理解した(?)用語

“カルト”という言葉を人が使ってるのを見て, 「思い出した」のであるが,かって私はこの言葉の意味がわからず, 苦労した憶えがある。辞書を引くと

cult
(宗教的)儀式
(宗教的)崇拝,信仰
熱狂家のグループ
とかが書いてある。これ今だとわかるんのだが,当時これを 読んでも全く理解できなかった(^^;)。

そもそもは「カルト映画」「カルトファン」とかいう言葉を, 数年前にあちこちで使われてるのを聞いて,「どういう意味だろう?」 と思ったのがきっかけである。その後「カルト宗教」という言葉が マスコミに載り始めた頃には,既に自分もその言葉を使っていたの であるが,本当に理解して使っているのであろうか?

この手の言葉は,意味を理解するというより,使い方を知る ことが,イコール「理解した気になる」 ことではないか?
今でも「カルトってどういう意味?」って聞かれたら 「熱狂的とかいう意味だけどね」としか答えようがない。 しかし使い方は教えられる。「カルト宗教」「カルト映画」 などがどういうものかを説明することにより, 「カルト」という言葉のイメージを相手に 持ってもらうという感じである。

この様な,経験は実は非常にたくさんある。 つまりもともと辞書的な意味からは何も理解できず, 使い方を知ることにより,自分も使いこなせる (=わかった気になる)様になった言葉。面白いのは 使えるようになってからでも,定義は あまり自分の中では変わってないってことだ。

これは言葉以外でもあるようで,私はかって信号処理の手法で “Z変換”というのが,どうもわからなかった経験がある。 本を見ると定義は書いてある。実に簡単。 しかし「これがなんなの?」 というのが結構しばらく続いたのである。 しかしその式をずっと見ていて,その式を元に いろんなことを説明してるのを読んでると数カ月後には, 「Z変換ではね……」と使ってる自分がいたのに気づき, 苦笑した(^^;)。で,じゃぁ今でもZ変換の定義を 説明しようとすると,やはり教科書に書いてある式を いって終りだろう。というかそれで十分だと思うのである。 でもわからない時は,それ見ても理解できなかったのだが。

“マルチメディアとか“サイバースペース”とかの 新しい技術用語,“レイブミュージック”とか “ヴィジュアル系”などの音楽ジャンル,そういう言葉も 定義というより,用法を理解したことにより わかった気になってる様な気がする。 それでいいとは思うのであるが,「意味を知るというのは, 定義を述べられることではない」というのを,つくづく感じる。 良く「定義を述べよ」とかいうけど,それじゃ駄目なことって たくさんあるなというのが実感である。


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98 Oct. 8th


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