読書メモ(2021年)

最近読んだ本から…メモなどを。

書籍編

フェンダーVSギブソン(イアン・S・ポー ト著)(21/9/11)
原題は"The Birth of Loud"。内容としてはやはり原題の方 がふさわしい。邦題の様なタイトルにするなら「レオ・フェ ンダーVSレス・ポール」の方がふさわしいかもしれない。
ソリッドギターの誕生に大きく寄与した,レオ・フェンダー およびフェンダー社のあゆみを骨に,誕生時に大きな働きを したレス・ポール,ポール・ギブスビーの話,そして,ギター の音が大きくなることで,どの様に音楽が変わっていき,結 果的にロックの誕生に繋がっていく様子が詳細に書かれてい る。
ギター制作の技術,ギターメーカーのビジネス,そして音楽 といろんな視点で描かれいて,それぞれ面白い。500ページ もあり40章以上に渡っていろいろなことが書かれいている。 最初の方は,ギターの音を大きくすることで演奏表現を革新 していくことに貪欲だったギタリスト,レス・ポールの軌跡 が結構詳細に描かれているが,一方で,職人としてソリッド ギターを作ったギブスビー,工業生産物としてソリッドギター を量産化したレオ・フェンダー3人の関わりが詳しく書かれ いてる。そして,ギターの音が大きくなることでブルースや カントリーがどの様にスタイルや聴取層が変わっていったか が興味深く書かれていった。その中で,さまざまなミュージ シャンがソリッドギターを手に入れることで,どういう音楽 スタイルを手に入れたかとても興味深い。
確かに考えてみれば,ソリッドギター以前もエレキギターは あったものの,音は小さく,ピアノやサックスを抑えて前面 に出ることは不可能だった。大音量を得ることで,大人たち に反感を買いながらも若者からは支持を得る音楽という風に 大きく印象は変わるしバンドの編成も変わる。ブルースから R&Bに発展し,それを白人が取り入れロックンロールに なっていく。そういうことだったんだと思った。
読んで,いろいろと腑に落ちたこともあって,プレスリーの ロックンロールの後にロックはどうなったんだろう?と以前 から思っていたのだけど,やっぱりアメリカでは一度下火に なって,ビーチボーイズの様なサーフミュージックとかが流 行っていたらしい。ロックが再び流行るのはビートルズの様 にロックンロールを若い時に聞いて感動したイギリス人が大 人になりバンドを始めてから逆輸入されたりしてからみたい。
だいぶ前に最初にギターを歪ませたのは誰だろう?と調べた ことがあって,資料とかではリンク・レイって言われてるけ ど,それ以前のR&Bでは歪んだギター弾いてるのが不思 議だったのだけど,意図的ではないにせよ,やはりそれ以前 に黒人のギタリストが大音量を出そうとしてギターが歪んだ りしていた様である。
本を読みながらいくつから知らないミュージシャンの演奏を Youtubeで確認したりして,納得することも多かった。カン トリーとロカビリー,ロック,そしてR&Bとかがどうい う風に繋がってるかも,以前よりは感覚的にイメージできる 様になった。
ギターが好きで軽音楽が好きな自分には,とても色々目から 鱗が落ちる本だった。
あと,参考文献が大量に弾いており,証言も著者が勝手に想 像して買いているわけでもない様で,良質なノンフィクショ ンだと思った。

才能のあるヤツはばぜ27歳で死んでしま うのか?(ジーン・シモンズ著)(21/9/9)
ロックミュージシャンなどで,成功の絶頂で亡くなる人はそれ なりにいる。世の中では27歳で亡くなる人が多いと認識されて いて,27クラブとか呼ばれているようだ。このことを神話のよ うに語る人たちがいる。そのことを苦々しく思っているジーン・ シモンズが書いた本である。
27歳で亡くなった何人かのアーティストを取り上げ,個々に語っ ている。取り上げる人たちのいくつかを挙げると, ロバート・ジョンソン,ブライアン・ジョーンズ,ジミ・ヘン ドリックス,ジャニス・ジョプリン,ジム・モリソン,バスキ ア,カート・コペイン,エイミー・ワインハウスなどである。
ジミヘンやジャニスが同じ年に同じような年齢で亡くなってこ とはよく知っているが,27歳で他にもこんなにいることは知ら なかった。ロバート・ジョンソンがそんなに若くて亡くなった のも知らなかった。
これらの人たちは,病気で亡くなった人もいるが,いずれも生 きているうちから生活があれ,酒や麻薬に手を出していた人が 多い。
ジーン・シモンズはキッスで音楽的にもビジネスとしても成功 した人で,酒も麻薬もやらずきちんと自分を律して生きている 人である。だから,こういう自滅していった天才たちを苦々し く思っていたらしい。こういう人たちが神格化されたり,もし くはドラッグ等が創作の元となっているという様な間違った考 え方を強烈に嫌っている。
ジーンはこの本を書く前は,これらの人たちについて語るとし たら悪口しか出てこなかったらしい。でも本を書くにあたり, いろいろ調べたり考えたり人の話を聞いているうちに,変化が あったことを書いている。この本では,この本でジーンがそれ ぞれのアーティストについて語っているのは,亡くなった人た ちの弱さと,もし生きていたらもっと素晴らしい作品を残した だろうという残念さである。
この本を読みながら思ったのは,27歳という年齢に特別なもの があるわけではないだろうが,20代前半で大きな成功を得た人 には,プレッシャーや周りに集まってくる人たちから大きな危 険に晒されるんだろうなぁということ。20代で亡くなる様な繊 細さが創作に必要なものなのかはわからない。でも繊細じゃな い人でもおかしくなる様なめまぐるしいことが起きてるんだろ う。日本では目立って20代で亡くなるアーティストが多いとは 思えないが,それだけアメリカなどのショービジネスというの が過酷だったり,薬物などが蔓延しやすい環境があるのかなと は思った。


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