読書メモ(2006年9月〜10月)

最近読んだ本から…メモなどを。

書籍編

売春論(酒井あゆみ著)(06/10/28)
どこかのページで紹介を読んで,買ってみた本。
作者は元AV女優,風俗等をやって,今は作家らしい。まぁでも 風俗の話が多いと。
この本は現在の風俗の現状について書かれてますが,別にデータ的な 話ではなく,著者の取材や印象から書かれた漠然としたものです。 それでも現在の風俗が供給過剰になり,風俗をしない女性にとっては 特に儲からない仕事になっているとか,店とかも管理をしなく なっているとか…どちらかというと元風俗嬢の立場から「割の 合わない仕事になってるかなぁ」って感じの事が書かれてます。
じゃぁ,男性からみたら「安くてお得になってる」という事が 書かれているかというと,そんなことは書かれてませんので, 良くわかりません。著者の嘆きからサービスも低迷してるんじゃ ないの?…って風にも読めるけど。
わたしは実際に利用するかどうかは別として, (本当の意味でも)風俗とかの話は歴史書に現われない文化 として結構興味があって,何冊か本を読んだりしていました。 ただ,なんかちょっと病気したりいろいろしたせいで,ちょっと 興味が減退したというか(苦笑)…。まぁでも供給過剰とか 素人がどんどん売春をしてしまう…とかそういう空気はなんとなく 感じていて,病気になる前から,有り難みを感じなくなって いたというのは事実です。…歳の所為もあるかな(^^;)…。 子供の頃は女性は神秘だったしねぇ…。
まぁそうは言っても,お金払って行為をしたい人はいるだろうし, そっちの方がいい…っていう人もいるでしょう。ただこの本は, 男性が読むよりも女性向けに書かれてるっていうか,男性が読んでも ふーん…と思うか,さらに幻想が壊れるか…そんな感じかもしれません。 サクッと読めるので,そういう元風俗嬢の視点…という意味で, 読むのはいいかと思いますが…。

赤ちゃんは世界をどう見てるのか(山口真美著)(06/10/21)
タイトル通りの本。赤ちゃんがどの様に見て,どう認識してるか?を 書いた本。著者は赤ちゃんを使って,そういう実験をしている 科学者。以前この手の話は,赤ちゃんの言語の習得について 学会で話を聞いたことがあったのですが,これは視覚の話に 特化した話でした。「形」や「動き」や「空間」, 「顔」やそういうものの認識は赤ちゃんの場合 どうなのか?…という話です。
いろいろ興味深い事例が載っていて,おもしろく読めました。 ただ,事例が多すぎて,全体として「こういうことか」という わかった気にはちょっとなりにくいかな?。誠実に書かれている…って ことですけど。あと四ヶ月の赤ちゃんを使った実験が多く, 四ヶ月の赤ちゃんが大人と違う場合,大人ととの違いを 意識しますが,大人と同じ場合,じゃぁいつから変わったのか?…が ちょっとわかりにくいと思いました。
とはいえ,赤ちゃんは身近なような謎が多い不思議な生き物です。 この本を読んでいろいろ知っていると,赤ちゃんとの触れ合いも また違った様に感じられて結構楽しいのでは?…という 気もしました:-)。

異常の構造(木村敏著)(06/09/19)
ネットで話題になっていたので読んだのですが,実は1973年に 出版されたかなり古い本でした。なので新書とはいえ,昨今のとは 違い文体も結構重くて,読むのにちょっと時間がかかりました。
著者は精神科医です。最初に人が「異常に惹かれる」ということを 書いてますが,実際の中身は「異常とは?」ということを読み解いてます。 異常とはいろんな異常(量的異常,質的異常)があるのですが,中に 「常識からハズレたもの」というのがあり,そこを著者を掘り下げてます。 そしてその常識を認識・実行できないものとして「精神分裂病患者」いまで いう統合失調症患者を取り上げ,その症例とかからいかに常識を 彼らがうまく扱えないかを考察してます。
そして興味深いのが「常識世界の公式」として「1=1」というのを 挙げていて,これをそう思えないのが精神分裂病患者…だと言ってます。 確かにこの公式(定理?)は証明できませんし,しかもこれが成り立たない 世界がかなり危ういものでしょう。
まぁそんな感じで,異常とか常識とかを患者の観察と考察だけで 読み解いていくというのはおもしろい内容でしたが,今だとこういう 考察をやっている人はいるんじゃないか?…という気がしましたが, どうなんでしょう?…。あと統合失調症を論理的破綻の病気みたいに 捕らえていたり,発症に幼少時の家庭の環境が大きく影響している という風に捕えているのがちょっと古く感じました。 今だと脳の機能障害みたいな捉え方になるんじゃないですかね?。
それと…,統合失調症の人が発症前に感じている世界観とかが, どうも自分の若い頃とか現在とかに感じている世界観と近くてちょっと 困惑しました(^^;)。人と違った格好とか行動をしたがるとか…。 自分にもその素養があるのか?…とちょっと思うような感じで…。

人体 失敗の進化史(遠藤秀紀著)(06/09/19)
著者の遠藤氏は動物の死体を解剖する学者らしい。死体の解剖というと 人間の方は養老先生がそうだったりするのですが,実際に死体や 体を手にしてる人というのは,一般の人とは違う独自の視点を もっていておもしろいと思います。
この本は著者が人間の進化…について書かれた本です。基本的には 一見進化論の様なんですが,進化論というと,「その環境に 適応した種(そのように進化した種)が生き残った」という風に, あたかも生物の方が環境に適応した…という様に読めます。 しかしこの本は,同様のことを「その場しのぎで設計変更して なんとか間に合わせた」みたいなことを書いてます。
つまり例えば人間の耳の中にある耳小骨は元々耳のために つくられていたわけじゃなく,頭が地面から上がって地響きじゃなくて 空気経由で音を聴く必要が出来た際に,顎の骨の一部を無理やり 変形して使用した…とか。また肺も浮袋変化させ間に合わせでつくった… とか…そんな話がたくさん書いてます。
無理やり間に合わせで設計変更したので,無理もあるわけで, 特に二足歩行をする人間は本来の動物の設計方針からすると かなり無理をしているそうです。それが肩凝りや脱腸につながっていると。 さらに,二足歩行とは別ですが,人間に月経があるのは,本来の 成人女性は原始状態では,妊娠か授乳しいてる期間が長く, 月経をしてる期間というのは短いのではないか?…と書かれています。 実際アフリカとかの女性はそんな感じ(子供が3〜5才くらいまで 授乳している)らしいですし。つまり月経に苦しむというのは 乳母とか哺乳瓶とかそういう文化から大きくなっていると…。
いろいろなるほどと思えることがたくさん書かれていて おもしろかったです。
これを読んだとき個人的な状況から, 本来の脊椎動物は内臓が背骨からぶら下がってるのだけど, 人間は垂直歩行をするために,それが出来ず,それゆえに横隔膜に ぶら下がったり,骨盤で受け止めている…っていう話が, 非常に納得させられました(^^;)。ゴハン食べるとその辺が 突っ張る状況だったので…。

他人を見下す若者たち(速水敏彦著)(06/09/01)
ネットでちょっと取り上げられてるのを見たし,本屋で平積みに なっているのの帯が気になったので買って読んでみた。帯には 「『自分以外はバカ』の時代!」とか「若者の感情とやる気が 変化してる!」とか書かれている。
実はそれだけの事がいろいろデータを元に書かれている本でした。 まぁ著者は教育学の学者の様なので,変に扇ることもなく, 自分が集めたデータも「あくまで自分が集めた範囲」と 謙遜してるところは好感がもてます:-)。
興味深かったのは「有能感」のタイプを,横軸に 「仮想的有能感(他者軽視)」,縦軸に「自尊感情」と起き, 両方が高いのを「全能型」,「自尊」が高く「仮想」が低いのを 「自尊型」,両方とも低いのを「萎縮型」,「自尊」が低く 「仮想」が高いのを「仮想型」と分類している点か?(ところで 文系の人ってこういう分類好きですね:-p)。年齢別にこの 分布とかを調べてますが,自尊型は35歳辺りがピークで, 若い人も年寄りも下がっていく,そしてそれと入れ替わるように 仮想型が増えてるように思いました。
本の書き出しとしては,最近の若い人は「喜び」や「悲しみ」より 「怒り」が強いとか,他者を見下すとか…そういう話でしたが, わたし的には世代というより時代なのかな?…という気もしました。 実際,若い人もそうかも知れませんが,大人でもすぐ人に怒る 人は増えていると思います。
で,この本,だからどうしたとか,どうすればいい…とはなにも 書かれてません(^^;)…。それだけといえばそれだけ。まぁ 漠然とみんなが感じてることを,学者が示した…という 内容といえばそうかな…と。


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