敢えて極論を書かせてもらうが, 私は昔からジャズやフュージョンに関しては,アメリカ人より 日本人のミュージシャンの方が,メロディ感覚というか 優れているのではないか?という思いがある。 アメリカで「メロディメーカ」と言われる, ミュージシャンは何名かいるが,その彼らがつくるメロディ さえ,(かっこいいかは別にすると)「歌う」点 だけで考えると日本のミュージシャンの方が,当たり前に 書いているようなレベルだったりするものが多い。
アメリカのミュージシャンは音色や(フレーズの)リズムに 関しては抜群に優れいているが,むしろメロディに関しては, 日本やヨーロッパの方が流れるような歌うメロディを つくるのが得意な気がする。ただし,日本人は歌うメロディを つくるのはうまいが,しかしそれがなかなかあか抜けた良いメロディ になるかは別である。その「歌う」があだになって,歌謡インスト みたいになることも多い,というかそういうのが大半だったりする。 まぁこの話はまたの機会に詳しく書くとするが(^^;)…。
いきなり一般論から入ってしまったが(^^;)。布川氏,納氏の デュオによるこのアルバムは全編に渡り,実に美しい良いメロディで 埋まっている。幾分のオーバーダビングはあるが,基本的には ギターとベースの空間を生かした演奏が心地好い。 布川氏はエレキギターも弾いているが,全般に渡り,クリアな 音色や音使いで,透明感あふれる響きを全体に与えている。納氏は 主にウッドベースを使い,ベースとしてはかなりメロディアスな ラインで,ギターに絡む。二曲ほど,パーカッションを加えた, 多少リズミカルなナンバーもあるが全体的に,内省的な, 静かなアルバムである。
ベースとギターのデュオということで, 去年ヒットしたメセニーとヘイデンのアルバムを 想像する人もいるようだが,むしろ私は初期の メセニーの様な情緒と切なさをうまくメロディに 込めた印象に近いものを感じる。 そして,冒頭で書いた通り,じつはこういうメロディに 関しては日本人の方が得意で,なおかつ,日本人が 陥りやすいウエットな感じにならない,微妙な バランスを保っているように感じる。
従ってこの作品は,洋楽を聴いているだけでは, なかなか出会えない,歌うメロディと,邦楽だけでも 出会えないドライな情緒をもつメロディが, 全編に渡ってちりばめられているアルバムとなっている。 しかも,そのメロディを奏でる音色も実に豊かで, クリアになっており,演奏クオリティと含め, 完成度の高い作品に仕上がっていると思う。