作品というものは,当時の時代背景を考えないと, その重要性が見えてこないものもある。もちろん,普遍性が ある作品のがすばらしいのは間違いない。時代と共にその 役割が変ってくる作品というのも,それを考えるとき当時の 時代が見えてきて楽しいものである。
この作品は1973年に録音されている。ECMレーベルとしても およそ30枚程度しかまたアルバムをリリースしていない。Gary Burtonは Crystal Silence(with Chick Corea)に続けてECMに対しては 2枚目の吹き込みである。Garyはこの前の作品となると Keith Jarrettとの共演やThrbの様にアトランティックレーベルに 録音したものになるのだろう(未確認)。時代は1970年前後。 ウッドストック等が開催され,フォークロックやフラワー ムーブメントが一方で盛んになっている時期である。
New Quartetというタイトルからわかるように,それ以前の Garyのバンドからメンバーを一新してのレコーディングの 様である。Garyは単純にジャズのミュージシャンと表現しても しっくり来ない。彼の音楽はテーマ・アドリブ・テーマという 構成こそはジャズ的であるが,ブルースフィーリングは ほとんどなく,フォークロックやカントリー的なサウンドが強く 感じられるからである。この作品はアトランティック時代の フォークロックぽさに加え,ECM的サウンドの透明感, アバンギャルド性が増しているように感じる。
さて,ここでのメンバーのうちギターを弾いているMichael Goodrick (Mick Goodrick)に注目したい。彼はPat Metheny, John Scofiled,Bill Frisell,Mike Strenいう 現在,ジャズの中で重要な位置を占めるギタリストたちに 大きな影響を与えていると言われてるが,日本では ほとんど彼の人となりを知る人はいない。 彼らが「Mickはすごい」といっても,ピンと 来る人は少ないのではないか?。このアルバムは Mickのプレイを堪能できる少ないアルバムである。 その他のGaryのアルバムにも参加しているが,Patも 共演していたりとかで,いまいち良くわからない。 しかしこのアルバムは4人でギターが一人のため Mickのプレイが良くわかる。しかし実は最初 聴いたときにピンと来なかった。すごく当たり前の プレイをしているように聴えたのだ。John Abercrombieを さらに控え目にしたような…。
しかし良く考えてみよう。この時代とそれ以前の ジャズギタリストといえば,Wesや,Joe Pass,Jim Hall, Pat Martino,Bensonなどだろうか?。まるっきり ジャズの人達である。そして現在はロックやカントリーの テイストを多く持ったMethenyやJohn Scofiledなどが 主流である。この変革はいつ起きたのか?。それがMick Goodrickの 功績,そしてジャズにフォークロックを持ち込んだGary Burtonの 業績だと言える。その時代の変化を感じる。それが このアルバムを今楽しむ聞き方の一つではないだろうか?。