1bitディジタルとは?

発端

RinRin王国さんが「1ビットオーディオって結局何 なの?」と書かれてるを見て,あぁ,これって分かりやすく 説明するのって難しいよなぁ…と。で,ここにあるように, めっつぉさんが「『上がる』か『下がる』かだけ」 と書いているが正しいのですが,ここはでしゃばって, もう少し詳しく書いてみますか…という気になりました。 とはいえ,わたしも一応1bitが出てきたときに勉強したものの, 実際にそれを扱っている人間ではないので,間違って理解してる 可能性もあります。その場合はごめんなさい(_o_)。

PCM

まず,普通のディジタルの話をします。普通のディジタル(PCM)が どうやって音をディジタル化してるかというと,音(波)はオーディ オ機器の中では電気信号になってますので,ある一定周期 (=サンプリング周波数)で電圧を測定し(=サンプリング), その電圧を16bitとか24bitとかで表現する(量子化)ことで ディジタル化してます。

ΔΣ変調

ところが,この連続信号をディジタル化する処理装置(AD変換器)の やり方に,上記の通りにやらなくて,PCMのサンプリング周波数より, 遥かに細い周期で,1サンプル時間過去に対して, 現在が上がってるか?下がっているか?だけを1bitで表現しする というやり方があります。 正確には,積分器を用意して,1サンプル過去の信号より, 現在の信号が大きければ,1bitだけ加算する,小さければ, 減算するというのをやります。1サンプルで1bit分しか積分器の 出力をいじれないので,大きな電圧の変化に対応できないように 思いますが,サンプリング周波数をどんどん細くすれば, その間に何回も積分値を変えられますので,値の変化に 対応できます。
このやり方をΔΣ変調といいますが,実はΔΣ変調の 出力は,いろいろなやり方をするとPCMの信号に 変換できます。実はPCMのAD変換器を作るよりも, ΔΣ変調のAD変換器を作り,その出力をPCMに変換する方が, 遥かに安くて高速なAD変換器が作れて(この辺は回路の 問題らしいので理由はしりません)しまうらしく,現在の AD変換器はほとんどΔΣ変調器から作られているそうです。

1bitディジタル

ΔΣ変調した信号をわざわざPCMに直しているのであれば, じゃぁΔΣ変調の信号自体をそのまま記録してしまった方が, 精度がいいのでは?…という発想で生まれたのが 1bitディジタルです。

なぜ1bitの方がアナログに近いのか?

1bitディジタルの方が処理が少ないので,元信号に 近いというのは,話としてはわかります。しかし更に 1bitディジタルはアナログに近い…とも言われます。 その一つの根拠として1bitディジタルはDA変換器が 不要です。ディジタル信号を,そのままスピーカに 突っ込めば音が出ます。正確にはローパスフィルタ( 低い周波数しか通さないフィルタ)をかけると, アナログ信号に戻ります。人間は高い音は聴こえないし, スピーカも再生周波数の上限があるので,そのまま突っ込んでも 音になるわけです。

1bitディジタルと空気振動

ここで,ちょっと「それは話が違うだろう?」と言われる 気がしますが,強引に1bitディジタルと空気振動の 様相を比べてみます。
音である空気の振動は「波」です。波というと,サイン波の 波形のような上下に振動するの(横波)を思い浮かべますが, 実際は音は,進行方向に振動する「粗密波」です。 地震でいうと縦波…ってやつ。音が前方に進んでいると すると,空気の分子は前後に揺れています。
この様相を分かりやすく説明するために,トムボーイというバネのおもちゃを 引き合いに出しましょう。このおもちゃ,触ったことが ある人だったら,想像できると思うのですが,このバネを 机の上に横方向にびろ〜んと伸ばして置いて,片方から 手で「ポン」と押すと,押したところのバネが縮むのですが, すぐに伸びて,更に先の方が縮んで…と,縮んでいるところが, 前方に進みます。空気が進行方向に振動する粗密波…というのは, この振動の様相とほぼ同じです。

横波と縦波

更に書くと空気は分子で出来てるので,ある程度分子同士が 近づくと反発します。離れると吸引されます。これが 空気が圧力を持つ要因です。
ここで,バネの金属があるかないかで,金属があるところを 分子がある,空気がないところを分子がない…という風に, 見ると,このバネは空気が音を伝える様子を,よく表してる といえます。
更に,先ほどのバネのおもちゃの動きを観測するのに,全体を 観測せず,ある地点だけを見つめて,そこにバネがあるかないか? だけを観測しても実は(途中で減衰とかしてないのであれば) そのバネを伝わる信号は記述できます。
さてここまで書くと,ピンとくる方はくると思いますが, 実際に空気を伝わる音波は究極にミクロに見ると1bitで 表現できるということになり,そしてそれは1bitディジタルと 似てるということになります。

D級アンプ(PWM)

さて,今書いた「1bitディジタル≒音波」は突っ込みどころ 満載です。実際1bitディジタルは「ある」「ない」ではなく 「高い」「低い」ですので,粗密波の圧力が「高い」「低い」 という方が,正しいでしょう。実際の1bit信号は, 音波の電気信号の電圧が高いところは1bitのパルスが密に 詰まっていて,低いところは,粗になっています。 従って,この信号をスピーカに入れると,密なところはスピーカの 振動板を押し,粗なところは引くのでスピーカが振動し, 音が出るわけです。 これはPWM信号を用いたD級アンプと非常に 良く似てます。つーか1bitディジタルアンプってD級アンプじゃ ないのかって気もするのですが,なんか厳密には 違うような気もするので,あまり突っ込まないことにします。

まとめ

…というわけで1bitディジタルについて書いてきました。 要は高速にサンプリングし,電圧が高いか低いかを1bitの密度で 表現したものです。そして,回路的にシンプルに作れるのと, DA無しでそのまま再生できるので,アナログ的だ,高音質だと 言われたりもしてますが,実際は良く分かりません。 ただ,一つだけ思うのは,1bit信号はどのように信号処理を すればいいのか,良く分からないなぁ…ということで, そもそも1bitアンプにはイコライザとかあまり入ってなくて, それゆえに入った信号をそのままだそう…という傾向が 強い気がします。
個人的には1bitディジタル信号処理…ってどうやって やるんだろう?…っていう疑問がありますが,とりあえず 必要かどうかも良く分からないので,それ以上深く考察 してないのでした(_o_)。
ここまで読んでいただいた方,ありがとうございました。 嘘書いていたらごめんなさい。

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'06 Apr. 27-28th


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