Nude Antsの約一ヶ月後( 1979年4月16,17日)に行われた, 日本でのライブを収録したものである。実はこのアルバム, 発売されたのは'89年である。話によると,10年後に, 日本でのライブ録音が使えると判断し出すことになった そうである。
そういうことで,Nude Antsとメンバーも同じ,重複する曲も 多い。これはキースでは珍しいことで,彼は一度アルバムに 収録した曲をライブ,スタジオであっても再び収録することは 少ない。それはアメリカンクァルテットやスタンダーズも たくさんのライブアルバムを出しているが,意外に重複する 曲は少ないのだ。そういう意味で,このアルバムはキースが 日によって,どういう風に演奏が変わるか?というのを示す 珍しい機会でもある。
実際に聴いてみると演奏もそうだが,いろんな点で,Nude Antsとは 異なるのがわかる。まず何よりも違うのが,ホールと クラブの違い,そしてレコーディングエンジニアの違いである。 私はNude Antsの批評で,スタジオのキースと感じが異なる と書いたが,逆にこのアルバムはまさにECMのキースらしい 音なのである。このホールという環境のせいか,Nude Antsより 客から遠い,逆に言えば冷静な演奏をしている。そして Jan Erik Kongshaugというエンジニアのおかげで,まさに ECMのサウンドになっているのだ。
キース自身も,アメリカと日本は客の性質が違うため, 自ずと違う演奏になる,と言っている。熱く野生的な Nude Antsと両方聴くことにより,冷たく幻想的な このアルバムの雰囲気が強調され楽しむことが出来る。
曲について少し書くと,一曲目Personal mountainsは いきなり激しいキースのリフ,熱いヤンのサックスで 始まるが中盤でクールダウンし,幻想的な珍美な演奏になる。 そのまま二曲目のPRISMで美しいテーマをベースが奏でる。 このPRISMはスタンダーズでも演奏されているので, 機会があれば聴いて頂きたい。三曲目のOASISは 幻想的な雰囲気をもった,まさにヤンのための曲, その後Nude Antsでもすばらしいメロディを奏でた Innocence。最後にアンコールぽくキースのゴスペル 的リフから始まるダンサブルナ曲Late Night Willieを演奏する。
録音から10年目で発売された貴重なヤンとキースの コラボレーションである。もしかしたら,単なる 商売っけだけで発売を決めたのかもしれないが, これだけのクオリティであれば,他の録音も 出して欲しいものである。
Nude Antsと比べることにより,このグループの ライブでの変化がかいまみえる。是非セットで 聴いて欲しい。