Title
鉄椀アトム・音の世界(Roots of electronic sound)
Artist
大野松雄:ONO, Matsuo
Label
Warner Music Japan

Songs
略:感想を読んで下さい
内容と感想
「ディジタル技術は音響(音楽)に何をもたらしたか?」 という命題を最近ずっと考えていた。マルチメディアといわれ る時代,画像はCGとかで新しい表現をつくり出してきている。CGは おそらく写真と同じでは駄目で,「リアルだけど現実にはあり 得ない」ものをつくり出すことが評価されているように思う。 (もちろん写真のようなCG技術も必要なんであろうが)。
では音にとってそれは何であろうか?,例えばCGで光や水の表現を する,「こういう風に表現すると,こんな感じになる」と いうのは一種のメタファではないだろうか? 音のメタファ?。 そうSE(Sound Effect)である。つまり効果音。TVやゲームや映画等 で使われるSEである。考えてみればUFOお飛ぶ音など誰も聴いたこ とがないのに,ある音を流すとUFOを想像するというのがある。こ れは過去のSEにより我々がイメージづけられているからではないか?
そういうことはいつから行なわれているのか?基礎はいつか?現在 は?と考えた時このCDのことを知った。このCDは「鉄椀アトム」の アニメの中で使われていた効果音をそのまま集めたものである。一 度1978年にLP化されているが,音自体を作ったのは番組の時である から1963〜1966年である。まだアナログシンセすら手に入りにくい 時代で,オシレータやテープの切り貼りで作ったらしい。アトムの 足音,怪人と戦う音,上昇音,円盤の音など,現実にはあり得ない 音が多く作られている。彼らは手本もなく想像で新しい音を作って いったのであろう。そうしてその音は我々の頭の中に,現実にあり 得ないのに,「それっぽい音」として焼きこまれているのだ。
現実にあり得ない音であるから,サンプラーだけでは作れない(加 工をすれば別だが)。最近昔のアナログシンセが見直されているが, アナログシンセも,現実にあり得ない音を持っているから,強い支 持があるのだ。そう思うとHiFiだけでは語れない何かがそこにある。 ディジタル技術は本当になにかを我々に与えてくれたのであろうか? 便利な道具を安価に与えてはくれたが,オリジナリティは過去のア ナログの時代の技術者の方が,あったのかも知れない。
(まぁFM音源とかはディジタルのおかげなんでしょうが^^;)
本当に必要なのは高精細とかじゃないのかもしれない。それを聴 く人,それを使う人の創造心くすぐるもの,そういう音響技術が今 一度必要なのではないか?と考えた。

ちなみに,アトムで使われている効果音は,全体的にちょっと可愛 目です。その後の,鉄人28号,マジンガーZとかで大体のロボット のSEって確立されていくんでしょうね。

総合評価(一言でいうと)
初期の音作り職人の意気込みに触れることができます。そう いうのに興味がある人にはいいかも知れません。でもそれ以外の人 には勧めません:-)。
購入日
'98 Oct. 4th

98 Oct. 5th


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