いつの時代も受け手は送り手に対し勝手な幻想を抱く。芸術や スポーツのスターの場合特にそうだ。幼少の頃,これらのスター達は 全く手が届かず,彼らの生きてる世界を垣間見ることは メディアを通してしか不可能だった。いい加減この歳になって, 若干その世界を垣間見ることがあったり,またインターネットとかで その送り手が他人のメディアを通さず直接手記を書いたり,メイルを やり取りするようになって,若干彼らの生きてる世界が見えてきたりは するようになった。 しかしそれでもほとんどの場合は見えないし,その分野で名をなした様な 偉大な人に接することはほとんどない。
そういう中で一方的に受け手は幻想を持つのである。例えば某有名 ミュージシャンは気難しいとか,変人とか。逆にそういう幻想を持って, 「彼らは特別な人だから…」と思いたいのであろう。
といわけで,今回はそういう勝手な思い込みを元に書いてみる。 したがって送り手の人権を無視してるような気もします。すみません。 先に謝っておきます。
何を書きたいか?,というと,最近の若いミュージシャンとかの インタビューとかを読んでいると,結構まともで,良い人であるのが 気になるのだ。確かに一部の売れてる人には,結構とんがっているというか, お高くとまっている人もいるのだが,TVで見る若い人達は,皆愛想がいい。 インタービューとかでも,普通に答えている。
勝手な幻想で申し訳ないが,私が思春期だった頃というのは,ニューミュージック ブームで,売れてる人達がTVに出なかったり,ラジオで自分のファン向けに 偉そうなことを喋っていたので,その印象もあり,かなり気難しいという イメージがあった。しかし最近のお気に入りである,椎名林檎の インタビューとか読んでも,いい娘だと思ってしまう(^^;)。 ついつい物語を期待してしまったりするのだが,そういうもの 無く,「何不自由無く育ちました」という感じの人が多い。
良く考えてみたら,私が求めてるのは,「わがままな天才」 の様である。 それで浮かぶのが,長嶋茂雄や岡本太郎だったりしていたわけである。 井上陽水とかもそうだ。陽水は「決まった時間に決まった場所に いくというのが嫌いなので,ライブは嫌い」だそうである。 いいわがままぶりだ(笑)。 そういう強烈な個性を持った,ある意味周りのことを全く 考慮せずに行動する人達を求めていたわけである。
しかし良く考えてみると,ある分野である程度成功した 大人たちにはTV出る人に限らずわがままというか,マイペース な人は多い。TV出ない人でそういう人というと,実は 大学の先生が思いついたりする。会社の偉い人は,わがまま な人多いけど,ある意味,その組織の中だけで威張ってるので, ちゃんと周りを見て計算をしている。でも大学の先生とか 結構マイペースな人いると思う。
このへん難しいのだが,歳をとってこうなったのか?, もともとの素養がそうだったのかが良くわからないのである。 もし歳をとってこうなったのであれば,現在物わかりのいい 若いアーティストも,将来こういう人になる可能性はある。 長嶋とか若い頃からあんなだったと思うんだけど…。 みてないから何とも言えないが。
それから少し話がずれるが,最近は若い人自体がかなり 良い人なのが多い気がする。 以前少し書いたが結構若い人は愛想が良く,むしろ イライラしているのいい大人だったりする。 だから変人はいいとしても,怒ってる人や悲壮感の ある人自体が受け入れられなくなってる気はする。
結局TVや雑誌というメディアが成熟してしまったという 事なのかもしれない。システムも複雑だし,「計算できる」 人でないと生きていけない。つまり成功するまでに, ある程度いろんな人に嫌われないようにしなければ いけないわけで,それが出来ない人は表に現われないと いうことになっているのではないか?
ただ現在TVで生きてる大人の天才たちも,かって メディアに反逆していた人でさえ,丸くなってる人が 多い。そういう人は「どこか変」と思わせつつ, きちんとTVでは立ち振舞っている。ある意味, 椎名林檎を始めとする若い天才?たちは,最初から そうなっているようにも感じる。「どこか変」とは 感じさせつつきちんと計算をしている感じ。 つまりTVも成熟していれば,天才も成熟しているのだ。
未成熟の天才たちはどこに現れるのだろうか?。 マルチメディアやインターネットだろうか?。確かに そういう雰囲気はあるが,まだ何ともいえない状況である。 少なくとも音楽に関しては,十分にインターネットでは アーティスト生むハードウェアが存在していない。
以上は私の勝手な幻想だし,別にそういう変な人でない 表現者をつまらないといっているのではない。 そして実際変わってる人が全くいないといってるわけでも 無い。その辺は誤解しないで欲しい。 実際に私自身が変わって感じなくなった部分も多いわけだし。 ただちょっとそいういう強烈な物語を感じさせる,そういうアーティ ストを私は待っているようなのである。