luminessanceと同様, ヤン・ガルバレクとストリングスという組合わせのアルバムである。 しかし,今回はキース・ジャレット自身がピアノを弾き, チャーリー・ヘイデンがベースで加わるという形である。 そのためluminessanseではヤンをフィチャーした,という 感があったが,このアルバムでは,むしろキースのトリオ (ちょっと変形だが)にストリングスが加わったという印象が強い。 したがって,キースがピアノを弾き他の楽器が全く加わらない部分が あったり,ほとんど味付け程度にしかストリングスが使われない部分が あったりする。
とはいえ,ストリングスを使うということは,おそらく ほとんどが書き譜であろう。実は聴いた感じもそうである。 展開とかも実に用意されたという感じがある。フレームを 感じるのである。いつもの「何か起きそうなハラハラ感」と いうのはここにはない。しかし逆にきちんと計算された 曲構成を感じるのである。構造美を感じる演奏である。
しかしどうもおもしろいのは,1曲目のキースのピアノは ケルンコンサートに出てくるフレーズを髣髴させるのである。 ケルンをストリングス付きでやってるような印象を受ける部分も ある。これはこのフレーズが当時のキースの良く思いつくフレーズ だったのか?,もしくはケルンの時,既にこの作曲をしていて, とっさにこのフレーズが浮かんだのか?,そんなことかも知れない。 このアルバムとケルンコンサートは割と時期も近い。
曲は比較的暗めでドラマチックな曲が多い。キースの 好みであろう。ヤンは美味しいところを持っていってる とはいえ,露出は高くない。まぁ,待ちに待った登場… という感じでもあるが…。しかしトツトツとメロディーを 吹く彼のサックスはすばらしい。いつもより若干ソフトに 吹いているようであるが,かなり丁寧である。
一曲が長い曲が多いが,細かく展開が変わり, 楽器の入れ替わりも激しいので,あまり退屈しない。 私は実はストリングス入りのジャズというのは, かなり苦手なのであるが,なぜかこのアルバムは さほど気にならない。
このバンド(?),当時ツアーをしたそうである。 聴いてみたかった。
計算された美しさ,綿密に構成されたキースの意外な 一面