最近読んだ本から…メモなどを。
書籍編
- 日本語が亡びるとき〜英語の世紀の中で(水村美苗著)(09/02/28)
- ちょっと前にえらくネットで話題になっていた本です。 結構売れたのではないでしょうか?。というわけで,興味を もって読んでみましたが。
感想の概要としては,あまりピンと来ませんでした。なんでしょうねぇ。 なんでそんなに話題になったのか良くわかりません。書いてあることには 特に反論もなく,「あぁそうだよね」って感じ。著者の意見も 多少の違いはあるものの方向性的には,わたしもそう思うと いう感じで。とうわけで,おかしなことを書いているとは 思わないものの,なんとなく当たり前のことが書いてあるなぁと いう感じでした。
著者は日本人ですが,学生時代に親の引越しでアメリカに引っ越した ものの,アメリカの社会になじまずに,日本文学を愛する少女に なった。あとフランス語も学んだ人。はっきり書いてませんが, たぶん英語は堪能なんだと思いますが,たぶん日本語の作家でしょう。
英語が普遍語として世界に君臨するということ。そのほかの言葉が 周辺・辺境の言葉となっていること。あと「国語」とか,「現地語」だっけ? しゃべってる言葉とか,まぁそういうのの関係みたいのを,そういうのの 成立とか現在の世界の状況を説明してます。
普遍語が読み書きできるということは,膨大な知識データベースに アクセス,また発表できるということであり,明治以降の日本は 普遍語を読むことが学問だった,みたいな事。あと日本語という 国語が成立したのが明治以降だけど,その後も英語公用語論が ずっとくすぶってきたなどの話が書かれてます。ただし著者はそういう 中で,日本人全員が英語を読み書きできるべきだとは言っておらず, むしろ英語が得意な人に教育を集中して一部の人が優れたバイリンガルに なるべきで,現在の日本語は大事に残すべきだという意見でした。
- その点に関してはまったくその通りだと思います。作者が 力強く訴えるような危機感がわたしにはなかったので,なんとなく 何でそんなに訴えるのか?とは思いました。ただし著者が書く ほかの国の状況や,日本の明治以降これまでの言葉に関する流れを読んで, 結構危うかったのかもとは思いました。
そういう意味では,著者の書くことにも納得したし,少し考えも 改めたのですが,ただいくつか些細な点で,そうかな?と思うことも。
わたしは,確かに明治時代に書かれた文学は偉大な作品かもしれませんが, 当時は娯楽的な面もあったでしょうと思うし,言葉というのは 生きてるものだから,教育や文学でコントロールできない領域が 結構ある。それでも,正式な文書に書かれるべき日本語と, 娯楽メディア(今だとライトノベルやマンガ,TV等)で使われる言葉, しゃべり言葉,方言は確かに違いますが,境界は常にあいまいで あろう,とわたしは思います。自分が元々は地方出身で,記述できない 方言を以前は使っていたこと,でも今はほとんど使えないこと。 それと記述に使う日本語だって時代でどんどん変化して,以前は誤用と されていた言葉が認められていたりする現実を見たりとか。 英語という普遍語に対して守るべき日本語はあるとは思うけど, 日本語自体は常に変化してるものだと思います。 そういう現実と少し著者が示す理想が合わないというか無理があるなと 思いました。
あと,英語ができないと世界の知識を得られないというのは同意ですが, まぁ自分は理系で,英語の論文を読み書きしてるので,その程度で あれば,まぁ読めるし。逆に今後すべての知的財産が英語で記されるか?と いうとちょっと疑問に思ったりもします。案外現地語で書かれている ノウハウの技術書に貴重な情報があったりするというか。
まぁでも,他の国の公用語とか現地語とか国語の現実については 知らなかったことも多く勉強になりました。こういうのを読むと なぜ文系の大学生があそこまで必死に英語を勉強するのか,少し 解った気がしました。
- がんはなぜ生じるか〜原因と発生のメカニズムを探る(永田親義著)(09/01/24)
- ブルーバックらしく科学的ながら読みやすい本でした。
内容的にはタイトルどおり。がんについて書かれた本で,原因(主に発ガン物質) と発生のメカニズムの研究の紹介で治療法については特になし。 長年この分野に関わってきた研究者らしく,歴史的経緯を踏まえて, これまでの多くの諸説を紹介していて,いい勉強になりました。
著者は医者ではなく量子工学からガンの研究に入った方ですので, 臨床的な内容はありませんが,逆に分子や遺伝子レベルでの解説が 述べられていてある意味ガンを病気というより科学的対象として 読めます。
発生原因つまり発ガン物質については,特にわたしが知らない物質は ほとんどありませんでしたが,明らかに発ガン物質といえるもの 疑わしいもの,関わるものの様に分けて述べられていたのが,興味深かった のと,あと発ガン物質にガン細胞を発生させるものと,ガン細胞を 育てるものの二種類があるのではないか?という考えが紹介されて 興味深かったです。
メカニズムは知らない話が多かったのですが,ある意味細かすぎて 結構難しかったです。ガンは細胞分裂の暴走とかエラーの様に わたしは捉えてましたが,実態はまだまだ不明で,DNA自体が 痛んでいるという説と,DNAからたんぱく質が作られる段階での 異常という説があるようで,分裂のエラーというとDNAなのかなと 思っていたわたしにはちょっと驚きでした。確かにこの二つは 違うのですが,そこまで考えたことはなかったので。
素人考えで書くと,ガンもさまざまなので,発生メカニズムが 数種類あってもおかしくないと思ったのですが,どうでしょうか? エラーというのは正常以外ですので,ひとつの状態とは限りません。 いくつか紹介されていたメカニズムは,どれが正しいかわからないと いう感じで紹介されてますが,どれかひとつだけが正しいとも 限らないなとも思いました。もっとも治療法などを考える上では, どれかにめぼしをつける必要があるのでしょうが。
ガンの正体がまだまだわからないことばかりで,学会の説も 結構変化しているのだなということがわかったのは興味深かったのですが, がん患者である自分の立場でいうと,まだまだ先が長い研究だなとも 思い,ちょっと悩ましいとも思いました。もっともガンの根絶は 無理なんじゃないか?というのもわたしは考えてるので,それは そうなのかなとも思いますが,有効な治療法はいつか見つかって ほしいと思います。
- 多宇宙と輪廻転生〜人間原理のパラドックス(三浦俊彦著)(09/01/17)
- とりあえず「読んだよ」というレベルでしか読めませんでした。 書いてある単語とか興味があることばかりなんだけど,理論の 構造がつかめませでした。面白そうなんだけど,わたしには 難しかったってことでしょう。
確率論というか統計を使ってタイトルにあるようなことを説明 しようとしている試みはおもしろかったのですが,わたしが理系なせいか, どうもその確率論が,そういう使い方出来るんだっけ?ってひかかって そこでストップ。
というわけで,普通は理解できなかった本のメモなんか書かないのですが, 確率論について,ちょっと他で書くかもしれないので,読んだことだけ 表明しておきます。
- 生物と無生物のあいだ(福岡伸一著)(09/01/05)
- どこかのブログで紹介されているのを読んで買って読みました。 著者は生物学者。DNAとかとか細胞内の化学物質の動きとか,そういうのを 研究している人らしく,海外の研究機関で結構長くやっていた様子。 最前線でやっていたようで,熱い研究競争の様子がうかがえて,興味 深かったです。
というわけで面白かったんですが,結構この本売れていて,賞も取ってる 様なのですが,そんなに一般受けするような内容なのだろうか?とは 少し思いました。新書というか文体も読みやすいので,専門家以外の 多少科学に興味がある人なら理解してすらすら本だとは思いますが,ちょっと マイナーな内容じゃないかなぁ。最後の方にES細胞とかプリオンとか マスコミを騒がせた話も出てきますが,ほとんどはDNA発見の周囲の話の 様な気もします。
まぁそれでも個人的には生物の定義は自己複製すること…とか,平衡を 保つこととか…そういう解釈には共感ができるし,DNA発見に至るまでの ゴタゴタもちょっと裏話(といってもその業界では知られた話の様子)的で 興味深かったし,シュレーディンガーが提示した疑問が,わたしも 以前から思っている,動物はミクロ的に見ると密度の濃いところから 薄いところに物質が広がる様なランボウに言えばエントロピーが増えそうな 反応があちこちで起きてるのに,全体をマクロ的に見るとエントリピーは むしろ減っている(秩序だっている)のはなぜだろう?という疑問と結構 似たようなことなのだなぁと,感慨深かったです。その回答も まぁわかったようなわからないような話でもあります。この本には 書かれてませんけど,人間の知能も細胞の働きだから,同じ理屈のような 気もするんですけどね。
というわけで,こんな話受けるのかね?と思いつつ楽しく読めました。 ただタイトルから想像する内容とは少し違っていたかな?。あとどこかの ブログで疑似科学的と書かれたものを読みましたが,わたしには どこがそうなんだろう?とむしろ思うくらい,むしろ堅実な内容な 気もしましたけど,他の人にはそう感じないのかしら?
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