみようという気になった。きっと何かが変わる 予感がした。

一方キース・ジャレットの コンサート。これは病み上がりであり。「良く来てくれた」という 部類のものである。もちろんキースであるから,クオリティは 問題ない。ただ,これまでのキースのような神々しさというよりは わりと「人間キース」という感じがした。ある意味リハビリでも あるのだろう。しかしキースが再び我々の前に現われ,スタンダーズ ではなく,インプロビゼーションを弾いてくれたことに, 感動をおぼえたコンサートであった。

このように,今年はいろいろ印象深いライブが多かった。 また来年,素敵な演奏に出会えるよう祈りつつ,今年を終えることにする。


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99 Dec 30th


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