私の病気について。その2

二年目を無事通過

今月手術から丁度2年経ちました。二年後のその日,検査ということで, いつも通りのCT,X線,そして血液検査の三つを終え, そして昨日結果を聞いてきました。 異常・異変は特にないということで,二年目は無事通過。次の検査まで 落ち着いた日々を過ごせそうです。
癌の手術後の心境としては 一年後に簡単な状況説明 一年半後に感じていた死のリアリティについて書いてます。 特に最初の一年は,冷静じゃない部分も多かったし,いまでも多少ありますが, あまり病気について語ると,また病気を呼び寄せてしまうのではないか?と いう,まぁ迷信めいた考えですが,そういう心理状態でもあったので, 思うことをそのまま書いたという感じではありません。現在でも, 書きたくないことというのは幾つかあるのですが,それでもだいぶ再発への リアリティが下がってきて,落ち着いたところもあります。それで, また今の心境から思うところを書いてみたいと思います。

一言で癌といっても

癌というのは実は非常にバリエーションの多い病気です。異常に 分裂し増えていく腫瘍が癌です。悪性というのはそういうことです。 では良性の腫瘍はというとおできとかそうです。ある程度増えて それ以上広がらなければ,命には影響ありません。おできとか 瘤とかほくろとかが,それ自体たいした悪さがないように, 癌も初期の小さい頃は身体にはあまり影響しません。癌自体が 体に悪いものを出すのは稀で,増えて止まらなくなり,その結果, 体の他の臓器の働きを阻害するから危険なのです。
臓器に悪さをするといっても臓器は様々ですから,病状も様々ですし, 異常な細胞ですから,どこの細胞が異常化するかによって性質も 異なります。基本的癌がある程度大きくなり,切り取れない位 広がるった場合などを末期といって手遅れのようにいいますが, そこからどれくらいで死ぬかとかも癌により様々,人により 様々のようです。
そんなですから,治療の仕方も様々です。ある部分に限定して存在して 他に広がってなく,取り出せる場合は取ってしまうようですが, その前後に抗癌剤を使う使わないというのも癌によって違います。 というか,抗癌剤が効く効かないというのも癌によって違います。 今は放射線とかその他にも,いろいろ治療方法はあるようですが, どれがどれくらい有効なのかは良くわかりません。
というか,わたしも自分に関係ある癌についてしか詳しくは 調べていないので,いい加減なことを書くのは止めましょう。
ただ,自分の場合は膵臓ですが,この春にわたしの母が子宮癌になり 手術しました。子宮癌の場合は抗癌剤を使うようで,現在は抗癌剤を 使ってます。わたしがその様な科学治療を行っていないことや, また手術自体のダメージがわたしほど大きくないとか,やっぱり 癌によって全然違うなぁという印象は強く持ちました。

自分の場合

以前膵内分泌腫瘍というのがわたしの病名とは書きました。 ですが,進行度とかについてはあまりはっきり書いてません。 わたしの場合手術後の病理結果では, 明らかな転移はありませんでしたが,静脈内に腫瘍が侵入していて, 血管経由で転移がありえるという風に聞いてます。膵臓の場合遠隔転移で 多いのが肝臓(肝臓はあらゆる癌の転移場所として多いです)と肺で, そのため,わたしの検査も腹部と胸部が主となります。
内分泌腫瘍は患者が少ないので,イマイチデータとして手にしにくいので, それよりも何倍も恐ろしい膵臓癌について調べたりしてますが, だいたい肺への転移は1年とか早い時期が多く,肝臓は2,3年位が多いと いう風に読み取りました。手術後2年というのは,まだ安全な時期とは いえないのですが,もしかしたら肺への転移の危険性は減ってるのかも 知れません。勝手な思い込みでは3年を越えると,後の2年はだいぶ 危険性は減るのではないか?と思ってますが,そもそもすぐに再発しないと いうことは,再発してもゆっくり進む可能性が大きいと,勝手に思ってますので, そういう意味でも,再発してすぐに死ぬとかいう危険度はだいぶ 下がっているのではないか?という気がしてます。

癌との戦いとは

上に書いた通り癌というのは人それぞれです。それゆえ癌と戦うといっても やっぱり人それぞれでしょう。わたしは手術後2年間,結構辛い気持ちを 味わっていますが,癌と戦っているか?といわれると良くわかりません。 数ヵ月に一度,病院にいって検査を受けているだけといわれればそうでしょう。 わたしの母親の方が手術後抗癌剤治療を続けていて,辛そうですから, 戦っているように見えます。でも,実は抗癌剤の副作用の辛さがそのまま 効果であるとは限らないという話も聞きます。 もっとも本人は効果があるからきつくても頑張れると思ってる様に思います。 抗癌剤がある程度の効果が見込めるのは確かでしょうけど。
膵臓癌は有効な抗癌剤が少ないためか,腫瘍摘出後の予防的な 全身化学治療(抗癌剤治療)は行わない場合も多いようです。抗癌剤を 使うケースもありますし,また摘出ができない場合は, 抗癌剤が治療になるようです。
化学治療がなければ,手術後は検査以外なにもありません。もちろん 手術の傷の痛みはあるし,癒着のせいかいろいろ支障がでたり, あと体質が変わったりして苦労は多いのですが,これらは別に癌にならない ための苦しみや努力ではないので,癌と戦っているというよりは, 単に傷を治している過程のようにしか見えません。わたしの場合, 腸とかの癒着があるのか,御通事が悪くなったり,鼠径ヘルニアぽく なったり,後は体重が15キロ位減ったので,冷え性になったり,いろいろ ありましたが,やっぱり癌の再発との関連は感じられません。 つまり癌にならないようにすることは明にはなにもないのです。
実はこれが結構辛い。再発したら,完治は難しいと良くいわれますが, 再発を防ぐ手段がまるで見えません。ただ再発におびえて待つしかない わけです。苦しくても抗癌剤でも投与されていた方が,なにか戦っている 少しはいい方向に向かっていると思えるかも知れません。
良く,癌患者を騙して高額な健康食品を売りつける悪徳な業者がいますが, こういうのに手を出す人の気持ちもわかります。そうすれば,何か 戦ってる気になる。高いものほど努力した気になります。確かに それで少しは心の平安が訪れればいいのかも知れません。でも 結局は効かないのだし,それで残された家族が経済的に苦しい想いを するのであれば,単なる安心料としても程々にしておくべきのように 思います。
この様に癌との戦いはわたしの場合,主に心理的なものです。 それでも,傷の痛みが酷くなれば,癌の影響か?とか思い込んで, 折れそうになりますから,身体状況と無関係とはいえません。 あと癌の原因がはっきりしている場合は,その原因に触れないように するというのもあるでしょう。わたしの場合ははっきりとはわかりませんが, 飲酒の量が多かったのと,膵臓であったことから,お酒が悪さを していた可能性も高いので,お酒をほとんど飲まないようにしてますが, これもちょっとした願掛けなのかも知れません。
あと,科学的な根拠があるかというとわかりませんが,薬が無い以上 自分の免疫力だけが頼りなので,疲れを溜めない,体を冷やさない, ストレスに感じることをしない等に気をつけてます。実際血管の中の 癌細胞は白血球によってほとんど破壊され,それをかいぐぐったものが 転移を起こすので,白血球の免疫力は重要な気がします。 また食べ物も片寄ったものを食べない。繊維やビタミンを たくさんとる。いろんなものを少しずつ食する等を気をつけてます。 体にいいといわれるものを大量に取るほうがかえって悪いように思います。 これらは効果があるかはわかりませんが,病気でないにしても, 健康にはいいことだと思うので,やっているというのもあります。
癌と戦うというのは,手の施しようが余りないという意味では, 誰にでもやってくる老化による死みたいなものかもしれません。 そうであれば,本来はもっと先に直面する戦いを,今練習代わりに やっているようにも思います。

癌が増えている?

これまで,自分の病気の経験に照らし合わせて癌を語ってきました。 話を終わる前に,ちょっと余談で他のことなどを。
最近,以前より自分の周りで癌にかかる人の話を良く聞くように なった気がします。気のせいなんでしょうか?。だいたい聞くと 人間ドックで見つかったということで,その後に手術等を受けてます。 わたしの母もそのケースです。
癌が増えてるようにも思いますが,どうなんでしょう?。ちょっと前に 日記に書きましたが,以前だったら他の病気で死んでいたのが, 他の病気(感染症とか)にかかっても死ににくくなったので,結果的に 難病である癌にかかって死ぬという気もしてます。その他に,検査の 精度があがって癌がすぐに見つかるようになったという気もしてますが, では,昔だったらこういう人はどうなったんでしょう?。
癌だとわかって手遅れで死んでいたのか?。老人とかの場合他の病気で 死んでいたのか?。この辺は良くわかりません。もしかしたら,いま 手術で切除されて完治した癌患者の中には,実は悪性ではなかったとか, 切らなくても死ななかったというケースがごく僅か混ざっていたり しないか?という気もします。
わたしが手術前に癌である疑いをかけられたときに,「100%癌かは 切らないとわからないとわからない」といわれたので, というケースを考えました。(3)〜(5)は痛い思いをします。(3)だと ラッキーですが,(4)だと痛いだけ損です。(5)は実は痛い思いをしただけ ということです。(1)と(2)はその時は痛くはありませんが,助かるかどうかを 先伸ばしにして,かなり落ち着かないでしょう。これらを比べてわたしは 切ったわけですが,とりあえず癌の疑いが高いといわれているので,(5)じゃない としても(3)か(4)かはまだ確定してません。
今は検査で癌が初期の状態で見つかるので,癌かどうか曖昧なまま 手術をしてるケースがあるのではないかと思います。でもだからと いって,本当にはっきりわかるまでほっておいたら多分手遅れな ケースも多いでしょう。(1)を選択する人は稀なのかもしれませんが, 実際癌じゃなかったというのはどれくらいあるのだろう?と時々思います。
そうだとはいっても,わたしはその不安には耐えられないので,切ることを 選択するでしょうし,他の人にも覚悟の上で切られることを進めます。

次へ向けて

というわけで,手術後二年ということで,最近ずっと思っていた事を 書きました。だいぶ前に思っていたけど,縁起かつぎで黙っていたことも 結構書きました。また半年後,一年後の検査の後には何かを書くかも知れません。 その時はまた違う心境になってるのだろうな,と少し思います。 体の痛みを感じたり,いろいろ不安になる日々がまだまだ終わるとは 思いませんが,少しずつ心穏やかになっているように思います。
そして心穏やかに過ごすために家族がいかに助けになっているか, 感謝を強く感じております。

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'08 Sep. 17th


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