読書感想文「天皇家誕生の謎」を読んで

タイトル
天皇家誕生の謎
著者
関 裕二
出版
立風書房
初版発行
1999年5月5日
読んだ時期
1999年4月末
感想
若い作者らしいが,若い作者の場合,太平洋戦争被害意識が 無いため,天皇家に対し自由に書いている様に思う。

この本は天皇家がなぜ成立したのかを古代史に基づき書いている。 もちろん日本人論的な部分もあって「独裁者を嫌う日本人」と いったことについても述べている。

現在残ってる歴史書で一番古いのは古事記と日本書紀であるが これは藤原不比人がつくったので,ここで述べられている 天皇観藤原神道で藤原氏が勢力を延すために 作ったものだとしている。が,もともとは天皇自体は物部氏が つくったと述べており,藤原神道の前には物部神道が あったとしている。

それは古代の天皇の后は物部氏から出る決まりがあったことから, 天皇は物部氏がつくった傀儡である,なぜ傀儡をつくるかというと 日本人は,あくまでも話し合いで決定するので,トップは飾り だからだということだ。

藤原氏は基本的には物部神道の手法を引き継ぎ,藤原氏に 都合がいいように歴史を編纂したというのが彼の意見。

ヤマタイ国が日本にあったとき,実は九州東から先は 別の勢力があり,それが物部氏で,本拠は出雲だったのでは? という意見,日本が統一されていく過程では,必ずしも 戦乱があったわけではないのでは?という意見も興味深い。

あと,物部(もののべ)という名前は,もともとは「もののふ」 であり,「もののけ」という意見は面白い。「もの」とは 現在では鬼のことであるが,没落した物部氏の怨霊を怖がる故に 鬼を怖がるようになったのかも知れないそうだ。

99 May. 9th