読書メモ(2010年1月〜6月)

最近読んだ本から…メモなどを。

書籍編

傷はぜったい消毒するな〜生態系としての皮膚の科学 (夏井睦著)(10/5/29)
これまでの常識では,怪我をして皮膚を傷つけた場合,傷を消毒し, その後にガーゼなどを張り乾燥させるとなっており,家庭や医療でも このような治療を行ってきてます。著者はこの治療法は間違っていると して湿潤療法というものを提案してます。それは,皮膚が傷ついた場合, 傷をよく水で洗った後,消毒をせず,そのまま乾燥させないような素材 (それ様のものもあるがラップでも良い)で覆い,あとは一日一回素材を 張り替える。素材には白色ワセリンとかを塗るとなお良いと。
皮膚が傷ついたときに出てくる汁は本来は皮膚の再生を活性化させるもので, それをふき取ったり乾かしてしまうのは良くないというのが覆う理由, 消毒液は人体の細胞も破壊して再生を遅らせるし痛みも激しい,また 元々人に皮膚には常在菌がおり消毒は無意味というのが消毒しない理由と して述べてます。
医者である著者は実際にそれを治療として行っており,実際にこれまでの 治療法に比べて痛みも少なく,治りも早く,傷も残らない…ということを 示してます。
…というわけで湿潤療法自体は非常にシンプルで,またその科学的根拠も 納得できるものであり,自分も今後はこういう治療を受けたいと 思うものでした。ただシンプルゆえに,ページが埋まらないからか?, はたまたこの治療法が,まだまだ医学界では異端扱いを受けているからか, この本の多くは,なぜこの治療法が受け入れられないか?という医学会の 「過ち」を犯す体質…などに多くが割かれていて,本としてはかなり 過激な書き方になっております。あと湿潤療法の根拠もある程度は 同意できるものですが,だんだん話が生物の発生のところまで入っていって, どこまでがこの人の学者としての守備範囲なんだろうか?という気も しました。
すこし気になって,湿潤療法についてwebで調べたのですが,大体において 肯定的,実際に医者の方も有効性を述べているので大体正しいなとは 思いました。ただこの本では,話がだんだん過熱して行き,この 療法があたかもどんな怪我にもOKみたいになってきてるのが,少し どうかな?という気もしました。リスクについてあまりはっきり書かれて いないという点です。もちろん本の中でも,動物にかまれたような傷や 破傷風の恐れがあるような怪我等にはこの療法は向かないと書いているし, 角質層は湿潤では再生しないとは書かれているのですが,すこし そちらの方の扱いは小さいと思います。湿潤療法の治療の中で抗生物質の 使用を想定してるというのも,治療中に体内に雑菌が入った場合の リスクを想定してるのでしょうが,抗生物質は自宅療法では使えないので, それなりにリスクが高いということになると思います。
医者が行う治療の場合,何か想定外のことがあったときに医者がいつでも 対応できますが,自宅治療の場合はそれが出来ません。特に新しい治療法の 場合,近所にその治療法をやっている医者があるとは限らないので, その治療法でなにか急変した場合に,駆け込んだ医者が対応できるか?, 同じ治療を継続してくれるか?保証がありません。
ですから,あたかも自宅で誰でも出来る治療法…として紹介するなら, もっとその辺の対応を細かく説明すべきじゃないか?とは思いました。
折角有効で優れた治療法だと思うんですが,著者自体が,自身が発見した 治療法に酔ってしまって,少し盲信して無いか?と思わせるところが 本として残念だなぁと思います。
ただ,この治療法には非常に興味を持ちました。いま自分には 子供がいるので,そのうち怪我をよくするでしょう。痛みも少なく, 治りも早く,後も残りにくいのでしたら,こっちの方の治療を やりたいなと思います。ですからもう少し,リスクの説明を書いて 欲しかったなぁというところです。昔の自分だったら, よく怪我をしていたので,まずは自分でためせるのです。

赤ちゃんを爆笑させる方法 (岡部敬史,平井寿信著)(10/5/29)
わたしは 言戯というページが好きでほぼ毎日 みてるのですが,そこの運営者がイラストを,そしてもう一人 岡部氏が文を書いている本。内容はタイトルどおり,育児というより 赤ちゃんとの接し方の本。
わたしはいま赤ちゃんがいるので,「へー」というよりは, 「あぁ,そうだね」という感じで読めました。赤ちゃん談義に 参加してるみたいでなかなか読後感が良かった。

ニッポンの評判〜世界17カ国最新レポート (今井佐緒里編)(10/2/14)
最近海外では日本(または日本人)が結構高く評価されている…という 類の本がちらほら出てます。これまで日本人はたいしたことは無いとか 戦時中に大迷惑をかけて今でも嫌われている…というような論調が 日本人の中で支配的だったことを考えると,バランスとしていい事では ないか?とは思います。
この本では海外で生活している日本人による17カ国におけるその国の 人の日本人感を書いたものです。全体的に日本人に好意的な文が多いの ですが,手放しというよりは,そうでも無いとか,そもそも日本(人)に 関心が無い国とか,間違って理解しているとか,そういう話も書いてあると いう意味では,それなりにバランスはいいように思います。
日本人はこれまで自虐的な国際感覚をもってますから,こういう風に 日本を良く思ってくれている外国人が案外いる…と知るとうれしいですよね。 そういう意味では読んで楽しくなる本です。ただし,日本に対して 関心を持っているのはやっぱり電化製品の信頼性と,あとはマンガアニメが ほとんど。ということは昔の日本のことはあまり知らない,というか 昔の日本のことを知る人は「忍者」「侍」「ゲイシャ」みたいな 話ばかりですから,まぁそういうものです。
全般的に中東やアジア南米の様な国は日本に対して好意的なのに対し, 日本人自体がその国に逆に関心が無い。欧米は逆に日本に対して 関心が低いという傾向があるんじゃないかという気はしました。 でも日本でほめられているのが上記の様な電化製品とマンガ・アニメと いうことを考えると,日本の国策として何に力を入れるかは,国や 日本のメディアは少し考えるべきなんじゃないか?という気はしました。
あと,ちょっと面白かったのが,海外では大豆を食べ過ぎると体に悪い (なのに日本人は大豆製品ばかり食べている)と思われている国があるとか, あとイギリスは買っての栄光からか,なんでも自分達が正しいと思っている とか,フランスは芸術が国を栄えさせているという意識があって,海外の 新しい文化を非常に積極的に取り入れるとか,そういう話も興味 深かったです。


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