読書メモ(2002年11月〜12月上旬)

2002/12/08:作成
最近読んだ本から…メモなどを。

書籍編

天皇ごっこ(見沢知廉)
小説です。しかも作者は過激派で12年間刑務所に入っていて, そのあいだに執筆し賞を受賞したという,かなり変わった 経歴の本です。
とはいえ,内容もかなりショッキングです。作者は右翼の 過激派に入っていたのだと思いますが(間違ってるかも知れません), どうも右翼の過激派とか左翼の過激派をコケにしているような 本のように思います。要はどちらも「天皇ごっこ」を しているということです。コケにしてますが,馬鹿にしているという より,どこか哀れんでいるようにも感じられます。いとおしんでいる 様にもとれます。
はっきり言って,こういう本を書くとそれこそ過激派とかに 撃たれたり切られたりしないのか?…という心配すら してしまいました。
また,この本は受賞後に加筆されて単行本化されてるのですが, そこで付け加えられたのが,北朝鮮を訪問した話で, アレも天皇制だ…というような表現があります。今の時代読むと, さらにクラクラします(^^;)。
本人は「妄想だ」と書いてますが,本人の経験や見たりしたものも 含まれているように思います。リアリティがあります。なぜ 過激派が内ゲバとかやっていたのか…,そういうのもちらりと 書かれていたりします。何せ 過激派やって刑務所に入っていた人ですから,わたしなんぞが 想像しても,本当なのか嘘なのか見分けつきません。
実を言うと,わたしは高校くらいの時,すでに学生運動等は 終わっていた時代なのですが,そのせいもあって, 少し憧れた事があります。わたしの時代はノンポリの時代で, それに対して少し反発があったのです。そして,本当のことを言うと わたしは少し右寄りです。 …とかかくとかなり誤解されそうですが(^^;)…。
でも,わたしがこの本をかなり刺激的に感じたのは,そういう ところもあってかも知れません。作者がいう「本当の民族派は 明治からの天皇制は変則で,本当は政治から遠ざけ,京都で 祭祀に専念すべき」は実はわたしも全く同感だったりします…。

紛争の心理学(A. ミンデル)
タイトルからして去年の9.11に合わせて出版された 本かと思いきや,9月20日発行の本。もっとも原題は 「Sitting in the Fire」で95年に書かれた本です。
というわけで,最初この本を薦められたときは, 現在の国際紛争の話かと思っていたら,実際は違ってました。 作者のミンデルはアメリカでプロセスワークという 一種のカウンセリングみたいなことをやっている人で, この本はそのための教科書的な部分があります。したがって 読み物として読むと,How To的な部分がとか箇条書きが 多かったりして,ちょっとわかりにくい様に思います。
とうわけで,自分でプロセスワークをやろうとしているわけではない わたしにとっては,むしろ本で挙げられている例を 読みいろいろ考えました。
ミンデルがワークで何とかしようとしているのは社会にある 対立をワークを通じて各自が自覚して,なんとか昇華できないか?…という 試みだと思います。我々の周りにはたくさんの対立がある…という 感じで書かれていますが,ここで挙げられている例は, 人種・宗教・職業・性愛(同性愛とか)の違いによる対立で, 実は日本で過ごしているとあまり自覚出来ないものだったりします。 とはいえ,ダブルイメージという概念,つまり相手に訴えかける 時に,「暗に自分が優れている」というメッセージを飛ばしていたり することとか,「ランク(強弱関係)」というのが必ずあって,それで 差別が起きている…という様な考え方は,おそらく我々でも 心当たりがあることでしょう。
多分自分にも応用できる事が多いんでしょうが,わたしは むしろ,世の中にはこれだけ対立がある…というのが例から 読み取れた方が,発見だった気がします。
差し迫っている人には話してもなかなか聞いてもらえない…って いうのも,そうだな…とか思いました。


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