政策の目的
世論というのはTVやマスコミ,そして今だと インターネット等でも形成されますが,基本的には 直接行政(官僚)や立法(議員)では無い人が語るものなので, あくまでも無責任なものになります。しかし意外に 何かが起きたときに世論の出す答えというのは すばやく,逆をいうと十分に議論・考察されないまま 形成されます。つまり熟考せず,反射的に形成される ともいいます。
もう少し具体的にいうと,政府が何かをするときに, その目的を根本的に理解しようともしないし, 一方で政府もそれを説明しようとしません。 実はこの事は,わたしにはかなり不満で,目的も わからないのに,意見しにくいというのがあるのですが, 意外に世論はかってに意見をいうようです。まぁ 確かにその政策がどの様に自分に影響が出るか?, 例えば税率アップとか規制とかが,どう影響するかを 考慮して文句いうことは可能です。しかし世論は 自分に関係ないことにも文句をいいます。一番卑近な例で いうと,例えば天下り…とかいうのは自分の業界と 関係なかったら,関係ないはずなのに,なぜか世論では 悪とされます。しかしその場合,天下りが好影響と 悪影響を綺麗に整理するようなことはされません。
さて,こんな事を書いたのは別に天下りを正当化するとか いうのが目的ではありません。わたしは天下り 問題は過剰に反対する世論の方に辟易してますが, 肯定もしてません。そうではなくもっと大きな話, 例えば「小さな政府」や「常任理事国入」とか 「規制緩和」とか,そういうここ5年あまりの政策が もともとどういう思想で作られているか?…ということが あまりに不明瞭なのに,賛成する人と反対する人が いることに違和感を覚えているのです。とりあえず 安保問題は置いておいて,経済,産業の政策について, なんのためにやろうとしてるのかが,どうも誤解されている 様な気がします。
「小さな政府」というのは,基本的にアメリカ型を 模倣する方向で進んでいます。しかし一方でアメリカは 貧富の差が激しい社会です。確かに企業は国際的に成功し, 成功者は大金持ちになります。しかし一方で国内の工業は 衰退し,農産物を外国に押し売りしたり,軍需産業によって 引っ張っていってるような印象があります。 確かに企業は海外に工場を作り,現地の労働力でものを安く作り, それを売ることで儲けることは出来ますが,国内の 雇用は作り出しません。その企業に投資してる人は, それでも儲かりますが,それまで労働者だった人は 失業しますし,技術も海外に流れます。
いうやってみるとアメリカ型の小さな政府はあくまでも 資本家の保護のように見えます。ですから,日本が それを追従してるということは,日本も資本家の保護に 力を入れているということかもしれません。もちろん, 企業がつぶれれば多くの失業者が出るし,企業が元気だと その周りの産業が潤うというのもあります。しかし,そこに 外国の労働力が入ってくると,一部雇用は外に流れることに なります。
わたしは,今政府が目指すべき施策の方向性は雇用の確保と 技術力の維持だと思ってます。そしてその後に無駄遣いを 無くすことや自然保護等,あと国民の安全性等があるように 思います。
日本は資源も土地も無い国です。しかしここまで国力を 維持できているのはひとえに技術力を持っているからだと 思います。技術力がなくなったら,あっというまに 貧しい国になるでしょう。
実は雇用の確保や技術力の維持…という観点だけでいうと, 公共工事とかはそんなに悪いものではありません。談合だって 無駄に外国に雇用を取られないためとも言えます。 ただ,わたしは土建関係の公共工事は,狭い日本をセメントで 固めすぎる…という自然保護の点で異論がありますし, もっと別の分野の技術力にも力を入れて欲しいというのも あります。
むしろ昨今の大学や研究機関の独立行政法人化とかの方に 危機感を感じたりしてます。業界の保護…というのは, わたし自身はそんなに悪いこととは思ってません。ただし, 保護する業界は戦略的に選ぶべきだとも思ってます。
最近の投資ブームは国民に資産家的な発想をさせることを 促しているように思います。どうやったら個人が儲かるか だけではなく,企業や国が儲かるか,まで考えている人は いるでしょう。しかし経営的なセンスだけで国策をみると, 結果的には衰退することになりかねません。なぜなら経営者は 自分の会社が儲けることを優先して考え,国全体の産業が 発展することはなかなか考えないからです。無駄遣いがあろうが, 無駄遣いがあって食べられるものや,試しに作れるものが あったりするわけで,どういうサイクルでお金が回って, その結果何を産み出しているか?…というのを考え出すと, 実は政策がおよぼす影響は決して単純なものではないはずです。
話が拡散しましたが,最初に言った通り,施策に対して 批評する場合,その影響や目的を十分に考えると,実は そんなに簡単に答えを出せるものでもありません。無駄遣いが 悪いのか,癒着が悪いのか,考えれば考えるほど 複雑な問題です。しかも,単純に物価が上がる下がるだけじゃなく 長期的に国が栄えるためになるか?…ということで 考えるととても難しいです。
しかし,敢えて言うとわたしは,雇用問題と,さらに その将来のために技術力の保持をもう少し,目的として 欲しいと思います。そう考えると,決して小さな政府がいい政府とは思えません。