ハイビジョン放送で観ました。
ナチス占領下のポーランドが舞台で,ユダヤ系のピアニストである 主人公,そしてその家族がナチに迫害されていくという話。原作者 の実体験を元に描かれてるらしい。
実話であるからだろうけど,地味でカタルシスが殆んどない。なの にナチのユダヤ人に対する迫害はやたら過激で,驚くべきものでし た。ナチの軍人の思いつきで,銃で撃たれたり,住まいを奪われた り,戦車で家をぶち壊したり…,人間が人間に対してここまで残酷 になれるんだろうか…と思うことばかりでした。
主人公個人の視点で描かれているので,戦争全体は見えませんが, それゆえにひたすら生き延びることだけを模索するという主人公の 苦しさが伝わってきます。明日は殺されるんじゃないか?飢え死ぬ のではないか?と苦しくも重い時間が過ぎていきます。 映像的には,廃虚となったワルシャワの 風景が凄いな…と思いましたが,後は結構地味です。ゲットーの蜂 起とかは日付だけでしか説明されておらず,西洋史に詳しく無い人 には,なんのことかわからなかったかも知れません。
そう,この映画は,多分第二次大戦のナチの行動,そしてその被害 にあった人達を忘れないために作られた映画なんだろうな…と思い ました。日本でいうと火垂るの墓みたいなものでしょう。みるのは 辛いけど,多分ヨーロッパの人達は,この体験を後世に伝えるため に,定期的にこういう作品は作っていくんだろうなぁ。
ちょっと本当にそうだったんだろうか?と思ったのはとにかくナチ スの兵隊が人を人と思わないような残酷な人達として描かれている こと。主人公は一人の将校に助けてもらいますが,その人も,人が いいというより,気まぐれで助けたような描かれ方でした。日本人 が戦争中にアジアで行った暴力の場合,我々は全員じゃなくて,や らなかった人や,上官に言われれ嫌々やった人もそれなりにいたん だろう…と想像しますが,そういう人がいるような描かれ方じゃな かったのが,凄いなぁ。もしこれが西洋での認識だったら,日本人 が,アジアで行った暴力も同じように日本人がひたすら残虐であっ たように描かれるのは,ある意味当然なんだろうな…と思いました。