読書メモ(2006年11月〜12月)
最近読んだ本から…メモなどを。
書籍編
- 免疫革命(安保徹著)(06/12/24)
- わたしがとある病気になって…,知人が奨めてくれた本。
著者は医者,免疫学の大学教授らしい。人間(動物)の免疫の
仕組みを長年研究しいろいろと発見もしてきてるとのこと。
この本はその免疫の仕組みから,現代人の病気の原因の解明と,
その予防や対策を書いてます。厳密には治療法ではないところが
ミソだったりもします。
病気というのは大きいのは癌ですが,他にアレルギーや生活習慣病
等も含まれます。著者の趣旨は人間の免疫系には顆粒球とリンパ球の
バランスが大事で,それが大きく崩れると病気になると。
交感神経が主体の時は顆粒球が多くなり,副交感神経が
主体の時はリンパ球が多くなる。リンパ球が多くなりすぎると
アレルギー等になるが,少なすぎると癌とかになりやすいと。
子供の場合元々リンパ球が多いのだけど,環境が良いところに
住みすぎると更に増える,そしてアレルギーになると。
大人になるとリンパ球が下がるのだけど,ストレスがたまると
更に減り癌になる(癌細胞を殺せなくなる)と。その他にも
様々な病気の原因が,これで結構説明できると…。
大人の場合はリンパ球が少ないことが問題を起す場合が多いのだけど,
その大きなものが癌。著者はリンパ球を減らさないために,(1)
ストレスの多い生活のパタンを見直す,(2)恐怖心を持たない,
(3)免疫を抑制するような治療を受けない。受けているような場合はやめる,
(4)積極的に副交感神経を刺激する,の四つを原則として挙げてます。
そして現代の多くの医療が対処療法で,結果的に免疫を抑制し
病気を根本から治るのを妨害してると。副交感神経を
刺激するような幾つかの例も載せてます。
まぁそんな感じで,さらりと読むと,癌の人も抗癌剤治療や
手術や放射線治療を止めて,副交感神経を刺激する生き方を
した方が良い…と読めるのですが,そこはお医者さん,完全に
そう言いきってるわけではありません。延命治療にたいして,そういう
治療を勧めてないだけであり,初期癌とかにたいしての
手術を批判してるわけでもないところが,良く読まないと誤解する
ところでしょう:-p。
…まぁこういう本を読むのはちょっと難しいな…と思いました。
病気と関係してないと,単にストレスを貯めないで,副交感神経を
刺激して生きよう…って話なるのだけど,病気になってると,
じゃぁかかりつけの医者の治療を止めて,そういう生き方を
すれば,本当に生きられるのか?病気がひどくならないのか?というと
悩ましい。まぁ確かにストレスを貯めずに楽しい生き方を出来るかも
しれないけど,結果的に死んでも「手遅れだった」とも言えるわけで,
こういう本は,そういう難しさがあります。もっとも基本的に
楽しく生きることを勧めているわけで,苦しい想いをさせて,
死んだら批判されるけど,楽しく信じて死んだら…,まぁ多少は
マシだった…と思うのかも知れません。
…などと思って読みました。この本だけじゃなくて,他の本でも
思うこともあるけど,現代医療批判をしてる本で,「本に書いてることを
実践したら病気が治りました」的なことばかりが書かれている本は,
ちょっと警戒感を感じてしまいます。いいことばかりじゃない
はずなのにと…。主流じゃ無いゆえに,自画自賛をせざるをえないのかも
しれませんけど。
ただ,まぁわたしは先日手術はすでにしてるけど,化学療法とかは
やってないわけで,あとはストレスを貯めないように生活を
すべき…っていう意味では,掛り付けの医者と争わず実践できる
範囲のことがこの本に書かれてるから,まぁ会社に「無理をさせないで
ください」と主張できる裏付けを得た意味では良かったと思います(笑)。
その分ストレスがたまると「病気になるかも」と妙に怯える
様になりましたが(苦笑)。
- 百姓から見た戦国大名(黒田基樹著)(06/12/02)
- 山口先生のところで紹介されいてるのを
読んで,読んでみた本。まぁリンクを読んだ方がいい紹介だと
思うし,それ以上のことを書けるかわかりませんが,やっぱり
おもしろい本でした。従来の戦国大名というのが,侵略欲や
天下取りのために戦をやっていたと思いきや,領内が飢饉で
喰えなかったから,百姓たちを喰わせるためとか,もともと
百姓は村同士で武力による争いをやっていたとか…そんな話。
百姓が決して領主に無理やりつれていかれて嫌々戦争をやっていた
わけではなく,百姓同士も,結構血生臭かった…ってことです。
ここでは,むしろ百姓が領内から逃げないように税を軽くしたり,
争いの仲介をしたりとか苦労する領主のすがたが見えてきます。
以前読んだ「痛快!憲法学」
でも,西洋の王も元々領主同士の争いの仲介役としてなったわけで,
そんなに権力を持っていたわけではない…って話がありましたが,
むしろそれに近い。いや,相手が領主じゃなくて村だったりする辺り,
もっと日本の大名の方が,農に近かったのかも知れません,
興味深かったのは,中世から戦国時代の日本というのは,確かに
飢えていたのだけど,それは農地が足りなくて,農地を奪い合っていた,
というよりは,農地はあるけど耕す人が足りなく,荒れ地とかに
なっていた…ということみたい。だから,大名は農民が逃げないように,
いろいろと頭を悩ませていたと。まぁ農地が余るのは,人自身が
病気や飢えで死んでいたというのもあるし,飢饉になると村を捨てて,
野党とかになってしまう人も多かったのかも知れませんが…。
わたしも以前から権力者を軸に語られる歴史にはちょっと不満を
感じていて,大名や貴族が争いをやっていても,農民は変わらず
農地を耕していたわけで,お上が勝手にやっていて,税をとる
人間が変わってるだけだろうな…という考えだったのですが,
そうではなくて,むしろ権力者は農民に左右されていた…と
いうことだったのかも知れません。
いずれにせよ,ここで語られてる中世から戦国時代までの
日本は,権力者ではなく農民自身も相当血生臭くて,他の村の
山に入って資源をとったり,それが元で殺しあいになったりと,
それは弱肉強食というか,まぁギリギリの世界であり,農民が
真面目に農業だけをして平和に暮していたわけではないことが
わかります。むしろそうなったのは,刀狩り以降の日本であり,
ある意味日本の争い嫌いは,それ以降であり,それ以前は,
今の海外とかと同じく,殺伐としていたのだなぁ…という
気がしてきました。
というわけで,おもしろかったです。もう少しいろんな人が
いろんな文献を元に,この視点で掘り下げてくれると嬉しいのですが。
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