私にとって「宝島」というとこのアルバムである(笑)。
キースジャレットの活動というと,チャールス・ロイド,マイルスバンドの 後は,アメリカンクァルテット,ヨーロピアンクァルテットを経て,ソロ, スタンダーズという印象があり,特にマイルスバンドを除くと, 電気楽器など(特にギター)全く使用せず,また,少人数のバンドしか しなかったという印象があるが,実はアメリカンクァルテットの途中 (というかこのアルバムあたり)までいろいろ画策をしたようで, これより前のアルバムにはいろんなスタイルのものが多い。このアルバムは小説「宝島」を題材にしたコンセプトアルバムである。 そういうスタイルの作品は今のキースからは考えにくいが,おかげで かなりユニークな作品になっている。
小説「宝島」は私は子供向け小説とか映画・アニメでしか知らないため, このアルバムがどの程度ストーリにそってつくられているのか 判断できないが,タイトルを,酒場にシルバー船長がやってきて, 船を出し宝島に付き宝探しをするという流れになっている。
この様にストーリ仕立になっているため,曲もタイトルの雰囲気を 表したものが多く,また曲数も多い。映画音楽の様な視覚的な雰囲気が あり,全体的にポップである。怪しい曲,ハラハラする曲,美しい曲, 大団円的な曲等,はっきりしている。 またエレキギターを使った曲が1曲ある。キースの曲では非常に珍しい。 一応アメリカンクァルテットがベースのメンバーであるが, ちょっと特殊である。
アルバムの中盤(4曲目と5曲目)に美しい曲が続いているが,実はこれは LPの時代にはA面の最後とB面の最初である。そう思って聴くと 明らかに,ここに一つの区切りがあるのがわかる。CDではこれは 実感としてわかりにくいのが残念だ。この2曲は実に美しい。
あるところから船出をして進んでいくというストーリのアルバムと いうと私はWeather ReportのBlack Marketを思い出すが, このアルバムにも似たストーリを感じる。 キースジャレットのアメリカンクァルテットものは難解という方は 是非聴いて欲しい。
最後に補足だがImpule時代のアルバムを集めたコンプリート盤: The Impluse Years1973-1974にもこのアルバムは入っていて, これにはDeath and the Flowerが入っている。 面白い演奏だが,アルバム自体がストーリ仕立なため 作品のカラーには合わない。逆にキースが,なぜこの曲を いれなかったのかがわかる。その辺を考量して聴いて欲しい。
- キースには珍しい小説を題材とした作品