Pat Metheny Group(PMG)のピアニストライルメイズの ソロ名義のアルバム。ライルはPMGの主要メンバ, いやPMGはライルとパットメセニーの双頭グループと 言ってもいい。しかしもう一方のパットが多くの自己名義の アルバムを出しているのに対し,ライルはこれで4作目となる。 非常に寡作な人である。
ライルのアルバムは,これまでそれぞれ違った形態(グループ だったり,トリオだったり)で出されているが,今回は ソロ。ソロという形態でアルバムを出すのも初めてだが, どうやら普通のピアノソロではない。あいにく輸入盤を 買ってしまったので,情報が少ないのだが,YAMAHAの Disclavier systemというのを使っているようだ。 アクゥースティックピアノとコンピュータがつながっている という情報が読めるが,実際に演奏を取り込んで再加工したのか?, それともあらかじめ打ち込んでいた演奏情報を,ソロピアノと 同期してならせるようにしているのか?,それともソロピアノに 合わせて自動で演奏を始めるようなシステムなのか?。詳しい ところは今後の雑誌記事などを読めばわかるのではないか?。 雰囲気としては,あらかじめ打ち込んでいたシンセの演奏を ピアノに同期させてならした…的な気がする。 こういう話を聞くとフランスのIRCAMという研究所がつくった MAXというシステムが頭に浮かぶが…。
Disclavier systemを使ったというのが一つの目玉のように ライナーから感じられる。したがって演奏はピアノがメインであるが, 当然シンセの音も入っている。ただしほとんどの曲では シンセはまるでピアノの残響のように,うっすらと ピアノの音の空間のすきまを埋めていくように 置かれているようである。上品というかセンスの良さを 感じさせる。
ピアノの演奏的にはライルらしいというか,PMGや 過去のアルバムで演奏していたピアノのプレイを, 更にリリカルに磨きあげたような演奏である。実に美しい。 そして,コードやフレーズからはっきりとライルというか PMGなどの雰囲気も感じることができる。やはりライルの PMGにおける音楽的支配力も相当あるのだと,あらためて感じる ことができる。リリカルではあるがECMで多く聴かれるような, ヨーロッパ系のピアニストとも違うテイストがあり,この辺は 興味深い。
ライルは完全なアドリブよりある程度事前に書かれたソロを 弾くほうが好きだという話を聴いたことがあるが,このアルバム ではどうなのであろうか?。まぁアドリブかどうかは,どうでも いいと言えばいいのだが。演奏から伝わってくる緊張感は すばらしい。
曲が進むにつれ,多少シンセの割合が増えるが,あくまでも ピアノを補強する程度である。 しかし,やはりシンセの存在が,このピアノアルバムを 通常のものとはまた異なるものにしている。 おそらく普通に複数の人とやったり,オーバーダブで シンセを重ねても,こういう感じにはならないのではないか?。 タイトルはSoloであるが,これは意図的なものであろう。 演奏は一人であるが,今までとは異なる不思議なソロ ピアノとなっている。