わたしが日記の方で何回か取り上げていたCDの輸入に関する著作権法 改正の動きについて。いままで取り上げたのを順に挙げると, 2月16日, 3月17日, 4月5日, 4月19日 という風に取り上げてます。
さて,この問題に関する シンポジウムが今日(5月4日)ありました。基本的には反対側の シンポジウムで,司会はピーターバラカン氏,またこの法案に反対している 民主党の川内博史衆議院議員,その他,評論家,CDのディストリビュータ, アーティスト,レコード会社(ただしインディーズ)あたりの人があつまり 2時間半のトークをしました。ロフトプラスワンは立ち見でも入れないくらい 盛況でした。
さて,今回の主旨は,この問題を知って欲しい…というのが 一番のようでした。わたしが上で,以前取り上げたのを改めて リンクしたもの,「以前からこの問題はあったのだけけど…」という 意味を挙げてるのですが,現状,この改正案の問題を認識している人って いうのは,業界や議員も含めて非常に少ない…ということです。 なので,この会のメンバーは基本的には法案の成立に反対なのですが, 今回の会は,その反対運動と言うよりは,現状をみんなに知って欲しい…という 集まりのようでした。ただし,若干バイアスはかかってます。
問題自体はわたしも認識しているので,そこまでショックな内容はなかったのですが, 改めて,今回の改正案がそのまま成立する危険性を感じました。まぁそれと 川内議員の口のうまさはさすがに議員だな…とも思いましたが(笑),彼の 話を聞く限り,非常に今回の法案はアンフェアです。というのは, 今回の法律改正の主旨がそもそも「邦盤の還流防止(つまり日本のミュージシャンの アルバムがアジアで安く売られているのが日本に再流入するのの防止)」と 「著作権保護(海賊盤の防止)」を銘打っているのに対して,洋盤の平行輸入盤の 防止が出きるというのは,明らかに逸脱の規定と言えるからです。つまり お題目に対して,明らかに逸脱している規制を加えているわけで, その内容の是非はともかく,お題目と内容が一致してないという意味では 間違った法案だと言えます。つまり川内議員が言うには,文化庁がこの法案を 関係各所に説明するにあたって,平行輸入盤を規制する内容になっている…と 言うのをちゃんと説明していないということで,決議権がある議員自身が だまされているというのです(議員はともかく役人がだまされるのはどうかと おもいますが…)。
その影響の大きさを表わす数字として,日本のCDの販売枚数が出ました。 日本の邦盤(日本制作,日本販売用)は年間1億7千万枚売れているそうです。 それに対して今回の法律で本来規制の対象となるアジアからの還流(逆輸入)盤は 60万枚だそうです。また日本でつくられている洋盤(海外制作,日本販売用)は 年間7千万枚,そして平行輸入(海外制作,海外販売用)は6千万枚とのことです。 つまり本来は60万枚の規制をするはずの法律が,6千万枚の方の規制も 可能になっている。これは法律つくる理由の説明が間違っていることになります。
そういうちぐはぐな目的と内容の法案ですから,施行された場合に何が 起きるのかがイマイチ不明です。わたしが一番危惧しているのは,平行 輸入盤の廃止に伴い,国内で売っていないCDの輸入がなくなってしまう ことですが,その危険性は十分にあるとのこと。たしかに国内盤がない 海外のCDは輸入規制対象外ですが,税関はいちいちタイトルごとに規制できないので まとめて没収することが可能とのことです。また個人目的のCDも, 配布しない…という証明ができない限り没収可能だそうです。もちろん その正否については裁判になるわけで,とてもやってられる内容では ありません。
上記は,結構最悪のパターンであり,実際はそうなるかどうかはわかりません。 実際文化庁に言わせると,アメリカ5大メジャーは輸入規制をしないと いってます。しかし一方で文化庁のパブリックコメントには「平行輸入を 憎む」というコメントを残していて,実際に法律が制定されたら,どうなるかは わかりません。わたしの頭の中では,実際にこういう法案が制定されて, これをアメリカのレコード会社が行使するのが,実際に彼らに取っても 利益があるのか不明…というのはあるのですが,たしかに,彼らに すべての選択権を与えるのもどうかと思います。
今回話題になっていたのは,輸入権というのは結構行使している国というのは すでに諸外国にあるのですが,日本は再販をやっていて,再販と輸入権を 両方でもっている国というのは他にはなく,過剰な規制だということです。 また日米の租税協定というのがこの夏始まるようで,外資系の日本企業は 日本でもうけた利益をアメリカの税金に納めることができるそうで,それを 合わせると,ますます日本の美味しい市場でアメリカ資本が利益を得ようと いう構図が見えかくれします。
公正取引委員会も再販制度の廃止を勧めているし,今回の立案に先だって 行われた査問会では平行輸入盤への影響がないように慎重にすべきと 言っているのに,今回の法案はそういう内容になってないとのことでした。
わたし自身の意見は,せっかくこれだけ世界中のCDが手にはいるような 状況は変えたくありません。安く手にはいるってこと自体にはそこまで こだわらないので,もし国内版がある平行輸入盤が禁止されても運用に よっては影響が出ないのですが,やっぱり影響が出る恐れがある以上, その辺をはっきりと法律に記述してもらえないと不安です。輸入権を つける変わりに再販制度をやめたらいいのでは?という案もでましたが, 輸入権の過剰な行使は輸入盤縮小につながるので,どちらかというと 現状の方がいいように思います。
もちろん,平行輸入をなくし,国内盤のみをうるということで,プロモーションとかが もっと盛んに行われる可能性もありますが,この辺の議論は今回は 出ませんでした。でも平行輸入が始まる以前の日本の状況を 思い出すと,そんなに洋盤って売られてなかった気もして, 実際どうなのだろう?と思います。それに現状メジャー自身が 平行輸入を行っているのであれば,平行輸入盤が多いので, プロモーションが手薄になっているという現状ではない気がします。
いずれにせよ,一番の問題は,今回の法案が平行輸入盤の規制につながる というのをほとんどの人が認識してない点です。マスコミもほとんどとり 挙げてません。ですので世論がほとんど議論してません。こういう状態の 方が危険です。今回多少の取材が来てましたが,きちんとラジオやTVで 放送されたのでしょうか?。その辺が気になります。いずれにせよ, 法案の審議まであと半月余り。もっとこの話を取り上げて,盛り上げる べきだな…と思いました。