これは,映画のサントラである。パットメセニーは これまで何枚か映画のサントラを出している。サントラの 場合はグループで行ったのは「ファルコンアンドスノーマン」 だけで,他のはほとんどメセニー一人で行っている。 予算の関係か,ほとんど彼一人でやっているのも多い。 こういうことを書くのも何だが,ファルコンアンドスノーマンは 別として,これまで結構あるメセニーの映画作品は あまり印象が残らなかったというのは正直なところだ。 むしろ彼のソロ作品であるシークレットストーリとかの方が, まさに映像的で,かつ壮大なアルバムという感じであった。
さて,今回のアルバムは,なんとメセニーの生ギター+ オーケストラという編成である。面倒で書かなかったが(^^;), 総勢50名以上。かなり(予算的に?)気合いが入っている。 とはいえ,曲は全面的にメセニーがギターを弾いていて, それにオーケストレーションが被さるというものが多い。 曲数がかなり多いのは映画特有の,一つのモチーフを いろんなアレンジで聴かせる小曲が多いためである。 したがって,28曲のうちいくつかは同じモチーフを使っている というものである。
というわけで,スペック的には申し分ない。ずいぶん凝った作りであろう, と期待したわけであるが,意外にシンプルな曲が多い。 メセニーが生ギターでしずかに淡々とメロディーをつま弾く, それにストリングスが絡む,そういう曲が多い。 実は私はこのアルバムの最初の1,2曲を聴いたときに, ニュウーシャトーカを思い出した。淡々とどこか寂しい夕暮れの 田舎道を歩いていくような,そんな雰囲気の曲。まさにアメリカの 枯れた風景を思い出させる様な曲。そんな世界を感じる。
かってシークレットストーリが出たとき,私は その完成度のすごさにも感動したが,一方で, ニュウーシャトーカの様な素朴なアメリカの 音楽を感じさせる部分が無かったことに,ちょっと 悲しみをおぼえた。しかしこのアルバムでは, そのメセニーの味が,まだ彼の中に残っていることを 感じさせる。もちろん,ニュウーシャトーカの 頃より,いろんな味を取り入れ,更にアレンジや ギター演奏のバリエーション等も確実に膨らんでいることは いうまでもない。そうやって進んでいきながらも, 彼の出発点でもあろう,アメリカンカントリー的 メロディの美しさをいまだに,色あせること無く, 更にドラマティックに展開できる事に,彼のすごさを感じる。
映画音楽という事でちょっともったいないなぁー,って 気もしたが,ある意味,それはそれで割りきれてつくれたのかも 知れない。しかし単なるサントラで終わらせるには もったいない作品である。映画がどういうものかは しらない(日本での公開は未定らしい)が,このアルバムは 今後もきっと私は聴き続けるだろうと思える。