20世紀価値観の崩壊(04/11/14)

21世紀に入って4年経ちましたが,現在急激に20世紀的価値観が 崩壊しているような気がします。現代の日本人はいろんな情報を 得て,いろんな立場の意見を聴くことが可能です。もちろん 自分の価値観や社会の大勢が構築している価値観からハズレることが 困難な人が多いのでしょうが,それを「どこか違う」という風に 感じている人は自分の努力でいろんな価値観を覗き,そして物事を 相対的に捕えることが可能でしょう。

そういうテクニックを使えば例えば「社会で偉くなる(地位や名声)のが 一番とは限らない」とか「金が豊かさをもたらすわけではない」という 視点を持つことは可能ですし,グローバル経済が世界に富を分配 するわけではない…ということにも薄々感じることは可能でしょう。

しかしそれでもいまだにほとんどの人に妄信的に信じられている いくつかの価値観があります。しかし冷静に考えると,それらの 価値観は近代から20世紀にかけて作られたものが多く,つまり 歴史が浅いこと,そしてその価値観がどうも21世紀に入って ぼろが出てきている,そういう状況が最近あるように思います。 その価値観とはなにか?…。物事を相対的に考えることが出来る人でも, それは正しい事だろうと思っていることです。

いくつかあげてみます。「自由」「平等」「民主主義」「真実」などです。 もちろんこれらの価値観がおかしい…というつもりはありません。 しかし「地位や名声」とかがいい面と悪い面があると考えられるのに 対し,ここであげた価値観はほとんど否定的に言われるのを 見たことがありません。しかしやっぱり無条件に肯定されるのは すこし気持ちが悪いのです。

「自由」は現在ほとんど最優先に尊重されている価値観で,言論の自由, 国内移動の自由などは確か憲法で保証されてますし,日本以外の多くの民主国家でも 保証されてます。しかしそれゆえに公共の利益や社会の安全を確保出来ない という状況が現在生まれています。子供への悪い情報を制限したり, 危険地域へ飛込むマスコミを抑えることが出来ないというのも「自由」が 優先されているからです。

「平等」もほとんど否定されません。平等を否定すると「平等で なにが悪い」とたぶん誰もが思うと思います。しかし平等を優先すると 才能や努力を無にすることがあるし,平等という価値観は逆に「人は 同じでなければならない」というきつい脅迫感を誘発することになります。 また一部の権力者の判断で秘密理に進める政策等に対して, 民衆が口を出して駄目になることもあり得ます。

「自由」や「平等」という概念は実は「民主主義」の根幹になっていて, それゆえに現在は民主主義こそが理想の国家思想と思っている人は 多いでしょう。アメリカは自由主義民主主義を世界に広めるという 名目で中東を攻撃しています。しかしわたしは今回のアメリカの 大統領選を見ていて,民主主義の悪いところが露呈したように 感じています。さらに民主主義だから…というわけではありませんが, 現在の日本やアメリカの民主主義は決して誰でも為政者になれる制度, というより,一部の富裕層が民衆をうまくごまかしながら富と権力を 継承していく…というに運用されているように見えないこともありません。

実はわたしは民主主義よりも賢人政治の方が国をうまく回せるのではないか?, と思ってます。しかし実際面で言うと賢人政治は独裁者を産み出す可能性が 高いですし,ずっと賢人が政治を引き継いでいける可能性は低いです。 しかし過去の歴史を見ると,ある王様が国を治め,国が腐敗すると, 新たな王が革命を起こし国を変える…という制度でしたから, ある意味賢人政治に近い部分もあった様に思います。しかし現在のように 世界が狭い状況では,革命は他国の干渉を受け,結局は賢人ではなく 強国にうまく取り入った人が力を持ったりします。そういう 意味では賢人政治は現在うまく回らない状況ではあるのですが, だからといって,民主主義がもっとも優れた制度か?…というと ちょっと疑問です。

「真実」というのは「物事には正解がある」という 考え方です。自然科学もある答えが自然界にはすでにあって それを探しているという価値観です。しかし これは本当に正しいのでしょうか?。どうもわたしは これは西洋的な一神教から生まれた概念のような 気がしてしょうがありません。そもそもこの「正解がある」と いう考え方はやっかいで,その前に挙げたいくつかの概念も 要はこの「正解」という概念から利用されているものです。

現在「多様性」が語られるようになってますが,実態としては うまく回ってません。口で多様性が必要といいながら,実際は 「世の中には真実がある」と思って人は動いているのですから, 結局のところ一つの物差しで比べたりし,認めているようで 認めてないような気がします。

しかし書いてきたようにこれらの「自由」「平等」「民主主義」そして 「真実」という価値観はそれによる弊害もあり,実際は正しいと いうよりは,そっちの方がマシだろう…ということで 選ばれているだけのような気がしてきました。 そして現在はいろんな変化によりうまく噛み合わさっていた その価値観が,どうもうまく回らずにおかしくなって いる気がします。もしそうであれば,それらの 価値観を崩さないと現在の状況は変化しないのかも知れないし, それ以外にも自分達が無条件に信じている価値観とは なんなのか?を掘り出して見ることが今こそ求められているのかも 知れません。

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'04 Nov. 14th

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