現在の人間社会,世界情勢は西洋が作り出したシステム(文化,経済, 世界観,宗教,国家観等)に振り回されています。 グローバリズムとか言って一般化された概念の様に言おうとしてますが, 西洋が作り出したシステムや考え方であることは既に明確であります。 おそらく国家単位で見たら,この西洋のシステムに影響をうけていない ところは地球上には無いのではないかと思われます。 以前は,このシステムが世界を席巻しているのは,そのシステムが 優れているから…,いやそれこそ真実であるからという人もいましたが, さすがに昨今の経済破綻や国家紛争の多さからして,別の道を探す 試みもはじめられていて,真実だ…という人は少なくなってるように思います。
それでいても我々日本人の社会も大きく影響をうけています。 日本は約100年前に急速に日本独自のシステムから西洋システムに切り替え アジアの中でもっとも(少なくとも経済的には)成功した国になってます。 日本の成功はそれまで有色人種にあった白人へのコンプレックスを払拭する ものとしてアジアやアフリカの中では好意的に見られることもあります。 そう,日本が成功するまでは「西洋が成功しているのは人種的に 優れているからだ」…と信じていた人達もたくさんいたのです。
現在そういう考え方をする人は少ないと思います。しかし実際は現在でも 西洋の人達の決議により国際的に多くのことが決まっています。 わたしは以前からなぜ西洋はこれだけの繁栄を産むことができたのか?…というのを ずっと不思議に思ってます。簡単な一次回答として「西洋で産業革命が 起きたから」ということができます。しかしこれだけでは,「なぜ 産業革命が西洋で起きたのか?」を説明できません。この件については 現在中世の西洋について書かれた別の本を読んでますので,読了後 また書きたいと思います。
さて,そういうなかで年末NHKで「映像の世紀」というドキュメンタリー 番組をやってました。この番組自体は数年前に制作されたものの再放送です。 映像記録がされるようになった19世紀まつから現在までの映像を とにかく集めたもので,主に国家の紛争等の歴史を綴ってました。 西洋について関心をもっていたわたしには,非常に刺激的な番組だったので, 思ったことを書きます。
そもそもわたしは高校で西洋史を勉強してないので,もしかしたら勉強した人には 常識だったのかも知れませんが,とにかく驚いたのは19世紀から20世紀前半の ヨーロッパは紛争だらけだったことです。 植民地があまり無かった中世ならともかく,外で多くの搾取を行い, ヨーロッパはそれなりに豊かになっていたと思っていたら,貧富の差は 激しい,民族間の紛争や迫害も物凄く多かったのだと思います。 そもそもヒトラーが相当の悪人の様に現在言われてますが,ユダヤ人の 虐殺はともかく,他国に不当に侵攻するくらいは,当時のヨーロッパでは 当たり前のことだったようです(ユダヤの迫害もスペインとか別の 国でも古くから行われていたようですが…)。
特に西ヨーロッパの東ヨーロッパに対する扱いは相当きつかったように 感じました。日本人から見ると似たような人種であり,似たような宗教観を もっている人達が民族ごと虐殺されたりする様はちょっと違和感を 感じます。日本は国内での紛争は戦国時代で終了してますので,なおさら 不思議です。
もっともヨーロッパの場合,似たような民族と言っても,言葉が違っていたり してあまり同胞という意識がないのかな?と思いました。それに外国に 移住しても自分達の出目を非常に意識しているという気がします。 ユダヤ人とか国がなくても意識してますし…。
しかしあれだけ同じ地域で紛争をしているのであれば,西洋が現在 提示しているシステムをそれを前提としているのではないか?…と思います。 だから国家間争いが絶えないのか…。そもそも古代ギリシャやローマを 見ても,ある民族を征服し奴隷として扱うことによって成り立っていたわけだし, そういう攻めあいが当たり前だったようです。それは全然古い話になって いないわけです。
個人的には相変わらずなぜフランスが力をもっているのかが 分からなかったのですが(^^;),ソ連が力をもっていく過程が おもしろかったです。20世紀のはじめのヨーロッパではイギリス等が 力をもってましたが,大戦の被害を受けてなく且つ巨大な土地をもつ アメリカが第二次大戦から力をもちます。知らなかったのですが, 第二次大戦時はアメリカ(というかルーズベルト)はソ連を支援していたんですね。 武器などを供給して。それによりドイツや日本と戦ったわけです。 戦争が終わると一転してアメリカとソ連は犬猿の中になりますが, 核装備で追い付きます。もちろんアメリカがソ連の核装備数を把握 していたわけではないようですが,とりあえず実験に成功すれば, 追い付いたと思い込むわけです。そして宇宙への進出でアメリカを追い抜きます。 自信を失ったアメリカはソ連を対等な敵国と思い,うかつに 手を出せなくなったわけです。
アメリカが最初支援して,あとで敵となるパターンはフセイン, ビン・ラディンと同じパターンです。フセインを育てたのはアメリカだと 言われてますが,似たようなことをやって最初に成功したのがソ連だった わけですね。どうりでみんな真似するわけだ…。北朝鮮が核をもちたがるのも ソ連がかってそれで成功したからと思ってるのでしょう。 対等になったときに交渉してバランスをとれば,そこで一流国の仲間入りな わけです。
この辺の流れを見ていて思ったのは,最近「脱アメリカ依存」が日本で 叫ばれてますが,かなり大変だということです。日本も軍備すればいい,と 言う人も多いんですが,下手に軍備を拡大して脱アメリカとかいうと フセインみたいになってしまう可能性もあります。 「ヨーロッパができてるから」と言う人もいますが,ヨーロッパは そうやって多くの血をながしているし,おそらくその姿勢自体は いまも変わってないのかも知れません。東西ドイツの話も出ましたが, アレを見ると戦後の日本とドイツを同列には語れない…と思いました。
つまるところヨーロッパの国家のように世界のメンバーになるのは 望ましい…と思うことも多いんですが,そうなるまでにはおそらく 何十年もかかるし,そこでいろいろなことが起きるだろう…ということです。
おそらく日本が「脱アメリカ依存」をする最大のチャンスはバブル期だった のかもしれない,と思いました。少なくともあのときアメリカは日本を 驚異に思ってましたから。しかしバブル期の日本はそういうことを 考えてませんでしたし,政治家もおそらくそれ以前に「脱アメリカ」を 模索し失脚した田中角栄を見ていたので,びびったのかも知れません。
それにしてもたかだか半世紀前のヨーロッパの流血騒ぎを見てると, どうもパレスチナで起きてることもそんなに異常に見えないところが 怖いです。
なかなかおもしろい番組でした。最初の2回を見損ねたのが残念ですが…。 ヨーロッパについては,しばらく興味があるのでしろいろ調べてみようと 思います。