映画「それでもボクはやってない」を観て

ケーブルテレビの放送で観ました。 痴漢と間違われ犯人として裁判にかけらる男性の映画。 一昨年結構話題になりいろんな賞を取ったはずです。 痴漢冤罪というのは,男性にとってはかなり重たいテーマなのですが, 話題になったときに言われていたように,重たい映画であるにも 関わらずとても観やすく作られており2時間以上の映画を 飽きることなく観れました。

ただやっぱり重たい映画だと思います。聞くところによると, この映画は男性と(特に独身の)女性ではまったく見方が異なるそうで, その断絶感にも重たいものを感じます。というわけでわたしも 男性としての観方になります。

この映画の中の主人公の若者は映画の中では無実だとしっかり 設定されているので,観るほうとしては,警察や検察や裁判官の 理不尽な取調べや裁判にやるせないもの…まぁ人によっては怒りを 感じてみることになります。もしかしたら主人公が本当にやったかどうか 解らないという視点で描いていれば,全然違う映画になるのだろうなとは 思いますが,冤罪がテーマなので無実であること,冤罪でどんなに 理不尽な扱いを受けるかが話の骨子になるわけです。

この映画は監督の緻密な取材を元に作られたらしいので,中で 描かれているエピソードは実際にあったようなものを取り扱っており 非常にリアリティがありました。ですが,エンディングとして カタルシスが得られないところも含めリアリティを感じました。 つまり冤罪は一審では晴れなかったわけです。 モデルとなった事件の中には,上告後に冤罪であることが明らかに なった事件があることを,わたしは知っていたので,ここで 有罪になっても,きっと主人公は冤罪が晴れるんだという期待も あったのですが,特定の事件がモデルではないので,もしかしたら 主人公はこのまま有罪で確定したかもしれません。

痴漢冤罪は男性にとって怖いものですが,だからといってじゃぁ痴漢の 捜査を甘くしろ…とはわたしは言いません。ただ現在はDNA鑑定とかを つかってずいぶん科学的な証拠も必要とされるようになっているらしいので, できればそういう方向を強化してほしいと思います。

それから,おそらく映画で一番重要なテーマは痴漢に限らず, 警察検察の捜査や裁判において,だれもが冤罪を受ける可能性があるという 話であり,そういう意味では男性に限った問題ではないでしょう。 最後の主人公が独白で「裁判は真実を明らかにする場ではなく, とりあえずの真実を決める場であることがわかった。」「裁判官が 過ちを犯したことは,自分だけは解っている。」というのは, 実は現在の日本ではとても大きなテーマです。 いま裁判員制度が問題になってますが,裁判がどういう手続きで 行われるか,そして裁判で決めるものは何なのかを,こういう形で 知るという手もあります。だからといって「とりあえずの真実」という ことで気軽に裁判員をやればいいというつもりもないのですが, 裁判に人知を超えた真実性を求めるのも,やぱり無理なんだと思います。


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09 Apr. 5th


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