まずおことわり,メンバーの綴りは正確ではありません。スウェーデンの 方々なので,アルファベットでは正確には書けません。詳しくは リンクを探って頂ければと思います。
さて,今年のシナジーライブで かなりの気に入り,「グッドモーニング・スージー・ソーホー」と いうヒットアルバムと,当時最新だった「ストレンジ・プレイズ・ フォー・スノウ」をしばらく聴いてましたが,いいタイミングで 新譜が出たので買ってみました。
買って初めてCDを聴いたとき思わず聴きいってしまいました。 衝撃的とかくと誤解されるので書きませんが,わたしの 耳には一聴目から物凄く入ってきたCDです。
さてちょっとだけe.s.t.について解説。日本ではほとんど知られてませんが, e.s.t.は Esbjorn Svensson Trio(エスビヨルン・スベンソンとか書かれてます)の 略で,おそらく発音とか表記の関係でe.s.t.とみずから名乗っているのでしょう。 スウェーデンのジャズトリオで向うでは総合ヒットチャートにも 登場するような人気者らしいです。前回までのアルバムでも そうでしたが,ヨーロッパ人らしいクラシック的卓越した 楽器コントロール技術,コードメロディの美しさリリシズムを もったジャズセンスと,北欧ジャズで最近起きているテクノの 影響を積極的に採り入れたピアノトリオというスタイルというのが 彼らを表現するには適切かと思います。キース・ジャレットが 彼らを賛辞し,(まぁ彼ら以外もヨーロッパには多いのですが) ピアノスタイルもキースに似ている部分があるため,何かと 「キース・ジャレットに絶賛された」という枕詞で語られる( 少なくとも日本では)彼らですが,キースファンのわたしにいわせると, ピアノスタイルというよりは,若いころのキースの音楽探求スタイルの 方をむしろ継承しているといえます。
若いころのキースジャレットは(スタンダーズとソロしか知らない人は 想像できないでしょうが)フォークロックを積極的に採り入れた ポップかつ前衛的な演奏をしてます。e.s.t.もそういう意味では 卓越した演奏技術をもちながら,その技術にすがることなく,新しい テクノやブリティッシュ系のセンスを積極的に採り入れ新しいジャズ ピアノトリオを提唱しているのです。
さてこのアルバム,上記にあるようなスタイルを更に進めた ものとなってます。つまりテクノとかの色をより強めに出している といえます。しかし根底はアクゥースティックのジャズで, シンセやキーボードではなくあくまでもピアノで表現してます。 しかも北欧らしいメロディのポップさ美しさは絶妙です。 曲毎に結構サウンドが変わっていて,ピアノの音が美しい曲もあれば, 結構いじっているものもあります。ちょっとピアノの音に関しては 曲によっては細くなり過ぎと思うものもありますが,試みとしては おもしろいです。
しかもこのバンド,ベースとドラムが非常に演奏の幅が広い。 ベースはアクゥースィックですが,ディストーションをかけて まるでロックギターの様なときもありますし,そのくせアルコとかが 抜群にうまいです。ドラムもジャズっぽいものから,テクノとかに 通じる非常にドライで硬いビートも出せます。
そういう二人のバックに支えられて,美しいメロディとコードで スベンソンがピアノを重ねるというのがこのバンドの持ち味でしょう。 わたし的には前作までに比べ,その辺の今風のテイストが絶妙に 表現できている本作は(いままで二枚しか聴いてませんが^^;) 彼らの中では大傑作になるのではないか?と思います。
今年買ったアルバムの中ではわたし的には非常に,ポイントの 高いアルバムです。あまり日本では話題にならないバンドですが, 是非一度聴いて頂きたいと思います。