最近実に多作であるパット・メセニーの新しいトリオ初アルバムである。 多方面で話題になっているので,あらためて書く必要もないのかも知れないが, やはり一応押えておかなければいけないので,レビューすることにする。
先日のブルーノートジャパンでのライブと 同じメンバーでのアルバムとなる。アクゥースティックベース,シンバルレガート 主体のドラムということで,トラディショナルなジャズギタートリオである。 パットは,ブルーノートの時のようにギターシンセを持ち出すことはなく, トーンを絞ったナチュラルなエレキギターとアクゥースティックギターを 使い分けて曲により変化をつけている。曲はほとんどがパットのオリジナル。 オリジナル以外は3曲となる。
一聴すると,地味な感じがするアルバムであるが,実は結構曲により 狙いどころというかアイディアが異なっていて,バリエーションが 豊かなアルバムであることに気づく。Q&Aとかでも見せた 妙に浮遊感があるリズムの世界をつくっている1曲目。 難曲Giant Stepsを軽いボサノバぽく弾くという意外性をもつ2曲目。 アクゥースティックで沈んだ美しいカントリーバラードの3曲目。 パットらしいテーマのブルースの4曲目。エレキのアルペジオを使い 初期のメセニーぽさを感じさせる5曲目。 ショーターの曲をトラディショナルなジャズギターで弾く6曲目。 アクゥースティックギターソロが主体の7曲目。ジャズぽい8曲目。 同じくジャズっぽいが和音でのテーマが巧みな9曲目。かってのPMGの 曲を同じイメージでトリオで演奏する10曲目。カントリーバラードの名曲10曲目。 さりげないところにそれぞれ特徴があり決して冗長な曲は入っていない。 ある意味,エフェクターをほとんど使わないジャズギターとアクゥースティックの リズムというトラディショナルな編成のギタートリオで出来る 新しい可能性を思いっ切り示した,そんな一枚のアルバムという気がする。
そういう意味では,かってキースジャレットがStandards Vol.1を 出した時のような衝撃がこのアルバムにはあるのではないか?。
ディストーションやギターシンセを使わなくても,ファンクや ロックのリズムを使わなくても,まだまだギタートリオの 可能性は幾らでも広がる可能性がある。そういうところを 示してくれるアルバムと言える気がする。