2002年の音楽シーンについて(ただし自分が聴いたものの話:-))

はじめに
年があけていきなり去年の話をするのもなんですが,年末に 間に合わなかったので(^^;)。ライブレビューはしましたが, 聴いた音楽について書いてなかったので書いておきます。

というのは,実は去年は結構わたしは音楽を聴いていて 楽しかったのです。もちろん去年の音楽シーンの話だけではなく, 数年前に立ち上がった音楽シーンに,たまたま去年出会っただけ のものもあります。しかしそれも含めてそういうシーンだった 気がします。

邦楽:カバーとか
邦楽は相変わらず,そんなに聴きませんでした,椎名林檎以外 (^^;)。世間ではミリオンセラーが1枚しか出なかった…とか,それに 関連してかCCCDとか話題になってますが,そもそもビジネスモデルを 変えるべき時代の気がします。ここ数年ベスト盤が売れていたようですが, ベスト盤は家具みたいなもので,一家に一枚行き渡れば, それ以上は不要です。新しいものを創造せず安易に儲けようと思うと そうなるのは当たり前でしょう。

とはいえ,そういうベスト盤以外でもいい曲は多かった気がします。 個人的には元ちとせのアルバムを買ったりしましたが:-)。

あとベスト盤ではなくカバーアルバムが結構目につきました。 椎名林檎の新譜もカバーでしたし,井上陽水のアルバムもカバーでした。 元ちとせもレコードは出してませんが,オーバーザレインボーを CMでうたっていたり,いうまでもなく平井堅も…。

まぁカバーも過去の資産を利用していると言えますが,ただし, アレンジをしなおしたり,違う人が違う曲をうたうことによって新しいものを 作り出したりと,単に食い潰しているわけではありません。 それにカバーをうたうという事でいうと,うたう人にそれだけの 個性が必要です。そういう意味では,過去の歌の良さに 敬意を払いつつ,それに負けない個性を発揮していた人が それなりにいたような気がします。

洋楽:新旧二極化による復権
最近洋楽の動きが見えない,日本に入ってこない…と嘆いていましたが, 去年は結構見えました。単に自分のアンテナが変な方向を 向いていただけかも知れませんが(笑)。世間的には 80年代とかのコンピレーションアルバムとかが目立っていて, また大物が来日するなど,30代とかわりと年輩層をターゲットに した様なものが目立ちましたし,TV番組とかもそういう企画が 目立ちました。

ただし,わたしにとっては去年はRadio Headケミカルブラザーズなどの イギリスの新しい音楽シーンに出会ったことです。もちろん 去年急に起きたムーブメントじゃないし,むしろ私の方が 遅れているのですが,数年前からテクノや新しいブリティッシュロックの 流れがあるのが見えてたのですが,具体的にどう手をつけていいのかが わからなかったのが,ようやくわたしのような一般の人(笑)にも 見えるようになったという事でしょう:-)。 そして,新しい音楽は新しい表現を取り入れながらも,古いロックの もってるロックらしいスピリットを感じられました。 どちらかというと,アメリカ的なショー化された音楽というより, 若者が思惑し模索するようなそういう生々しい音楽に出会えた 気がします。

そういう意味で言うと,コンピレーションを連発して,過去の資産を 食い潰しているようで,洋楽に関してはしっかり,そうやって 人を引き付けておいて,ついでに新しい音楽も聴いてもらおうという様な 流れが見えました。気のせいか,洋楽の音楽を以前より良くFMで 聴くようになってきていて,もしかすると邦楽が苦戦している分, 洋楽に力が入ってきてるのかも知れません。

ジャズ:世代交代と巨匠の力
クラブミュージックの話ばかり書いて申し訳ないのですが(^^;), やはりジャズの中にも新しい音楽としてそれを採り入れた, 音楽が目立つようになりました。特にアメリカのミュージシャンが 多いコンレンポラリージャズは,クラブミュージックの中でもテクノより ジャムバンドを本格的にジャズに採り入れるという動きが 目だった気がします。

MM&WSo live等は既に一昨年から活動が目立ってましたが, 聴く層や共演ミュージシャンが従来のジャズとずれていたため 従来のジャズファンには耳にする機会が少なかったと思います。 そういう意味で言うとジョンスコが出したウーバージャムは まさに「ジャムバンドをジャズに紹介したアルバム」と言えるでしょう。 ジャムバンドを単体で聴いて, ピンとこなかった従来のジャズ・フュージョンファンも,あれを 聴いてカッコイイ…と思った人は多かったのではないでしょうか?。 わたしはある意味そういうことは例えばマイルスが60年代後期に 当時出てきたファンクやロックを採り入れ示したのと似たような 現象だったのではないか?…と思いました。そういう意味では, ウーバージャムは非常に歴史的なアルバムになる気がします。

そして,新しいジャズのもう一つの流れとしてヨーロッパ系の ジャズが気になりました。一つはジャズランドの様に テクノを採り入れたジャズ,もう一つはピアノトリオの様に クラシックのコード・サウンド感覚をベースにしたジャズ。 ジャズランドについては別に書きますので,ここでは割愛します。 ピアノジャズに関しては,私の単なる予感なので,今年開催される鯉沼ミュージックの シナジーライブを見てもう一度考察したいと 思います。

さて,こういうジャズ外のインスト音楽をジャズが採り入れる 動きの他に,若手ジャズミュージシャンの中からも新しい才能が 花開いた様にも思います。ジョシュア・レッドマンや, ブラッド・メルドーももう何年も活躍していますが, オリジナリティがあるスタイルを見せてきた気がします。 もしかすると世代交代がはじまった時代なのかも知れません。

とはいえ,一方で巨匠たちの活躍も目立ちました。ウェザー の未発表録音と自己のソロアルバムを発表し,まだまだ 第一線ぶりを示したザビヌル,ライブアルバムを 発表し,そしてそのすばらしさを東京ジャズで示したショータの 他にハンコックブレッカーもライブや企画で 活躍しましたし,メセニーグループもメンバーを一新した 新作とライブで話題をさらいました。 またキース・ジャレットも,その孤高の道を突き進んでいます。

そういう意味で言うと,若い人たちのいろんな試みでにぎやかに なりつつも巨匠が貫禄を見せ付けたという印象があります。 そういう意味で言うとお互いが刺激しあっている様にも感じられ, 活発でにぎやかであったジャズ界だとも言えないでしょうか?。

さて,ここでハンコックやショーター等をあえて巨匠と 書きましたが,もっと前の世代については亡くなった方が多かった 年でもあります。寂しいですが,確実に時代は進んでいるという 風にも取れました。

ジャズボーカル
一方で日本のジャズ界をいうと若手のジャズボーカルが非常に目立ち, その影響でジャズを演奏するバーやライブハウスが非常に 増えた気がします。

私はジャズボーカルはほとんど聴かないので,コメントしませんが, 聴く人が増えた,演奏する場所が増えた…ということはいいことじゃないか?…と 思っております。

ジャズランドなどのヨーロッパジャズ
個人的には今年はJazzlandレーベルのジャズに魅せられた一年でした。 Jazzlandはブッゲ・ベゼルトフトというキーボードプレーヤが 創設したレーベルで90年代後期から活動をはじめていました。 一昨年あたりからフューチャージャズという言葉がわたしの 耳に入り出し,そこで手にしたのがこのレーベルのアルバムだったのです。

ジャムバンドと同じくクラブミュージックを大きく採り入れてますが, ジャムバンドがアメリカの音楽でファンクの香りがするのに対し, Jazzlandの音楽はテクノのリズム,そして北欧らしい ポップなメロディが 時々顔を魅せます。そういう意味で言うと,結構前衛的な音楽をやっていても, どこかクールでポップな感じがし,ヘビーな感じがしません。 最初聴いたときは,なんか「軽いなぁ」と思っていたのですが, 実際にライブなどをみると,目の前でループをつくって,それに合わせて 演奏を発展させていくという現場性も高く,かなり楽しめました。 ブッゲの他にはWibuteeというバンドやEivind Aarsetという ギタリストのアルバムも聴きましたが,おもしろかったです。

また,Jazzlandではありませんが,ニルス・ペッター・モルベルも Jazzlandのミュージシャンと共演が多く,共通項で括ることも可能でしょう。 いずれもテクノロジー的にはうち込みを多く用い,エフェクターが 効いたキーボードやギター,管楽器を用いますが,ベースはアクゥースティックで またドラムも非常にコンパクトなセットもものが多く,その辺が, うち込みを使いながらも,どこかアクゥースティックを感じ させるサウンドとなってます。

まとめ
こうやって書くと,意外ににぎやかでした。今までとは違うにおいがする 音楽にたくさん出会った年だった気がします。 もちろん,それが去年にはじまった動きではなく,私がたまたまそう いう音楽を聴く機会があって,そこを通りかかったのかも知れません。

ただ,コンピレーションアルバムの発売や,巨匠・中堅ミュージシャンの 来日ライブ,また,そういう音楽を採り入れた巨匠たちの動きなどを 思い起こすと,同じように感じた人たちは他にも多かったのではないでしょうか?。 ある意味,去年はそういう30代40代の人たちに,再び音楽を聴く機会を つくり,新しい音楽をつくる人たちも,全く世代の断絶がなく,どこか 共通したにおいをもったいた気がします。そういう意味で言うと 温故知新の年だったのかも知れません。まぁ, 購買層を広げるためにレコード会社がいろいろ戦略を練った結果かも 知れませんが:-p。

しかし,軽音楽が生まれて1世紀以上経ちました。エレクトリックが 採り入れられて30年以上経ちました。コンピュータが音楽に 使われだして20年程経ってます。従来の音楽を引っくり返すような 新しいスタイルが出ていない以上,従来の音楽の上に新しいものを 積み重ねていくということになるのでしょう。そしてそれは 決して過去の否定ではなく,過去の資産のすばらしさの再確認進歩の両方を持ったものになるのだと思います。 これまではアンチテーゼとして新しいスタイルが生まれることが 多かったのですが,常に前を否定していくと,そのうち限界が来るのかも 知れません。

ただし,だからといって,古いものを煎じ直してばかりいてはもちろん 枯渇するのは見えてます。今年の温故知新な動き,また巨匠たちの 活躍をみていて感じるのは,そこにある新しさやスピリッツは フォーマットの中にあるものではないということです。 同じスタイルでやっていても,新しいテクノロジーを駆使しても そこに共通する何かを持っているかどうかが大事なのでしょう。

いろいろ書きましたが,総じて新しい音楽の出会いもあり, 偉大さを見せ付けられたりもし,楽しくにぎやかな一年 でした。

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03 Jan. 07

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