ルネッサンスジェネレーション 2003
ルネッサンスジェネレーションは金沢工科大学が毎年一回都内で行っている イベントで,今年は7回目になります。まぁひねた見方をすると 地方の大学が都内で若い人が喜ぶような(?)イベントをして,学生を 集めようとしているとも言えますが,動機はともあれ, 内容がわたし好みなので,2000年から毎年行ってます。 去年も行っていて,レポート書く と書いてますが,どうも見当たらないのでサボったのでしょう(^^;)…。 というわけで,今年は書いてみようと思います。実はその前の年のとかも 書いているんですが,ちょっとこのページには挙げてないので, 載せるかどうかはまた別途考えます。さて,今年のイベント,テーマは「リアリティ・ザッピング:同時多発TV」 でした。ホームページに主旨とかテーマ解説が載っていて, あらかじめ読んで行きましたが,感想としては想像とは結構違ってました。 じゃぁどういう内容だった?というのを書くのは難しいんですが, リアリティの話はそうでしたが,あまりTVに 限った話では無かった気がします。まぁリアリティの話だとすると, 例年,その視点での話は出ていたので,ちょっとだぶるような 気がするというか,まぁ例年のテーマに対しての隙間を埋めたというか…, そんな印象ももちました。
というわけで,全体としての大きなまとまりを感じなかったので, ここの出演者のトークについて,印象に残った言葉,感想等を 書いていきます。全部について書くわけじゃないので,漏れてる点は ご容赦を。
市川 伸一氏
このかたは実際は来ていてあとで討論に出てますが,最初は ビデオでの出演。この辺は演出のようです。
「人は確からしさをリアリティと感じている」,
「確からしさとは確率のことである」,
「しかし数理的な確率と主観的な確率は大きく異る」,
という話など…。幾つか例を挙げましたが,主観的な確率判断は 確かに数学的な間違いである場合が結構あるようです。 ところでこの人,別に数学者ではなく,心理学者なんですよね…。 ちょっとおもしろかったです。
田中 宇氏
国際ニュース解説を 書いている人,わたしも名前は知ってます。
「わたしは取材をしているわけではない」
「元々ニュースは事実があって,それを取材して 記事にしていたが,現在は最初に記者が触れる情報自体が 事実ではなく広報や政治家が喋ったことだったりするので, 事実というのが非常にあいまい。人の意見をさらに 変形して肥大化したニュースが多い。」
「だから自分もWebをザッピングして書いているだけ」
というような内容。その後,下條氏とのトークの中で アメリカの戦争の話に広がり,陰謀説, アメリカの現在の世界支配モデルはどうなっているのか?…, ネオコンと中道派の攻防…,等のやり取りでした。ルネッサンスジェネレーションにしては珍しく政治的な内容だった 気がしますが,情報の確かさや相手の真意を探るという点が メインだったので,まぁ一応このイベントにはあっていました。 最後の討論の時「記者は思い込みで断言しても構わない」と 言ったのは印象的でした。読む方が「記者はこういう狙いで 書いているな」と類推すれば良いとのこと。まぁそれは 一理あります。
下條 信輔氏
視覚系の心理学者である氏によりいろんな錯覚現象の紹介でした。
「自分で見たものしか信じないというのは本当のリアリストではない。 そういう人でも,目を閉じても目の前のコップが消えた とは言わないだろ」
「人間は網膜に写った映像(左右上下反転)を本人は 見ることができず。そもそも最初の知覚の状態を 直接体験しているわけではない」
「従って人間の近くは最初から『超越的』だといえる」
「つまり誰でも目で見たもの以上を感じる傾向がある」
「これが発展するとアニミズム,スピリチュアリズム,そして 神の発明にもつながる」
等という話,「センスデータ」「アモーダル」 「モーダル」「クオリア」 等の定義を述べての説明でした。神話の話はわたしが先日読んでいた本と丁度重なる主旨があったので おもしろかったです。
「アモーダル」は見えないけど絵からあるように感じるもの「モーダル」は 絵を見て錯覚して見えるもの…,確かにいろいろあるな…とは思いました。 「アモーダル」と「モーダル」が切り替わって,影絵の錯覚とかが 見え方が変化する…っていうのは確かに初めて意識しました。
金沢 創氏
「心の理論」の話とか…。
嘘のレベルとして,「単なる条件付け(こうしたらこうなる)」という レベル1,「こうしたら相手がこう思うんだ」ということが わかってやるレベル2,「こうしたら,相手はわたしがこうしようと 思ってると思うんだろうなぁ」というレベル3の三つに わけて,それぞれ,進化や人間の成長でどこまで出来るか?を 説明。3才の子供は心の理論がなく,レベル2は無理みたいです。人間は5 才くらいまでに心の理論が出来るそうです。チンパンジーはうそを つくのですが,レベル1か2ですが意見を聞けないので,どっちかは わからないそうです。
おもしろいのは氏は「自我(というより自己の心の存在)を 感じるのはレベル3であり相手の心の存在を確認するより後だ」と 言ってます。相手に自分がどう思われているか?を考える 段階で初めて自分の心を自分が確認する必要が出るから…とのことです。
パフォーマンス
だいたい個々のトーク内容はこんな感じですが,このイベントは 毎回パフォーマンスがあります。今回も3つ程ありましたが,どれも 錯覚を喚起するような部分があり刺激的です。一つ思ったのが 画面に映像を撮すのですが,会場のロビーとかを撮して,そこに パフォーマーを座らせていたりして,その直後にステージに そのパフォーマーが出てきたりすると,こっちは映っている 映像が今なのか過去なのか激しく混乱します。 おもしろかったです。
まとめ
それぞれのトークの後は集まって座談会だったのですが, まぁ内容は上記で話したことの更に細かい点や,会場からの 質問等です。詳細は省略します。日記にも書きましたが,普段わたしが考えている内容と かなりかぶるので,毎年楽しませてもらってます。すでに 読んだり聞いたりした内容でも,新鮮に聞えるのは,やっぱり それも確からしさなのかな?とか思ってしまいます(笑)。
非常に楽しいイベントで,来ている客もいろんな年齢の人がいて, こういうことを興味がある人が結構いるのだな…と思うのも 楽しいです。来年のテーマが何かはわかりませんが,たぶん行くだろうなぁ…と 思っております。
こういう話に興味がある方は,行ってみたらいかがでしょうか?。