若い作者らしいが,若い作者の場合,太平洋戦争被害意識が 無いため,天皇家に対し自由に書いている様に思う。この本は天皇家がなぜ成立したのかを古代史に基づき書いている。 もちろん日本人論的な部分もあって「独裁者を嫌う日本人」と いったことについても述べている。
現在残ってる歴史書で一番古いのは古事記と日本書紀であるが これは藤原不比人がつくったので,ここで述べられている 天皇観は藤原神道で藤原氏が勢力を延すために 作ったものだとしている。が,もともとは天皇自体は物部氏が つくったと述べており,藤原神道の前には物部神道が あったとしている。
それは古代の天皇の后は物部氏から出る決まりがあったことから, 天皇は物部氏がつくった傀儡である,なぜ傀儡をつくるかというと 日本人は,あくまでも話し合いで決定するので,トップは飾り だからだということだ。
藤原氏は基本的には物部神道の手法を引き継ぎ,藤原氏に 都合がいいように歴史を編纂したというのが彼の意見。
ヤマタイ国が日本にあったとき,実は九州東から先は 別の勢力があり,それが物部氏で,本拠は出雲だったのでは? という意見,日本が統一されていく過程では,必ずしも 戦乱があったわけではないのでは?という意見も興味深い。
あと,物部(もののべ)という名前は,もともとは「もののふ」 であり,「もののけ」という意見は面白い。「もの」とは 現在では鬼のことであるが,没落した物部氏の怨霊を怖がる故に 鬼を怖がるようになったのかも知れないそうだ。