映画「スチームボーイ」を観て

かって私が少年だった頃,空想の世界は未来であり,宇宙であり, ワープであり光子力であった気がします。しかし科学が与える未来予想は 失望にさらされ,少年(我々も)の夢はファンタジーの世界へ向かうのでした。 そしてファンタジーの世界は,全く現存の世界と関係ない世界である場合も あれば,もう一つの現代,そしてもう一つの過去である場合もあるのでした。

未来に失望した我々は過去に魅入られるのでしょうか?。ファンタジーの 世界の舞台はなぜか中世だったり近世だったりというちょっと前の 過去の様相をモデルとしていることが多いです。古代を舞台にする場合は そこに別の意味の神話性を持たせることが可能ですが,100年や200年程度の 過去は神話性というよりは,我々が想像できる古き良き時代の延長でもあります。 そして,そこで使われていた技術それが過度に発展した場合の,ある意味 100年前200年前に描かれたかも知れない,未来予想を現在によみがえらせることの 意味というのは,実は私は良くわからなかったりしますが,ディジタルを 拒否し,あくまでもアナログを崇拝する思想ともどこか共通する様な ものを感じるのですが誤解でしょうか?。

…と前置きを長く置きましたが,映画「スチームボーイ」,これは 大友版サクラ大戦です。万国博覧会が開催される華やかな近代の ロンドンを舞台に蒸気機関の技術を高度に発展させた技術者と そのオーナーであるアメリカ財閥がとんでもない兵器をつくり 大騒ぎする物語。そしてその中で翻弄される少年の物語です。

大友映画であるので,エンターテイメント性は抜群。動画の緻密さは ピカ一です。CGは使ってますが,イノセンスの様なCG臭さより, 絵的な表現にこだわり,アニメとしての冒険活劇として十分楽しめました。

とはいえ,ストーリ的にはわりと単純で2時間以上本当に必要だったのかは 多少疑問が残ります。中間部はわりと動画的には仕掛けフンダンで あったにも関わらず,それが延々続いたため,わたし的には眠たくなりました。

そして,上に書いたように,実はこの映画いろんな名作のモチーフが パロディじゃない形で頭に浮かぶ,つまり過去の名作の設定をそのまま 引き摺っているような印象を受けます。サクラ大戦はともかく,ロンドンが 舞台でクリスタルパレスが出てくるシーンは,今話題のエマを想像 してしまいます(まぁこれはスタッフは思いも因らぬことでしょうが)。 また巨大な城が浮かぶシーンや,蒸気機械が主人公を追い回すシーンは, ラピュタやコナンの様な宮崎アニメの影響を感じます。そもそもこういう 巨大機械が浮上する時点で,「このアニメはこの機械が崩壊して大団円だろう」と 容易に想像してしまい,そしてそれがまさにはまってしまったのです。

そういう意味でいうと世界観やストーリ的にはそれほど特出すべき点は 無く,お約束のエンターティメントとして楽しむ作品なのかも知れません。

とはいっても,主人公以外の主要キャラ,財団の女の子スカーレット,主人公の 父と祖父であり対立するマッドサイエンティストロイドとエディ,財団の 工作員であるアルフレッドなどはまさに大友テイストなキャラであり,性格や セリフ,表情などは他の監督のアニメでは見られない豪快なものであり, 大友ファンにはたまらないものでもありました。意外にアニメのクオリティを 除くとこの妙にハズレて豪快な大友キャラを楽しむアニメなのかも 知れません:-)。


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04 Aug. 7th


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