List of The Books I had read in Jul. to Sep. 2007.

読書メモ(2007年7月～9月)

最近読んだ本から…メモなどを。

書籍編

環境問題はなぜウソがまかり通るのか(武田邦彦著)(07/8/25)
日記に書いたはずだけど，サイエンスサイトークで著者が出ていて，ペットボトルは実はリサイクルされていないとか，ダイオキシンが猛毒だというのは嘘…という話を聞いて驚きました。その後なんか著者はTVなどにも出たようで，それなりに話題になったようですが，著者の本を買ってみました。この本は結構売れているそうです。
で，読んでみて思ったのは，この本の趣旨は，おそらく，環境問題でいわれている事には嘘があって，それはひとつはマスコミが無責任に民衆をあおっているということ。そしてもうひとつは，行政とか利権者が環境問題を掲げることにより，利益を得たり，いい加減な行政をやっている…と。
この主旨でいうとそれはそうなんでしょうけど，しかし実際に中に書かれている，環境問題でわれわれが常識と思っていることで，実際は嘘である…ということの内容については，賛同できるものと疑問に思うものが結構混ざってました。つまりこの本だけでは，著者が言ってる，環境問題の嘘が本当なのかが判断できるだけの情報とかデータがありません。むしろ，あまりに行政や利権者への糾弾が強いので，なんかルサンチマンがあるのか?とすら感じてしまうのですが，それはマイナスではないですか?。
上に書かれたペットボトルとダイオキシンの話は，そうかもしれないと思いました。しかしそのほかに出てくる，地球温暖化が問題というのは嘘だとか紙のリサイクルを増やしても発展途上国の森林には関係なく先進国の樹木が影響を受けるだけ，しかも木が売れないと森は荒れる…という話には，残念ながらこの本から読み取れる内容だけではわたしは納得しませんでした。
氷河期とかでも気温変動していたというのは，確かにそうですが，では，氷河期のころの地球全体の人類の人口と今の人口を考えると，あの時代大丈夫だったから，今後も大丈夫とはいえないと思います。紙の件もなんか話がそれていて，よくわかりませんでした。
そもそも，この本を読んで困ったのは，じゃぁどうするべきか?ということがほとんど書かれてないことです。今のまま何もしなくてもいい…ってことなのか?。石油がなくなることが問題とは書いてましたが，石油を使わなくして，それで終わりなのか?。どうも，産業革命以前の世界…もしかすると鎖国時代の日本に戻すべきだと書いているような雰囲気も感じますが，そうだとすると，それはそれで安定しているかもしれませんが，世界の人口が一桁減り，日常的に餓死者がコロコロでる世界がいいってことなんですかね?。だとすると一理はありますが，だったらそう言って欲しいです。
まぁ論旨が読み取れないところは他の本を読め，この本は，単にマスコミと行政批判をするためのものだから…といわれれば，それ以上突っ込みようがないのですが…。
もっとも最初に書いたように，確かに環境問題には嘘とかがあるのは確かだと思います。そして良くわからないので，頓珍漢なことをやってる場合も多いでしょう。だからこそ冷静に議論する必要があり，いろいろ良くしていかなければいけないと思います。それゆえに，こういう常識に反論する人は，より冷静に説得力あるものの言いかたをして欲しい，環境問題を見直そうという人がトンデモ扱いされてしまうのはもったいないなぁ…と思いました。

脳は意外とおバカである(コーデリア・ファイン著/渡会圭子訳)(07/8/1)
昨今の脳ブームとこれまでの研究結果から，人間は脳により物事を認識し，判断し，そして行動の命令や思考を行っている …ということはほとんどの人が知っているでしょう。ですから，脳は「感じる考える」自分自身であるということになります。
そこでこういうタイトル。その自分自身が「意外におバカ」ということになるのです:-)。
この本のサブタイトルを挙げると，

脳はうぬぼれ屋
脳は感情的
脳にモラルなし
脳はだまされる
脳は頑固者
脳は隠し事がお好き
脳は意志薄弱
脳は偏見まみれ
という感じです。つまり人間は意外に…上記の様であるということになるのです。自分はしっかり考えて，しっかり判断しているようでも，そういうことです。
具体的に順番に書くと，

都合のいいことは自分の力，失敗は他人のせいの様に認識してしまう，
感じや直感で物事を判断してしまう，
ダブルスタンダードが当たり前，
論理的なところをすっとばして思考する，
思い込みが強い，
無意識の存在，自分でもどういう風に判断してるかわからないことがある，
つい怠けたり挫折する，
ステレオタイプを作りたがる，
等…。著者は心理学者で上記を実証する実験の例をいくつも挙げてくれています。
というわけで，実際にしっかり考えてしっかり判断してるようでも自分は結構いい加減でおバカだったりする…ってことがわからないといけません。「いや自分は違う」というあなた…，すでにこの本に書かれているおバカさを発揮してることになります:-)。
…まぁこういう説を読んだことがない人は幾分ショックを受けることもあるのでしょうか?。わたし自身はそもそも人間の判断や感じることなどかなりいい加減で，信用おけない。他人もそうだけど，自分自身も信用おけない…と思っているので，楽しくは読めましたがショックは受けませんでした。でも具体的な実験例を挙げているのは，勉強になり楽しかったです。
最後にこの本で著者はこういう人間の特性に悲観しつつも気をつけていこうみたいな感じでしたが，訳者はもう少し面白おかしい…というか気楽にあとがきを書いてました。思うに西洋人はわかりませんが，日本人は意外に「人間なんていい加減なものだよ」と思ってるんじゃありませんかね?。だからこういう例を挙げてもあまりショックを受けない。そしてそのいい加減な人間を愛しているようなところがあるように思います。
TVや映画のキャラをみていてもフウテンだったりダメ人間を愛すべきキャラとして日本人は描いてきました。気分屋で毎日いうことが違って約束も守れなくても，憎めない人間っていうのはいるもんだ…と。つまり日本人は人間の行動責任をその人自身に背負わせていない様なところがありだから，こういう本に書かれているようなことを読んでも「そんなものでしょう?」と思うのかも知れません。
まぁだから契約や法律とかに疎い国民性になってしまうのですが…。どっちがいいか…っていうと，難しいのですが，いずれせによ，人間ってそういうものだよ…ってことは知っておいてもいいのかもしれません。

メディア・バイアス(松永和紀)(07/7/8)
サブタイトルは「あやしい健康情報とニセ科学」となってます。あるある大辞典Ⅱの納豆捏造問題を導入として，マスコミが取り上げる怪しい健康情報とか，無責任なバッシングのさまざまを取り上げている本です。そういう無責任さぶりについては，わたしも日常的に日記とかで取り上げているので，異論はないというか，そうだよね…って感じでさくさくと読めたりはするのですが，意外に自分も把握してなかった「実はうそでした」って情報が結構たくさん載っていて参考になりました。遺伝子操作大豆とか環境ホルモンとかって根拠なかったのね。そういえば，そういう訂正記事って決してマスコミは書きません…という話も書いてますが。
この本では，そういう勝手に消費者に不安をぶつけて盛り上げて，そのままほっておかれているという状況の一番の元凶をマスコミの態度としてますが，あわせてきちんと反論しない科学者も挙げています。この辺の感覚は自分も一応研究者なので，まぁいわれればそのとおりなんだけど…って感じでちょっと耳が痛いです。
でも，この本では結局マスコミが一番の元凶というか，個人ではなく構造的にどうしてもそうなってしまう…ってことを述べてはいるのですが，こうやって，もし大衆がマスコミ不信になっていったら，じゃぁ社会はよくなるのだろうか?という気もしました。すでに大衆は行政や政治家のいうことはあまり信じなくなってますが，この上にマスコミの言うことを信じなくなり，一方でネットで情報がだれでも簡単に取れるようになったら，自分で調べ自分で考えるようになるのかな?と。
結局，物事を単純化しないと理解できない，そして判断できないという人間の思考を，自覚的にせよ見直さないと難しいのではないか?という気もします。研究者をやっているとわかりますが，明確に言えることなどはほとんどありません。特に医学や健康情報などは，大半のことがそうでしょう。確率的にしか危険性をいえないし，それでも検証自体ができてないこともあります。そして一方で原因不明でかかる病気はたくさんあります。そういう状況で「よくわからないのだけど，確率的には問題が低い」とかいう中途半端な検証結果をグレーなまま理解とかできるのかな?と，白か黒かはっきりしないと物事を認識できないのが人間なのではないか?という気はします。
ですから，マスコミの信用が失墜しても別のそういうものが出てきて，やっぱり人は何かを信じたがるのではないか?という気もします。 …ってそれって宗教ジャン…と書いていて思いました。マスコミに対しては，冷静に意見を聞くって時代が来るのは望ましいとは思うけど，その先でどうすればいいか?まではこの本では指摘されていません。まぁでも，最初に挙げたとおり具体的な事例がたくさん載っているので，いろいろと勉強になる本ではあります。

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