読書感想文「アルジャーノンに花束を」を読んで

タイトル
アルジャーノンに花束を
著者
ダニエル・キース(小尾芙佐訳)
出版
早川書房
初版発行
1959?
読んだ時期
2002年8月
感想
ダニエル・キースの有名な作品。映画にもなっている。 今度日本のテレビでもドラマ化するらしいが,読み始めた 時点ではそのことは知らなかった。

ところで,私にこの小説の事を教えてくれたのは誰だろう?。 何でこの本を読もうと思ったのかが,全く思い出せません(^^;)。 読んで,真っ先に思ったのは,Webでよく見かける日記形式の小説は この本のスタイルを踏襲したものだったのか,しかもよく精神的に 壊れていくのを文体で表すが,それをかなり古くからやっていたのが, この本だったのか,ということ。

いずれにせよ,この本が1960年頃,40年前にかかれたと 思うとかなり驚く。この小説に出てくる設定は,どれ一つとっても, 今の時代にあわない物はない。社会状況も科学技術も。
これはSFとしてはすごいことだと思う。SFはどうしても,科学技術の 変化によって,未来の話であれどこか古くさくなってしまう物が ほとんどだから。

脳を手術して知能を上げるという考え方は,ロボトミーが盛んだった 当時のアメリカを反映しているようではあるが,脳科学がさかんに 議論されている,現在でも十分新しい話題である。 そういう意味でかなりすごい作品といえる。
特にこの作品の中に込められている,「知能指数的に賢く なることが,必ずしも幸せなことではない」という思想は, 私が普段言っていることで,なかなか共感を得られない 事でもあるので,私的にも強い共感を感じた。 もっとも,知能障害者がそのままで幸せと言うつもりは ないが。

物語的には,いろいろ疑問が残る部分もあるのだが, 変わりゆく自分を,スピード感たっぷりに読者に 実感させるということにかなり成功している作品だろう。 いろいろ考えさせられる作品だ。唯一,主人公が知能を 減退させている場面での言動は,おそらく私が仮にそうなった 場合とは違う,普段私が老衰の恐怖と対峙しているのと 違う。
この辺はバックグランドの違いなのであろうか。それとも 私自身が,知能を否定しつつ,やはり知能にしがみついている という証明であるかのように思う。

02 Sep. 2nd