映画「モンク/モンク イン ヨーロッパ」を観て

初めに書いておくが,まとめてるけど,二つの映画である。作品の 素性はわからないのだけど,どちらもセロニアス・モンクのドキュ メンタリーで,1時間弱の短い映画。没後40年らしいので,合わせ て上映なのかと思っていたが,この二つのドキュメンタリーは,同 じ人が撮影しており,制作年(撮影?)も1968年らしい。
ドキュメンタリーと書いたが,ナレーションが入ることもなく,ひ たすらモンクのことを撮っている作品である。最初の「モンク」は アメリカ,ニューヨークの様子。2本目の「モンク・イン・ヨーロッ パ」はヨーロッパツアーの様子だった。「モンク」の方はクラブで のステージもあったが,スタジオで曲作り,レコーディングをして る様子を結構な時間を割いて映していた。
ナレーションとかないし,カメラもおそらく1台の長回しなので, 身近なん人が記録として撮ったものだろうか?と最初思って見てい たが,途中から音がとても良いことに気づいた。屋外とかであるて いる様子を撮ったり,スタジオやクラブで演奏してるのを撮っても いるのだけど,モンクの言葉がはっきり聞き取れる。屋外で道路脇 とか歩いている時も車の音がほとんど入らない。これどうやって撮っ たんだろう?と思うが,多分,カメラ以外に指向性マイクを持って 狙ってる人がずっとついていたのだろう。そう考えると,ナレーショ ンはないが,割とカットというかシーンチェンジは活発にやってい て,編集はそれなりにやっているんだろう。
という映画としての品質はいいとして,モンクの動いている様子, レコーディングや作曲の様子が紹介されているのはとても興味深かっ た。68年といえばもう晩年だと思うんだけど,スタジオでも言葉少 なくたどたどしく,自信なさげな様子は意外だった。ただ,この後 数年後にモンクは調子を崩して活躍しなくなるから,すでに不調だっ たのかもしれない。
それにしてもモンクの演奏は素晴らしいと思った。モンクはジャズ のスタイル的にはバップの人で,フリージャズという言葉が出てく る前の人なんだけど,多分私がイメージしていたフリージャズとい うとこういうのだったのかもしれない。ただ,ちゃんとバップには なってるんですよね。様々な音の重なりを試行錯誤的に重ねて,濁 らせる手法は,いわゆる不協和音なんだけど,コードプログレッショ ンは感じる。映画では自信なさげなモンクだったけど,その響きを 一つ一つ確かめながら弾いている感じが印象的だった。
それにしても素晴らしいと思ったのはモンクのバンドのメンバー。 モンクが自由にピアノを弾く代わりに,しっかりと曲の土台を作っ ており,サックスも決して暴れずしっかりと曲の骨格を作っていた。 モンクのバンドは,他のメンバーがしっかりとモンクの曲の土台を 固めて,その上にモンクが自由にいろんな音を重ねていくというよ うな感じだった。レコーディングでもモンクは具体的な演奏の指示 をしないのだけど,それでもしっかりと曲を作っていく辺りすごい と思った。このメンバーだから演奏が形になってるのかもしれない。
余談だけど,レコーディングのシーンでで動いて喋るテオ・マセロ を見た。初めてだけど,結構お調子者みたいな感じで,こういう人 だったんだと思った。


未分類に戻る

Last modified: Mar. 3 2022
(C) 2022 TARO. All right reserved