
| TARO的,ジャズ新世代特集('03版) |
| 編者コメント |
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わたくし事で恐縮ですが,わたしがジャズを聴き始めた20年程前は, マイルスが存命で,メセニー,ジョンスコ等が売れはじめ,ウェザーや ジャコや,ブレッカーやサンボーン等が活躍してました。 そして現在のジャズシーンをみると,なんと(亡くなった方を除くと) いまだに彼らが第一線,ジャズ雑誌をみても彼らの特集ばかりです。 これは,いつまでも我々にわかりやすい音楽シーンであると同時に, 「もしかして時代に取り残されているのでは?」などと不安になることも あります。ある意味音楽の世代交代は,新しい音楽の出現,または 若いファンの参加に必須なものです。現在,ジャズシーンでトップスターとも 言えるメセニーとかも既に50代へ入ろうかとしています。 そこで,今回はメセニー等の世代の後を担うであろうジャズミュージシャンから, わたしがここ数年で気になっている人たちを取り上げます。 新世代と言っても,だいたい10年以上活躍している30代くらいの 人であり,話題性ではなくある意味十分実績もある人たちです。というか, わたしとしては,もうちょっと取り上げられてもいいんじゃないか?と 思う人たちです(日本での話です)。 またここで選んだ理由はテクニックとか正統派とかいうのではなく, むしろ新しい世代らしく,彼らのジャズをやっていると思った人たちです。 なんとなくわたしは共通的な臭いを感じました。その臭いを一言で言うと, 「ポップ,アナログ,クラブ」という感じです。 それと,新世代の中にはすでに大スターであり,巨匠とたくさん 共演して,自己のアルバムでもそういう人たちを起用し,話題性の あるアルバムを出している人もいます。しかしそういう人の作品は すでに旧来のファンの耳にも届いているでしょうから,今回は その手の作品は極力避け,若いメンバーでつくっている作品を ピックアップしようかと思ってます。 上記の条件から,現在の若手でもっともスターの素質があると思われる, リチャード・ボナは省きました。まぁ彼の場合多くの人が 取り上げてくださるので,いいでしょう。 また,今回は性質上「東海岸」に縛られた話ではありません。
by TARO:Oct. 6th, 2003 |
| 紹介と簡単なアルバム紹介 |
| ジョシュア・レッドマン |
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テナーサックス奏者。1969年生まれ。 父親は同じくサックス奏者のデューイ・レッドマン。そのせいか93年のデビュー時から 結構な注目を集めます。若いころからメセニーをゲストに向かえたりして デビューしてからずっと注目されてきた人だとは 思います。とはいえ,どうも最初の頃は人気先行というイメージが 強く今一つピンと来ませんでした。 個人的に気になり出したのは「yaya3」と「エラスティック」を 聴いてから。このバンド,キーボードのサム・ヤエルのやってることが 非常におもしろいんですが,その上で非常にポップに吹きまくる ジョシュアのサックスもカッコイイです。ある意味コルトレーンの 呪縛から完全に解かれた,自由な歌を吹きます。 このバンドについて書くと,ベースレスのトリオ,キーボードが ベースラインを弾きながら演奏をするので,コードが厚くなり過ぎない ところがいいです。また音楽的にもポップでありながら,インプロビゼーションを 展開していて,若々しくエネルギッシュな演奏を聴かせます。 ジョシュアという人は若いころから注目を集めてましたが, ある意味,ずっと日の当るところにいたゆえの「良さ」があり, ポップさをもったまま,かつ新しい挑戦をやっているところに これからの期待を感じます。 |
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アルバム紹介
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| カート・ローゼンウィンケル |
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ギタリスト,1970年生まれ。わたしが彼に注目したのはマークターナーの
バンドで来日(2001年)した演奏を生で見たときです。
それまであまりアルバムとかを聴いてもピンと来てなかったんですが,
生で演奏を見て驚いたのを覚えてます。ピアノレスのバンドでギターを
使って非常に多彩なサウンドをつくっていく,コードボイッシングも
独特で不協和音とかエフェクタで音を厚くしたり薄くしたり多彩でした。
気になり出すと不思議なものでつい耳が行きます。 音色も結構特徴のある,「コロコロした」 サウンドでフレーズを弾いたりします。空間的なプレイも多く, ECM系のギタリストとの共通性も感じるんですが,単なるフォロワーではなく, 今風のクラブ風のサウンドも熟知している感じです。 最近ギタリストに元気がないというか,現在流行ってるサウンドは あまりギターの重要性がないものが多い…と思ってましたが,彼に関しては そういう中できちんと自分のサウンドをつくっている感じがします。 |
アルバム紹介
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| ブラッド・メルドー |
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1970年生まれ。ピアニスト。
彼は長らく有名ですでに彼自身のトリオ,またはソロで評価されているので ご存じの方も多いでしょう。ただわたしは彼のトリオやソロは追求している事が どうもストイックすぎて…ちょっと…という感じがあり,また上記の「ポップ, アナログ,クラブ」という視点には合わない…と思ってたのですが, 去年だしたアルバム「ラーゴ」においては,大胆なリズムの導入で 新しい音楽シーンを消化しようという試みに耳を惹かれました。 もっとも彼自身がこのアルバムをプロデューサの意見でつくった…という 様なことを言ってるのが気になりますが(^^;),私自身はこの路線を もうちょっと探求して欲しいと思います。 ピアニストとしてはちょっと特徴のある音で,ストイックな演奏をします。 でも,ピアノソロでもradioheadの曲とかを取り上げているところから, ジャズ純潔主義者ではないと思ってますが…。サイドマンとしての 演奏では結構幅の広い演奏をしていて,自己の探求ぶりの割には 結構音楽性自体は広いのでは?…とか思ってます。 |
アルバム紹介
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| ブライアン・ブレイド |
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1970年生まれ,ドラマー。
この人はある意味この世代で一番売れているドラマーかも知れません。 共演歴は凄いです。メセニー,ショーター等の巨匠をはじめ,ジョニ ミッチェルやボブディランにも使われております。個人的には 去年の東京ジャズ2002でのショーターのライブでぶっとんで, ファンになりましたが,実は10年近く前にジョシュアと来日してたのを みてたようです…あらためてびっくり。 巨匠との共演は取り上げない…と書きましたが,この人のショータバンドでの 演奏は凄いのでそれだけは書いておきます(^^;)…。とはいえ,チャンと 若い人たちだけでやってるバンドもあったり(ジョシュアのところ), 自分のリーダアルバムでも若い人を起用していたりして,単なる優秀な サイドマンではなく,みずからの音楽性もしっかりあるドラマーだと いう感じがします。 彼が多くの人から求められるのは,非常にダイナミックレンジが広く 表現力のあるドラムが叩けるからでしょう。テクニカルなだけではなく, 音楽的なドラムを叩きます。クラブ的な表現はこの人はやりませんが, それでも現在のドラマーでは目をそむけられないくらいの存在感があります。 |
アルバム紹介
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| エスビヨン・スヴェンソン |
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1964年生まれ。ピアニスト。ちなみに
E.S.T.
(エスビヨン・スヴェンソン・トリオ)という
名のピアノトリオで活動してます。スェーデンの人なので,ほかに
挙げているアメリカの人たちとはちょっと趣きが異ります。
Jazzlandとかと一緒に取り上げた方が良かったのかもしれませんが,
Jazzlandとも違うし…。
基本的にE.S.T.で活躍している様で,ソロとかは知りません。
あまり先人と比べるのは趣味じゃありませんが,キースジャレットが
彼を高く評価していますし,スタイル的にもキースに共通するものが
かなりあります。もっともヨーロッパのジャズピアニストにはそういう
人が多いのですが…。ただ彼の場合ほかのキースフォロアーと決定的に
違うのは,単なるピアノのプレイだけではなく,キースがかって取り組んでいた,
ジャズピアノに現在の音楽(当時はフォークロック,現在だとクラブ)の
要素を巧みに取り込み,新しいピアノバンドを模索しているところです。
つまりキースのスタイルというよりは,モチベーション自体に
影響を受けているのかも知れません。
曲によってはリズムマシンとかを使ったりもします。 しかもそういう新規性を追求しながらも,ベースのピアノ自体の テクニックが抜群にすぐれているところも共通してます。 ヨーロッパでは評価が高いようですが, 日本はおろかアメリカでもあまり評価されていないようです。 是非聴いて欲しいピアニストです。
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アルバム紹介
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| メデスキ・マーチン&ウッド(MM&W) |
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ここまで挙げてきた人たちが,新しいことをやりながらも,とりあえずは
ジャズミュージシャンとして認知されているのに対しMM&Wは「ジャズじゃない」
という人も多いでしょう。もっとも認知されているジャンル分けをすると
ジャムバンドというのにあたります。もっともジャズじゃなくジャムバンドだから
ジャズ以外のファンが多く,ジャズ以上に多くの観客を動員してます。
ジャムバンドはロックから出てきたインストインプロビゼーションですが, 現在ジャズがロックからの影響も受けていることを考えると,これを ジャズじゃないという理由はどこにもありません。バップフレーズとかは 出てきませんがアクゥースティックベースやオルガン等からつくられるサウンドは むしろ70年代のジャズロックに近いものがあります。その上で, クラブミュージック的な手法も多く採り入れているところが今の 時代性でしょう。
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アルバム紹介
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| Jazzlandレーベル |
| 別の特集を組む予定です。 |
| (番外) ジョン・スコフィールド |
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若者特集なのになぜこの人が…かというと(笑),最近のジョンスコは
どうも若手の発掘に燃ているようで,彼の動きを追っていると,MM&Wと
かsoliveの様なジャムバンドとやっていたかと思うと,最近はjazzlandの
アルバムにも飛び入りしてたりします。
ある意味,彼がやってることは昔のマイルスがやっていたことに ちょっとスケールは違いますが近い気がしてます。しかも自分のレギュラーバンドに 若いミュージシャンを起用する…というより,ジャムバンドとかに 一人で乗り込んでいく,または自分のバンドを全部そういうメンバーに してしまう辺りが,現在のクラブバンドのエッセンスじゃなく, それ自体を取り込もうとしている姿に好感が持てます:-)。 そういう意味じゃ,若手じゃありませんが,若手ミュージシャンを 知るために目が離せない人です。
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アルバム紹介
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