最近読んだ本から…メモなどを。
書籍編
- 第三の脳〜皮膚から考える命、こころ、世界(傳田光洋)(08/09/23)
- 著者がpodcastでインタビューを受けてるのを聞き興味を持って 買った本です。著者は資生堂の研究者で,皮膚に関する研究,特に 皮膚の感覚について研究をしている方らしいです。
読みやすい口語体で書かれてますが,内容的には結構理系的な内容で, 皮膚に関してのさまざまな研究成果が書かれてます。著者は特に 皮膚で感じる感覚について興味があるようで,それについては 現象や,皮膚の構造や状態から推察されるその原理などを語ってます。
良く眼で見てもわからない細かい違いを職人やその道の達人が 触れてわかるといいます。工芸品だったり漢方医療とかさまざまな そういう話は聞きますが,それをオカルトとも疑似科学とも超能力とも 言わず,皮膚の感覚として考察してます。実際皮膚は眼で見えないような 10ミクロンくらいで並んだパターンの乱れを感じたりすることが 出来るそうです。またそれを感じる仕組みも指先の神経が感じる わけでもないようで,指先の神経はそんなに細かく並んでません。 皮膚の細胞一つ一つにそういう触覚に対応して出る物質があり, つまり皮膚が感じていて,その反応を神経が脳に運んでいるのだろうと。
また皮膚は色を感じるようで,皮膚の角質を破壊した際に,その 復元スピードが当てる色で変わるそうです。これは,脳にいくわけではないので 脳により反応しているわけではありません。この様に 皮膚には,脳にいかず皮膚の中で感じ,反応をする仕組みがあり, それゆえに脳と独立に判断しているという意味で(第二の脳が 消化系なので)第三の脳とタイトルされているわけです。
またいろんなストレスとかが皮膚に出るのは,女性なら実感している ことでしょうが,これについても細かく解説されてます。さらに, 皮膚には電波などを出したり感じたりしている部分もあるということで, 超能力のようにされている能力の中に,皮膚により意識下のまま 反応しているものがあるのではないか?などと想いをめぐらせてます。
著者はオカルトというか,現代の科学では証明できてないことに関しても 関心が高いようですが,それについても,単純に不思議な力と決め付ける のではなく,皮膚の能力という切り口で科学的に手法で解き明かそうと しているところに感心しました。
私は以前も日記とかに書いてますが,最近は何でも脳偏向になっていて, 脳の中ですべてを感じたり判断しているように言われることが多いですが, 著者の言うように,人間は脳と独立した皮膚など別の系で,感じたり 考えたり,何かをしたりとか,そういう部分が結構ある気がします。 それは結局は脳にもフィードバックされ,考え方や行動,また体調などに 影響を及ぼすわけで,つまり皮膚をはじめとした身体やその感覚を 大事にしないと,いろんな部分で歪みが出てくる,そういうことを わたしも良く思いますが,それを感じる本でした。
内臓とかが重要だとわたしは思ってましたが,皮膚についてこれだけ わかりやすく,詳しく,なおかつ(研究者的に)良心的に書かれた本は あまりなく,非常にお奨めだと思います。
- 嘘だらけのヨーロッパ世界史(岸田秀)(08/08/24)
- 岸田秀の本は面白いので何冊か読んでます。ただ,真に受けると 非常に危険な人なので,お勧めしていいものか?(^^;)悩むんですが。
この本はヨーロッパ世界史,つまるところわれわれが信じている 文明論に対して,それはヨーロッパのトラウマから生まれたものだと 指摘してる本です。
もともとエジプト文明は黒人の文明だったというバナールの「黒いアテナ」と いう論文をめぐる論争を,著者の視点で紹介するという内容。その上で, 白人はもともと黒人に迫害されていたので,そのトラウマから, 地中海に発する文明は自分たちの祖先が作ったと捏造し,それを 世界に広げ,自分たちの世界侵略の正当性としたと指摘してます。 白人がアルビノだったというのは明らかな間違いではないか?とわたしは 思いますし,白人という被差別人種が当時存在していたのも,疑問に 思いますが,地中海文明を白人起源として世界侵略の正当性にしている 部分は現在の世界にもまだ生き残っているとは思います。
まぁ著者は今回はあまりに話がでかいので自分で証拠を見つけることなく, 他人の論文を紹介する形で,持論を展開してるのがちょっとずるい 気がしますが,その辺も確信的なんでしょう。
話…四分の一くらいで読めばいい気がしますが,その四分の一が結構 鋭かったりするので,この人の本は扱いが難しいです(苦笑)。 個人的には,「アーリア人」というのが何だったのか?がわたしなり よくわかった気がしたので,まぁ良かったかなとは思います。インド・ ヨーロッパ語族とか,学生時代習ったけど,その辺の説って 学校では今どういう風に教えてるんだろう?
- 不完全性原理−数学的体系のあゆみ(野崎昭弘)(08/08/24)
- タイトルからゲーテルの本かと思うかもしれませんが,実際は 数学体系を歴史的に記述しており,個人的にはそちらの方が 面白かったです。もちろん数学的にちゃんとかかれているので, ゲーテルの方の話も面白いでしょう。ただし,どうしてそういう 数学が出てくるか?というのがギリシアの数学・哲学の命題からの 流れとしてしっかり説明されているので,ゲーテルの数学以外, 現在われわれが使っている数学全般の背景が良くわかるというか。
まぁわたしがこの辺初心者なので,ユークリッドの説明ですら, 「あぁこういう数学だったのか」とかいう感じで興味深かった だけですが。
個人的には学問は体系を理解してから中身を理解したほうが良いと 思うので,こういう本は一度は読んだほうが良いでしょう。良く 最新数学で証明されているから,それが世界唯一の真実…みたいに いう人がいますが,別に数学は「世界」を説明ためにあるわけではなく, 数学体系という世界の中での法則を記述する方法を探究している, そういう感じでしょうか。
もちろんこの本自体はそういうことを述べてるわけではなく,数学の 手法を淡々と説明してるだけです。文庫本で手軽ですので,お勧めです。
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