スター誕生(03/09/18)

現在の若い人…とりたて小中学生とかに 「なりたい人は誰ですか?」と聞くとどう答えるだろう?。 先日書いた「尊敬する人」とかと同じ話です。

「モー娘。」とか答えたりするのだろうか?。 「歌手になりたい」「俳優になりたい」 「お笑い芸人になりたい」とかいう答えが帰ってきそうです。 スポーツ選手とかもあるでしょうが…。 これらはスターと呼ばれる人たちです。

…ところが昭和以前の人たちが子供の頃もそうだったんでしょうか?。 わたしの親は昭和一桁ですが,親がいうには,当時は芸人とか 歌手とかは「水商売」と言って親からするとゼッタイ子供の 職業とかにはしたくないものだったようです。

まぁ見せ物小屋とかで芸をしている人たちは身寄りがなかったり 売られてきたりという人たちが多かったからでしょう。

ただそれでも江戸時代とかの浮世絵とかを見ると 特定の芸人が多くの人の人気を集めていたことが 伺い知れます。ついでに書くと当時は花魁とかでも 一種のアイドルだったように思えます。売春やってるんですけどね。

もっとも当時の状況を考えると例え江戸のような 大都会で人気があったとしても,地方の人がそれを 観るってことはほとんど出来なかったでしょうし, 話すら伝わってこない可能性もあります。ですから, 当時のスターが今のスターほどの影響力を持っていたかは 疑問ですし,やっぱり一般の子供が「なりたい」と 思う対象だったかは疑問です。

一方でこういうことを考えました。今のようにTVや ラジオやレコードがない時代は,ある音楽やある演劇を 味わうためには実際にその演奏や劇をやってるところで 見ないといけません。ということは,地方の人がそれに 触れるためには,その人が回ってくるのをひたすら待つか, あるいは他の人がそれを実演するのを見るということになります。 つまりある歌が流行ったとして,都市ではあるスター?が 歌っているとしても,地方では他の人が歌っているわけです。

こういう状況ではその歌ってる芸人自体よりも歌そのものの 方が人気を集めるという事になります。従って,レコードが 出来る以前の音楽を省みると,名前が残っているのは, 歌手や演奏家ではなく,作曲家です。実際日本でも 歌謡曲の初期はレコードの発売より先に楽譜が出版されて, 歌手がそれを買って歌っていたそうです。だから「音楽出版」って いまでも言うんですが…。

ところがレコードやラジオが出来ると人々はいつでも 「一番うまい人」が歌っているものを聴けるようになります。 そうなると当然,曲そのものより,歌っている歌手の方に 魅力を感じるようになるわけです。 そうして,芸人自身がスターとなるのだと思います。

実際に音楽の歴史を省みると,演奏家や歌手が 名前を残し始めるのは,ラジオやレコードが 出来てからで,それ以前の人はほとんど記録に残ってません。

ですから,過去の演奏家を過去にたどっていくと,ある時点で 終わってしまい,あたかもその人たちが,音楽の 創始者の様に見えてしまいます。 そうなるとその人たちが特別に凄い人だった かのように思えてしまいます。

でもそうなんでしょうか?…。たまたまそういう 実演からラジオ,レコードへの転換点にその人たちが いただけかも知れません。ふとそう言うことを 思ったりします。つまりそこに特異点としての始点が あったわけじゃないのであれば,特異点としての 終焉も無いような気がします。

ところで,以上から類推するにメディアの変更により, そういう表現の形態が変わるときに,その節目にいた人は 後世,創始者とか神とか言われたりする可能性が高いわけです。 現在,ネットの発達によりCDのビジネスモデルが壊れて 来てます。

…ということは,今活躍している人たち,今後しばらく 活躍する人たちの中からそういう人たちが 生まれてくる可能性があるのではないか?…, そう思ったりします。

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03 Sep. 18th

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