最近読んだ本から…メモなどを。
書籍編
- さよならタマちゃん(武田一義著)(13/10/8)
- あらかじめ書いておくと,これは漫画です。ですがフィク ションではなく,作者自身が体験したことを描いているもので す。
内容を簡単に書くと30代半ばで精巣ガンが発覚した作者が,手術を 受け,手術後転移が見つかりそのまま抗がん剤治療を受けるた めに長期入院し時の体験談です。タマちゃんというのは,精巣 ガンの手術で睾丸を摘出したのと,抗がん剤治療で無精子症に なったことを指すのかもしれませんが,正直それについてはあ まり作品の大きなポイントにはなってないように思います。
この作品は抗がん剤治療の辛さ,若い身でガン宣告を受けると いうこと,ガン治療を受ける上での家族との関わり,そして同 じ病棟で出会った多くのガン治療患者のこと…なんではないで しょうか?。
絵柄が可愛く,全体的にゆるく描かれてますが,描かれている 内容はかなりシリアスです。抗がん剤の副作用に苦しむ姿は見 ていてつらいものがあります。
さて,私自身がガンになり手術を受けた経験があることから, そしてわたし自身は未経験ですが,母が抗がん剤治療を受けた ことから,ここで描かれている多くのことには,かなり実感を 持って「そうだよな」と思うことがありました。体の痛みなど が強いときは,精神的にかなり参って,自分は助からないと悲 観的になったりしますが,実際はガンの治療の場合,体の苦し みと,治療の効果はあまり関係がなかったりします。私の場合 一ヶ月くらいしか入院しなかったので,他の患者との交流は無 かったのですが,病院にはいろんな患者がいます。おおむね良 い人のように描かれてますが,本当はみんな苦しいはずですの で,いろいろトラブルもあったのではないか?という気もしま す。
現在日本人の三分の一(だっけ?)がガンで死ぬといわれてます。っ ていうことは半分近くの人がガンにかかるわけで,家族がかか るということも含めるとガンにかかるということ,他人事では ありません。そのわりには,われわれはガンにかかったときの ことを普段考えてません。自分がガンにかかったときのことを 後から思い返すと一番思うのは,結局のところ「戸惑っていた」 というのが一番大きいのだろうな,ということです。そしてそ の戸惑いは何日も何ヶ月も続く場合があります。そういう意味 では,実際にならないとわからない部分はかなり多いものの, 想像するきっかけはあったほうがいいのではないでしょうか?。
ガンというのはどこに出来るガンか?とか進行度とか,さらに 個人ごとにその症状や治療法や深刻度は異なります。ですから, 本当は他の人の経験は,参考にはなりますが,そのまま自分に 降りかかってくることになるかはわかりません。でも私は状況 や症状が異なるこの作者の経験を読んで,状況は異なるものの 共感する部分はかなり多く感じました。
そういう意味では,いつかガンにかかるかもしれないすべての 人に読んでいただきたい作品です。
- 統計学が最強の学問である(西内啓著)(13/7/25)
- ネットで書評を読んで,興味を持って読んでみました。
面白く読めました。統計に興味がなった,興味はあってもよく 知らない人が読むと「勉強しようかな」と思うかもしれません。 そういう本かなって思いました。
私自身は,大学の研究で心理実験をやっていて実験の評価のた めに統計は使っていたので,なぜ今更あらためて?と思ったの ですが,先日TVでも統計学が旬だ…と言っていたし,なるほど, 今ってそうなんだ…と思いました。この本の中でもgoogleや amazonなどで行われているだろうマーケッティングの手法とし ての統計学の強力さや,ビックデータを扱う上で統計が重要で あるという話を書いてます。興味をあらためて持つ方も多いで しょう。よく考えてみると,ネットとかでの議論を見てると検 定や相関・因果を理解せずにいろんな統計報告の結果を読み誤っ ている人を多々見かけるので,世の中的には,案外統計の基本 的なところすら理解してない人は多いんでしょうね。というか, 私も大学に入るまでは統計って数学の中では一番な分野でした ものね(^^;)。
さて,本書はそういう現代社会における統計の重要さの他に, 統計の歴史,あとは分析にいくつかの事例,そして最後にさま ざまな統計学者の流派の違いを説明してました。個人的には最 後のがむちゃくちゃ面白かったです。というのは,先に書いた とおり,自分自身が心理分析として統計を使っているので,他 の統計分野から見ると,こうなのか…とか,他の分野はこうい う考え方なんだ…とかあらためて知りました。例えば,社会調 査はそもそも検定とか分析とか言う以前に,いかに全体のデー タを取るかをポイントとしてるとか,疫病はいかに効率よく全 体を評価できる条件をそろえるかとか,そして心理分析屋は, 理解しやすい結果が出るまで分析方法をいじくるとか(笑)。そ ういえば,そうだわ。確かに都合がいいように結果をいじって ると思われても仕方ない(苦笑)。
途中分析の事例が載ってましたが,あくまでも興味を引きやす いように例を挙げてるのだと思います。実際統計分析って,そ れぞれの事象にどういうモデルを当てはめて,どういう分析法 を使うかは,難しく一般化しにくいのですよね。私自身もハン ドブックで自分が使いたい事例に似たものを探すということを 良くやってます。
というわけで,この本を一冊読めば自分で分析が出来るように なる…というものでもありませんし,統計の全体像が見えるっ てものでもありません。ただ統計の面白さは十分に伝わるので, こういう本を読んで,しっかり勉強をしてみよう,と思うのは 良いのでないでしょうか。そういう本だと思います。
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