このアルバムを聴いて,「おっ,なんかヨーロッパ的だ」と 思った方はECM通かも知れない(笑)。いわゆるアクゥースティックの ジャズクインテット(vibはちょっと変形か?)であるが, サウンドが実に透明で,いわゆるアメリカ的なジャズとは 全く異なる。
コードやメロディもヨーロッパ的であるが,そもそも 集めている曲調が実に潔くわりきられている。これは ある意味同時期に出たGlidephonicの おかげかもしれない。あちらはおもちゃ箱のようだが, こちらはすごくサウンド的に統一感がある。 静寂な曲で統一したため,その分サウンドに深みがある。 特にピアノは実に良く響いている。あたかもサスティーンを 弾いているようである。
曲も新澤氏,岩瀬氏,香取氏それぞれ個性があり, 統一感の中にうまいバリエーションをもたせている。特に 香取氏の曲は不思議な雰囲気をもっていて,アルバム全体に 深みを与えるのに成功していると言える。
静かな曲,美しい曲というのは単に退屈なだけの作品に なりがちだが,これはそういうことはない。もちろん, 演奏自体にパワーとういうか,技術的にも高度である せいもあるが,むしろこのアルバムに込められている メンバーの思いが,別に静寂なアルバムを作ろうとして 作ったわけではなく,アクゥースティックで彼らなりに サウンドさせようとして作った結果,こうなったと いう感じが,静寂ながら深みと熱さを感じさせるのであろう。