最近読んだ本から…メモなどを。
書籍編
- 死ぬときに後悔すること25(大津秀一著)(10/10/28)
- 終末医療をやっている著者が接してきた数多い患者を診て, 死ぬときに後悔することが多い25のことを書いた本。
TVとか映画で人が死期を悟って死んでいくという話は数々あって わたしも観た事がある。わたしは4年前にがんにかかったとき,あと数ヶ月で 死ぬかもしれないと本気で思ったのだけど(だけど実際は生きてます), 自分が経験すると,TVや映画から想像していたのとは,まったく違うことを 考えたものでした。
死んでいく人についてレポートされた本としてはキューブラー・ロスの研究が有名で わたしも本を読んだ事があって,実際の経験と照らし合わせると 唯一それが「その通りだった」と納得した本だった。あの本は死へ向かう人の 心情をシステマチックに書かれている。この本はそういう学術的な面は 薄く,経験を元に分析するわけじゃなく書いたものだが,わたしは非常に 納得感は高いと思った。ここに書かれている項目は,実際にわたしが病気に なって強く思ったこともあるし,それ以前に気をつけていたこともある。
25の項目を全部書くのも抵抗があるのでいくつかだけ挙げると,「やりたい ことをやれなかったこと」とか「悪事に手を染めたこと」の様な行動面も あるし「子供を育てなかったこと」などの様に,生き方自体の考え方が 死ぬ寸前で後悔となってくる場合もある。また「生と死の問題を 越えられなかった」という宗教的な面もあったりします。項目だけより 実際に著者が接した患者の口調などから,どういう風に後悔するのか, 後悔というより,そこに来て迷いが生じる…というものもあるのだと 思う。
そう,そういう意味ではここでいう後悔というのは悔やんで,人生を やり直したいと思うことというより,満足して死ぬことへの引っかかりと なることなのかもしれない。
わたしは中学のときに後悔しないように生きるという目標を立て, その為にはどうしたらいいかをずっと考えてきた。「楽しかった」と 思って死ぬことを,結構早いうちに生きる目標とした。今は「楽しかった」より 「幸せだった」と思いたいと思っているけど。それで,その時から思って いるのが,その時その時を一生懸命生きベストな選択をすれば, それが間違っていても後悔はしないだろうということ。 後悔しない様に生きるには,本当は自分が何を望んでいるかを 真摯に受け止め,なるべくそれに対して素直に生きるべきだと思う。
それでもわたしも実際に病気になり,人生の選択を変えたものがいくつも ある。人間実際に窮地に立たないと,自分が何を望んでいるかは わからないという面もあるのだと思う。
この本に書かれている後悔は,おそらく多くの人が真に望んでいるのに, 気づかずに過ごしてしまうことの様に思う。書かれている25のことは どれも納得できるものである。今,そう思って無くても,案外そうおもう だろうなぁという気がする。
そういう意味で,この本は誰もが一度読んでおいたほうがいいと思う。
- ガラパゴスでいいじゃない(岡康道・小田嶋隆著)(10/10/8)
- 著者が二人となってますが,実際は対談で,清野由美という聞き手が おります。あとこれは日経ビジネスオンラインのコンテンツだったようです。 番外で内田樹先生,高木豊氏との対談も入ってます。
著者のうち小田嶋氏はフリーのライター,岡氏は元々電通の社員で, 今は独立してCMプランナーをやってる方。二人とも1956年生まれで, 小石川高校から早稲田という同窓生で,旧知の仲だったりします。
というわけで,まぁ内容は軽い。親父の与太話みたいな話。サブカル本の コーナーにあってもおかしく無いような,若い頃の悪さの思い出話の ようなものがほとんど。あと野球とかアメフトとか(笑)。
とはいえ,ライターと独立したプランナーという立場の人で,年齢からも それなりに地位がある人なので,若いアーティストや,若いライターの 対談集とちょっと毛色も違っていて,社会の仕組みとか,仕事の仕組みとか, 天才とか,流行とか,その辺の話が,与太話にうまく絡められていて, 妙に説得力があります。「モチベーション」が問題だというのも, 結局社会で生きていくのとか天才の話とか,そういうのもモチベーションを どう維持できるかと関係あるとか,昔の若者は根拠なき自信があって, 今の若者はそれが無い…という話とか,人は勝つか負けるかじゃなくて, 負けしろがどれだけあるか?が重要とかそんな話は,あぁーそうだね,と うまくいうなと感心しました。
まぁでも全体的にふざけたことがたくさん書いてあって,しかも 社会的地位はあるわ,早稲田でてるからそれなりに頭いいわで, 頭よくて地位がある親父の不良話って,困ったもんだなぁ,と 思いました。
ところで,「ガラパゴスでいいじゃない」という題の内容が 書かれてるかというと,書かれているようで,書かれてない様で, ちょっと狐につままれた感じはします。
- 食べ物はこうして血となり肉となる(中西貴之著)(10/7/5)
- 著者は「からだビックリ!薬はこうして やっと効く ― 苦労多きからだの中の薬物動態」の人で, シリーズとしても同じ。前回が薬物動態で薬を効かせるための苦労の話 だったのですが,今回は食物の中の栄養素がどの様に吸収されるかみたいな 話でした。
ただ,全体的には海産物,野菜,肉,等それぞれの食物材料分類にあわせて, 含まれる栄養素を解説してるという作りなので,リストアップ的であり, 全体を俯瞰した話はあまりありませんでした。なので,ちょっと散漫な 印象かなという気はしました。
ただし体の中に必要といわれる栄養素やビタミンとかが,食物に含まれて いても,実際消化器で吸収されて体内にそのまま入るかは良くわからない みたいな話も書いていて,興味深かったです。そういう扇り文句で売っている 健康食品も多いので…。
- 脳ブ−ムの迷信(藤田一郎著)(10/7/5)
- 脳メカニズムをちゃんと科学的に研究している研究者である著者が, 巷に溢れる脳ブームに苦言を吐く本。脳トレとか特定の製品についてとか, TVに出てるような脳科学者の話も出てきて結構生々しい。
内容は基本的に正しいことが書かれてます。ただ一方で,そんなに目くじらを 立てることなんだろうか?という想いも少し持ちました。
というか本が100ページ弱の薄い本で,しかも文字が多く,これは一体誰に 読んでで欲しい本なんだろう?と思って読んでいたら「家族で読める family book series」というシリーズらしいので,中学生とか高校生とか辺りを 対象にしてるのかも知れません。確かにこの辺の子供に変な知識を 刷り込まれないように,リテラシを教えるのはいいと思うけど, だったらもう少しワクワクした内容にした方がいいんじゃないかしら?。
それとも内容が内容だけに,大手の新書とかじゃなくてこういう形で 出したんだろうか?とか内容とは関係ないところが気になって しまいました。
内容的には,良く言われる脳が10%しか使われていないというのは嘘…って いうのは,言われてみたらその通りで,こういう根拠のいいかげんな 言説って結構自分も使っちゃうよなぁ…とは思いました。
ただわたしの意見は,良くわかってないことを,良くわかってないと 曖昧に答えるのも,夢がない様に思います。擬似科学に騙された損を しないようにするのは大事ですが,科学っておもしろいっていうのを 子供達にどう伝えていくか?…というのも難しいなと思います。
目次へ
(C) 2010 TARO. All right reserved