フレットレスベースで,16分音符以下の細かいリズムを ブリブリと弾き,ミュートやダイナミックスでグルーブを つくり出すベーシストというと誰を想像するであろうか?。 ジャズ・フュージョンを聴くほとんどの人はジャコ・バストリアスを 挙げると思う。そしてジャコは絶大なる支持を浴び続けているにも 関わらず,(特に日本においては)上記のスタイルのペーシストは少ないし, なぜか注目されない。しかし!。私は現在のベーシストで上記の スタイルの人を挙げるとするとゲイリー・ウィルスを挙げざるを 得ない:-)。
本アルバムはゲイリー・ウィルスの2枚目のリーダ作である。 再度紹介する必要はないかも知れないが,あえてすると,この人は Tribal Techという,なぜか日本ではマニアにしか受けてない(^^;), スーパーバンドのリーダのうちの一人である。もう一人のリーダは スコット・ヘンダーソンというギタリスト。従って本アルバムも Tribal Techと似た雰囲気を持っている。しかしギターレスで, ドラマーにデニス・チェンバース,サックスにボブ・バーグという, 強力な布陣を配し,よりリズムおよびベースを強調したサウンドに なっている。
本アルバムはベーシストのリーダ作らしく,ベースの音が でかい(^^;)。しかも冒頭に書いたごとくのペースを,まさに ブリブリ弾いている。ドラムがデニチェンの曲などは,彼のパンパンに ミュートしたドラムのフレーズと相まって,細分化されたリズムが 曲を強力にドライブする。もともとフレットレスベースは,アタックが 強く出しにくいのであるが,ミュートやダイナミックスを細かく 制御することにより,ゲイリーはファンクするベースを実現させている。
曲はほとんどがゲイリーの曲。Tribal Techもそうだが, 彼の曲は,ろくにコードもなくテーマもないような曲が多い(^^;)。 リフもはっきりしなかったりするのであるが,なぜか単調な感じは しない。インタープレイの感じがすごく出ていて,緊張感がでてる。 はっきり言って,ハイレベルのプレイヤーがやらないと,駄目になる 曲ばかりだ。いったい彼らの譜面には何が書かれているだろう?。
ゲイリーのソロは2枚目だが,今回はサックスにボブ ・バーグを起用したのが,成功。前回よりさらにしまりのある サウンドになってる。一発ものでのボブのソロがすばらしい。 またTribal Techのキーボディストであるスコット・キンゼイの キーボードも不思議なインテリジェンスを演出してる。コード にはウェザー・リポートと同様の香りがする。
以上のように,すばらしい内容である。ギターがいないのは 少し寂しいが,もうすぐTribal Techのアルバムも出るという, 話も聞く。こちらも楽しみだ。