ジャズが電化してからもっともジャズを進化させたバンドは おそらくウェザーリポート(WR)だと私は思っている。 このアルバムはWRの曲を取り上げたアルバムである。 WRは今はなきベーシスト,ジャコ・パストリアス在籍時代が もっとも人気があったが,このアルバムもその時代を中心に 選曲している。
メンバーをみて欲しい。現在最前線で活躍している実に豪華な ミュージシャン達をふんだんに起用している。名義は特にないが 良くみるとキーボーディストであるJason Milesがプロデュースであり, すべての曲でキーボードを演奏している。従って,このアルバムは Jason Milesのアルバムとも言えないこともない。
聴いて真っ先に思うのは曲がカッコイイことだ。アレンジとかではない。 曲自身が実にWRである。WRのジョー・ザビヌル,ウェイン・ショータが いかに偉大だったかが良くわかる。アレンジは,粗削りである種緊張感の ある原曲に対し,わりとライトでポップなサウンドにしている。 ソロのスペースもわりときちんと管理されている感じがする。 比較的どの曲もコンパクトにまとまっている。 しかしそういうアレンジでもやはりメロディのWRらしさがすばらしく, いかにWRの曲が独特であったかを感じさせる。
さて,これだけ豪華なミュージシャンを使ったことは どうであろう?。しかしあまりにも偉大なWRのせいか, はたまたプロデュースやアレンジのせいか,起用した ミュージシャンの個性はあまり発揮されていない気がする。 例えばマイケルブレッカーが演奏しているエレガントピープルも マイケルのいつものドライブするソロは聴かれず,慎重にフレーズを 吹いている。でも,決してショーターのように吹いているわけではない。 サンボーンが吹いているキャノンボールも,もっと泣きのサックスを 吹いてもいいのではないだろうか?。
もう一つこれだけたくさんのミュージシャンを起用していても キーボードはプロデュースのJason Milesだけなのである。 ジャズ界の奇人ジョー・ザビヌル以上の個性的演奏を 一人でするには少し荷が重い。その辺がこれだけ豪華なミュージシャンを 使っても,アルバム全体としてはわりとこじんまりに 感じさせる所以ではないだろうか。
もちろん,これだけのメンバーである。十分のクオリティを 持っている。しかしそれだけにプラスアルファを引き出せなかったのが 少し残念である。 しかしWRの曲のかっこ良さと,それをポップにした楽しさは 十分楽しむことが可能だ。